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襲撃!

048



 ずっと警戒していたけど、その後は特に動きもなくバレンシア帝国からジーク陛下の親書を携えてレフラシア内親王がやってきた。


 たまたま襲撃を受けているところを助けたということもあって、僕たちの関係は悪くない。


 帝国内で反発する覇権主義者を抑えて内政第一にしたことが襲撃の原因らしいので、結果としてはアルフォルド王国にも利益がある話だし。


 バレンシア帝国の馬車がやってくるのを僕と外務関係の人たちと王城の正面玄関を出たところで待ち受ける。


 滑り込むように馬車がやってきて、僕の前で止まった。


 御者がドアが開けると、誰かが降りてくるのが見える。


 女性らしいシルエットだ。


 その瞬間、いろいろなことが同時に起きた。


 まずは大きな魔力を感じたので、僕は目の前の女性――レフラシア内親王の服を着たフェヘールを抱えて馬車の下に潜り込む。


 バレンシア帝国の御者服を着たジョンさんや、侍女の格好をしたチュクさんも馬車から飛び出して地面に伏せた。


 僕の後ろに控えていた外務関係の人たちに偽装していた魔法士団の団員たちがあらかじめ用意していた防御魔法を展開する。


 5メートルはありそうな炎弾が防御魔法に激突して、鼓膜が壊れそうな破壊音が響いた。


 ゲームだったら、この轟音だけでHPが削れたり、威圧のデバフがかかったりしそうだ。


 しかし、襲撃者の魔法はしのぎきった。


 馬車の車体の下に縛りつけてあった剣を持つと、そこから飛び出しながら鞘をはらう。


 もちろんフェヘールも僕の後ろについているだろう、わざわざ確認するまでもない。


 魔法士団の団員たちも攻撃魔法の出先を目指す。


 周囲で警備していた近衛騎士団も動き出していた。


 いきなり奇襲を受けたら混乱するが、あらかじめ襲撃がある前提で、事前に何度も打ち合わせしているのだから、誰の足にも迷いはない。


 襲撃者が隠れそうな地点もいくつかピックアップされていたが、その1つである城門の両脇にある側防櫓の右側に僕たちは殺到する。


 一気に魔力が高まる気配を読む。


「危ない!」


 叫びつつ、僕も体内の魔力を最大限にまわして最大最強の身体強化をおこなう。


 ここまでの出力だと何秒も持たないけど、たぶん、ここまでしないと間に合わないと感じた。


「僕の後ろに」


 声をかけたが、もうすでにフェヘールは僕の背中に隠れていた。


「追儺式!」


 剣を自分前で高速回転させて盾として使う『トリディアーノ・レコード』というゲームにあった防御技でオーガの全力攻撃すら完全無効できる。


 ゲーム内では必要なレベルに達していて、その技が使用可能な剣を装備し、あとは剣をくるくるまわせば自動的に発動したけど、この世界での再現には苦労した。


 そもそも剣は吹奏楽や新体操のバトンのように回転させるようにはなってないので、まわすにはバランスがあまりにも悪い。


 しかも、上手くまわしたところで円盾になるわけがないよね。


 結局は身体強化で無理にまわして、しかも高速回転させることによって、いちおう防御技として成立させることに成功した。


 まあ、完全ではないけど。


 たとえば100本くらいの矢が一斉に飛んできたとしたら、全部を防ぐのは無理で、数本は通ってしまうだろう。


 逆にいうと、この世界の身体強化を使えば、普通なら絶対に再現不可能な技でもゴリ押しで再現できることに気づかされたのだ。


 この追儺式の再現以後、ゲームの技をこの世界で使うコツみたいなものをつかんだ気がする。


 そんな想い出の防御技をひさしぶりに全力でやってみた。


 ヒューンと大剣の風切り音が響きはじめたのとき、側防櫓の内部で膨れ上がった魔力が炸裂する。


 真っ赤な炎の塊が迫ってきた。


 いちおうゲーム内ではドラゴンのブレスでも大幅に減衰させられるのが追儺式という防御技だけど、いまの僕が試したのははじめて。


