王都への帰還
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どんどん魔獣が穴に落ちていく。
何時間経っても終わりがまったく見えないほど。
「これで終わったと思っていいよね? そろそろ家に帰らない?」
「帰ろうか?」
フェヘールの言葉に僕も同意する。
まだ大穴に魔獣が落ち続けているけど、街が襲われる原因を取り除いたのだから、もう僕たちには関係ない。
街に戻ると、魔獣は1頭もいなくて、壊された門や城壁の修復がすでにはじまっている。
アペフチの姿を見た住民たちは「ドラゴンが戻ってきたぞ」と一瞬パニックになりかけて逃げだそうとしたが、その背にフェヘールが乗っているのを見ると逆に歓声を上げたり手を振りながら走り寄ってきた。
「聖女様が魔獣を追い払ったんだ!」
「ドラゴンすら従わせる聖女様は無敵だ!」
「メレデクヘーギ侯爵領は守られた!」
領民たちは大興奮で、これはこれでパニックになりそうな光景だった。
また聖女様の伝説が1つ増えたな。
侯爵のところにいき、フェヘールが報告するのを聞きながら、不足分をおぎなっておく。
そして、キングも屋敷に泊めてもらえるよう交渉した。
剣技を教えるという約束をしたからね。
「嘘をついてゴメンとは言わないんだ」
キングが笑う。
それは相手によるよ。
命に関わるし、味方にしておきたいから約束はちゃんと守ります。
だいたいキングに剣技を教えるのは、こっちにとっても修行になるから、むしろ喜んで教えたいくらいで、嘘にする気は1ミリも存在しない。
「まあ、僕にとっても勉強になるからね。特にいま突き技を磨いている最中だから稽古相手になってもらうよ」
「泊めてもらうんだ、宿泊代は労働で払うよ」
この件ではキングも嘘をつかなかったようで、後日、一緒に稽古をしてくれるだけでなく、さらに時間があれば城壁や門の補修工事にも積極的に参加してくれた。
この日の夜は祝勝会という名称のド宴会が街全体で開催され、メレデクヘーギ侯爵家の酒蔵から運び出されて誰でも倒れるまで呑むことができた――僕も少しだけ呑まされたよ。
この世界、アルコールに年齢制限みたいなものはなく、勝者が美酒を味わうのは当然らしい――お酒に弱い人には辛そうな風習だけど、下戸は形だけ口をつければ許されることになっているらしい。
だけど、僕には誰も教えてくれなかったから杯1杯を飲み干して……なんか記憶が怪しくなった。
フェヘールになにか言ったり、言われたりしたはずなんだけど。
前世では普通程度にはアルコール耐性があったので、いまの13歳の体のせいか、この世界では慣れてないせいか――メレデクヘーギ侯爵家の酒蔵の酒はキツいものばかりなのか。
そして、そろそろ王都に帰らなければならないときがやってくる。
ところが、その場所にキングも乗り込んできたのだ。
「侯爵様に雇ってもらった。これから聖女様の護衛をつとめるのでよろしく」
「いったいいつの間に?」
「いまでもジョンさんやチュクさんといった優秀な護衛がついているが、学園内では手薄だよな? 侯爵様は前から同年代の護衛を探していたらしい」
「そうすると学園でも一緒なのか?」
「クリート王子とではなく、聖女様とな。あくまでメレデクヘーギ侯爵家の護衛だからな、オレは。学園でも、寮でも、護衛としてつく――寮は別のクリート王子より一緒にいる時間は長いかもな」
「だいじょうぶなんだろうな?」
いまのキングはボーイッシュな雰囲気の女の子だけど、そもそもオッサンだぞ、コイツ。
まあ、ゲームキャラがそうだったというだけで、リアルでは若かったのかもしれないし、ネナベだったのかもしれないけど。
でも、ゲーム歴からして子供では絶対にないし、会話の内容からすると僕と同年代っぽかった。
「クリート王子の心配はわかる。だが、変な間違いはないからそんな心配はいらない。冒険者が侯爵家に雇われるなんて、ものすごい光栄なことだし、下手を打ってメレデクヘーギ侯爵家に睨まれたら冒険者として終わりだよ」
稼げる領地を持っているメレデクヘーギ侯爵家に媚びを売りたい冒険者は山ほどいるし、聖女様の信者は世界中にいるし、とキングはつけくわえた。
この僕たちの会話を聞いてフェヘールは不機嫌になったようだ。
「だいじょうぶなのか問うのはわたくしだと思うんだけど。クリートはユユのことをキングとかいう愛称で呼んでいるし、暇があれば一緒になにかしてるし」
「剣の稽古をしてるだけじゃないか、僕とキングの間でそれこそ変な間違いは起きる心配はいらないぞ」
「まあ、クリートが誰と仲良くしようがかまわないけど、わたくしという婚約者がいるということだけは常に忘れないでね、常に、よ?」
「いつもいつも僕にはかわいい婚約者がいると覚えておくよ」
真面目に答えると、かわいいという単語に反応してかフェヘールが満足げな顔になった。
そのとき外から声をかけられた。
「息災で過ごすのだぞ。次に帰ってくるまでポラーニの再建について目処をつけておくから、ちゃんと手伝え」
「ポラーニだけでなく、ファルカシュ子爵領が子爵領として恥ずかしくない規模にしたいですね」
侯爵夫妻に送られて僕たちは王都に向けて出発した。
ゲーマー
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第4部、ラストまで書けました。
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