表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/101

エルフの秘法

049



 フレドリカが裏切り者――エルフ族としては裏切ってもいないし、むしろ正義の存在なのかもしれないけど、アルフォルド王国に仕え、王族や貴族も学ぶ学園の教師としては暗殺やスパイ工作みたいなものに関わっていてもらっては困る。


 ギリギリ最低のラインでも中立だよね。


 しかも、裏工作みたいなことをしているという前提条件で過去をたぐっていくと、いろいろ気になるところがいくつも。


「他国が動いていて、いまなら疑われないというときに、どうやらフレドリカが暗躍していたらしい疑いが結構いっぱいあるんですけど?」


 僕がそんなふうに質問すると、フレドリカはいつもの教師らしい口調で講義するように答えた。


「それは完全に間違ってはいませんが、まったくの正解ともいえませんね。他国が動いたタイミングもあれば、こっちから動かすことだってあります。たとえば神聖国ブランの教皇が欲深い割にあまり頭がよくないという情報は以前からありました。そこにバレンシア帝国の政策転換があって、教皇の欲深い面が強くなるのは確実ですから、コンル・サカーチの杖の情報が耳に入るようにすれば事態が動き出すのは確実ですよ」


「ああ……そこまで先生はやっていたのですか。神聖国ブランの教皇の周辺にも仲間がいたり、かなり大きな組織みたいですね」


「大きくはないですよ、少数精鋭ですが!」


 いきなり無詠唱でフレドリカは炎槍を飛ばしてきた。


 だけど、僕のほうもそれくらいのことはしてくると予想済みだ。


 背後に守っていたフェヘールも戦闘用のフォーメーションに移っていて、すでに僕の斜めうしろに位置取りしているので炎槍をそのまま回避してもまったく問題ない。


 ただの回避では芸がなさ過ぎるので、体勢を低くしてかわしつつ両手で握った大剣を全力で振り抜く。


 当たれば体を上下に切断できる勢いだったけど、それも斬れたらの話。


 フレドリカが軽やかに身を引いてかわす。


 剣先はかすりもしない。


 だが、その瞬間を狙って魔法士団が攻撃魔法を殺到させた。


 移動して、足を止めたところは隙だ。


 次のアクションを起こすのに絶対に時間がかかる。


 それがほんの1秒に満たない時間だとしても王国が抱える魔法士団に見せてもいい隙ではない。


 爆裂し、雷撃され、風が裂き、水刃が襲う。


「炎壁」


 とっさにフレドリカが防御魔法を使うが、もう遅い。


 かろうじて防いだ部分もあったのかもしれないが、ほとんどの攻撃がフレドリカに命中した。


 そこに近衛騎士団の10人が盾を揃え、その隙間から剣を突き出して突撃する。


 ドン! とフレドリカが倒れかけたところの地面が爆発したように見えた。


 その勢いでフレドリカの体が10メートル以上も宙に舞う。


 おかげで近衛騎士団の剣は空を切る。


 自爆にはなったが、致命的な攻撃を回避することもできた。


 だが、その落下点に走り込んでいる2つの影。


 メレデクヘーギ侯爵とジュルチャーニ近衛騎士団長だ。


 フレドリカはもう1発、自爆覚悟で我が身の側で魔法を炸裂させた。


「バースト・アタック!」


 こんなこともあろうかと僕のほうも剣を手持ちに引き寄せて準備していたのは『神代戦記 ガイゼアン』のソードスキル。


 空中を駆け上がるように飛ぶと、3連突きを出す。


 剣先が肉に食い込む感触が3連続あった。


「ぐわっ……」


 フレドリカの口から悲鳴じみた声が漏れる。


 降下しはじめたフレドリカに魔法士団の攻撃魔法がバンバン撃ち込まれた。


 そして、地面に落下し、一斉に剣が集まる。


 魔法士団の攻撃魔法だけでも充分に致命傷だったのに、メレデクヘーギ侯爵やジュルチャーニ近衛騎士団長に近衛騎士たちまでが自慢の豪剣を叩きつけたのだから、オーバーキルもいいところ。


 もう僕の出番はなさそうだ。


 他人を押しのけてまで殺したいというほど憎んでるわけじゃないし――教師としては優秀だったと思うよ。


 僕みたいな落ちこぼれた劣等生にも時間を使って、なんとか人並み程度まで引き上げられないか最後まで諦めなかった唯一の魔法関係の教師だし。


「いこう」


 後ろからフェヘールの声が聞こえてきた。


 そうだね、僕たちには死体を蹴る趣味はないんだ。


 だいたい本物のレフラシア内親王をいつまでも待たせておくわけにもいかない。


 ドォォォーーーーーーーン。


 すべてが終わったと気を抜いた瞬間を狙ったかのように大爆発が起きた。


 魔法士団や近衛騎士団ばかりかメレデクヘーギ侯爵とジュルチャーニ近衛騎士団長までもが倒れている。


「弱いな、弱い。しょせん人族の中での強者でしかないのに、自分が絶対的に強いと勘違いしている大間抜けだ」


「強いな、エルフは。どう考えても10回くらいは死んでないとおかしいのに」


「命は1つしかないので、10回殺せる攻撃をしたところで1回の死亡により残りの9回分は自動的にキャンセルされるのです」


「その1回の死亡すらキャンセルされてるじゃないか!」


「人族の魔法に遅延発動するものはないですからね。あらかじめ必要な魔法を用意しておけば、なにがあろうと万全です」


「遅延発動する魔法なんて授業では教えてくれなかった気がするけど」


「エルフの秘法ですから当然です」


「蘇生魔法なのかな? 死んだのに生き返る魔法も聞いたことないぞ」


「エルフの秘法ですから当然です」


「僕の中で優秀な魔法教師のフレドリカ先生だったのが、さっきまで工作員フレドリカ容疑者だったのに、またしてもフレドリカ先生と呼びたくなってきました。1手、教えてもらえますか?」


 僕は剣を抜いて、剣先をフレドリカ先生に向けて構える。





評価、ブクマありがとうございました!

なによりの励みです。

 少しは面白いものを書けるようになれたのかな? と作者はとても嬉しい気持ちになれます。




この下にある星


☆☆☆☆☆


で評価ポイントをつけられます


 


★★★★★



ぜひ応援お願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