 さすがに魔獣のところに出向いて「ちょっと攻撃してもらえないですかね?」と頼むわけにもいかないし。


 だから、いきなり実践で試すのはギャンブル要素もあったけど、勝率は充分以上にあると判断していた。


 なにしろ、即死さえ避けることができれば、たとえHPが1でも回復してもらえるからね。


 世界一のヒーラーがついているんだ、なにがあっても即座の回復が期待できる。


 規格外れに巨大な炎弾に焼け焦げた体から痛みが消えていった。


 そして、体力的なものも復活し、身体強化で無理して剣をまわして痛めた手首も元に戻る。


「追儺式!」


 再び僕は剣をまわした。


 背後から魔力の膨張を感じとったのだ。


 魔法士団が側防櫓に向けて、それぞれが最強の攻撃魔法をブッ放す。


 もちろん、撃った攻撃魔法が全部そのまま貫通するわけでもなく、跳ね返った魔法の残滓や、破壊された側防櫓の破片がこっちに向かってくる。


 それを追儺式で防ぎながら、破壊された側防櫓を見た。


 たなびく煙と、舞い上がる埃の中に、男の人影がある。


「ストリーム・ストライク!」


 たぶん一番多用している『マンスタニア・クロニクル』というゲーム内にあったアーツの再現技。


 おおよそ5メートルほどの距離を助走もなしに一瞬で間合いを詰めて、その人影の中心を狙い突き技を出した。


 剣先が届こうという瞬間、すーっと人影が身をそらす。


 かわされて、交錯する。


「やっぱりフレドリカ先生でしたか……いや、もう先生と敬称をつける必要はなくなりましたね」


「こんなふうに計画を阻止されたところからしても、いままったく驚いてないところからしても、どこかでバレてたんですね?」


「はい、ずっと監視下にありました」


「どうして気づいたのか教えてもらうことはできますか?」


「先生になにか教える日がくるとは思ってなかったですね……バーズドの死体を発見しました。問題はその周辺に先生の臭いが残っていたんですよ」


 あの死体発見の日、クラスメイトたちに無事な姿を見せておこうと登校したらフレドリカと廊下で顔を合わせた。


 そのときバーズドの臭跡をたどって死体を発見したチュクさんから聞いたのだ。


 獣人族たちのアビリティーって素直にすごいと思うよ。


 フェヘールの行方が判明したとき、王城から現場に駆けつけたのはジュルチャーニ近衛騎士団長、メレデクヘーギ侯爵、そして僕の3人。


 フレドリカは王城に残り、そのあとすぐに学園の職員宿舎に戻ったはず。


 それなのに、ひそかに僕たちを追い、バーズドの潜伏先を監視し、突入作戦が開始されたタイミングで介入したのだろう。


 警護官を殺害したり、ウルド家の建物を破壊した謎の魔法士であるという直接的な証拠はないけれど、少なくとも瀕死のバーズドを逃げたように見せかけるために担いで連れ出し、死亡後は死体を消滅させて、まだ生きているように偽造しようとしたことは臭跡からして間違いない。


 そこまでわかればアルフォルド王国にも調査の専門家はいくらでもいる。


 まず、わからなかったのがエルフ族で人族の宗教や神様にはまったく関心がないはずのフレドリカが神聖国ブランの手先をやっているのか?


 しかし、考えかたを変えれば神聖国ブランが敬虔な信者をスパイとして世界各地に配置しているのなら、それと似たようなことを他の国がやっていたとしてもおかしくはない。


 事実、国王陛下から内密に聞いた話の中に、神聖国ブランほどの規模ではないものの、アルフォルド王国にも他国に溶け込んでいる現地工作員みたいな存在がいるらしいし。


 そういうことならエルフ族の工作員がアルフォルド王国に潜入していたとしてもおかしくないという理屈も成り立つ。


 神聖国ブランに関係しそうにないフレドリカだけど、エルフ族のためにだったら行動する可能性がある。


 そして、そういう視点でフレドリカの過去を入念に洗っていけば、少しずつだけど不審なところが見えてくるのだ。






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