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シンが体を起こして話せるようになると、スレイヤーは手綱を部下に任せて、事の顛末を尋ねた。
シンは覚えている範囲で、遺跡内で起きたこと、見つけたものなどを出来るだけ細かく話した。
記憶が定かなら、自分は生きて脱出できる状態ではなかった。足を貫かれた事も、ディアベルや魔人と戦った事すら夢のことのように思えるが、紛れもない事実だ。しかし、今のシンの体には傷という傷はない。むしろ、遺跡に入る前よりずっと綺麗な体をしていた。
「自分でも何言ってるかわからないんですけど」
「君を見つけたのは二人なんだが」
スレイヤーはケイティ達を横目に見て、神妙ば声音で切り出した。
シンは遺跡近くの森に立った不思議な光の麓にいたという。
ケイティ達が駆けつけた時、シンは満身創痍で、火傷や切り傷、刺し傷等の血で服は汚れ、装備の殆どを失っていたそうだ。そして気絶していたシンの胸には、十枚の羊皮紙が抱かれるように握られていたという。
羊皮紙には解読不能な文字が記されていた事から、魔法書の頁を千切ったものだと考えられた。
スレイヤーは荷台の隅の木箱の中から、その羊皮紙を取り出して見せた。
シンはそれを手に取り、じっくりと見つめた。ただの羊皮紙に見えるが、触れた瞬間、頭の中に何かを囁かれる声を確かに聞いた。魔法書だと確信して顔を上げると、スレイヤーもその通りだというように顎を引いた。
「君が遺跡の最深部からどうやって脱出したのかもそうだが、もう一つわからないことがある」
「はい」
言われなくても、シンにはわかっていた。
ディアベルに貫かれた右足の傷が塞がっている。肩口から浅く切られた切創、体の細やかな傷、痣、火球の熱に爛れた火傷の痕など、ケイティ達がシンの手当てをしようとした時には、既にどの傷も塞がり、綺麗な状態だったという。
シンも信じられなかったが、これもまた、現実だった。
「君はまさしく奇跡の生還者という事になる。まあ、何はともあれ無事でよかった」
スレイヤーは驚きを声に滲ませると、これ以上深く考えない事にしようと、肩を竦めた。
2016/12/27 改稿。




