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魔神になった少年  作者: キタビ
第二章 墓荒らし達
21/132

 9

 シンはポーチから弾頭に赤い印を付けた炸裂弾さくれつだんを掴み取り、素早く装填そうてんした。番人ガーディアンの赤い目に狙いを絞って引き金を引き続けるが、着弾と同時に破裂する弾丸は、番人の目をなかなか捉える事ができない。

 シンは振り下ろされた大剣クレイモアをかわし、地面にめり込んだ刀身に足を乗せて押さえつけた。一瞬動きがにぶったガーディアンの兜の覗き穴に、すかさず弾丸を撃ち込んだ。弾が兜の中で炸裂し、覗き穴から細い煙を伸ばす。

 頭を跳ね上げた番人ガーディアンはしかし、ひるむことなく大剣クレイモアを地面から引き抜いた。


「ダメかっ」


 番人ガーディアン大剣クレイモアを肩にかつぐように振り上げ、横にいだ。その剣が、隣にいたガーディアンの胸をとらえ、甲冑をくだき斬りながら地面になぎ倒した。倒されたガーディアンはそのまま機能を停止させる。一方で、兜を撃たれた番人ガーディアンは、目を潰された騎士のように、がむしゃらに剣を振り回した。

 弾丸が僅かに魔石に傷をつけたのか、光が鈍く点滅していた。

 シンは後退しながら、弾丸をシリンダーに込める。


「ケイティ! 同士討どうしうちならやれる。狙ってできるか!」


「まったく、簡単に言ってくれるね」


 ケイティは腰にげていたむちを取り、地面をはたいた。

 攻撃パターンを予測してけるのはそれ程難しい事じゃなくなった。しかし、二体の攻撃をかわしながら、同士討ちを狙うのは難しい。

 ケイティは二体の攻撃のタイミングをなるべく同時になるように誘い込んだ。かしこいのか、攻撃を同時に仕掛けてはこない。それでも距離は詰まってきた。二体の番人ガーディアンは攻撃の際、踏み込みで足を浮かせる。ケイティはそれをすくい上げるタイミングを虎視眈々《こしたんたん》と狙った。

 一体が足を浮かした瞬間に鞭を巻きつけ、もつれさせるように全体重をかけて引っ張った。

 バランスを崩したガーディアンが面白いくらい簡単に前のめりに倒れた。二体目の番人ガーディアンが振り下ろした朝星棒モーニングスターが、倒れた番人ガーディアンの頭を粉砕ふんさいする。

 したり顔で笑んだケイティは、鞭を素早く巻き取ってその場から離れた。


「やりゃできるじゃんあたし――スコットっ!」


「なんとか生きてるよっ!」


 スコットは肩で息をしながら、番人ガーディアンの猛攻を泣きそうな顔でけ続けていた。

 シンはスコットを追い回す一体に弾丸を撃ち込んで誘い出し、上手いこと視力を奪った。

 手にした戦斧せんぷを左右に振りながら、よたよたと武器を構えている。シンはその一体を無視して、残った二体の処理に移り、集中した。

 視界を潰されたガーディアンが二体、元気に動き回るものが二体。


「スコット、ケイティ、そいつらを中央に誘い込んでくれ!」


 シンは目が潰れたガーディアン二体に弾を当て、広間の中央に誘導した。

 がむしゃらに剣を振るガーディアンの延長線に、スコットとケイティが走った。三人は背中合わせに立ち、四体が互いの間合いに踏み込むギリギリまで精神を削って踏ん張った。ケイティとスコットが、その火中から先に飛び出した。シンは弾丸を四体に均等きんとうに放ち続け、注意を引いた。


「シン、早く! 剣風けんぷうに巻き込まれる!」


「あと少し!」


 四体がそれぞれに武器を振りかぶった瞬間、シンはその場から頭を抱えて前方に飛び込んだ。

 甲冑かっちゅうがひしゃげ、空っぽの体が崩れ、沈む音が聞こえた。肩越しに振り向くと、四体は手にした武器を互いにめり込ませ、停止していた。点滅していた赤い瞳が、静かに消えていく。

 全ての番人ガーディアンが停止するのと同時に、奥へ続く通路を閉ざしていた扉が開いた。

 シンは仰向けに寝転がると、遅れて押し寄せてきた感情に震えた手を見て、ほくそ笑んだ。


「はは、肝冷きもひやしたあ」


「そりゃこっちのセリフよ。怪我は?」


 ケイティがシンの傷だらけになった顔を覗き込んだ。


「俺は平気だよ。二人は?」


「僕も平気。何も出来なかったけど、生きた心地がしなかったよ。シンは本当に無茶をするね、お陰で何とかなったけど」


 スコットは胸を撫で下ろした。


「弾も残り少なくて、失敗するわけにはいかなかったんだ。何とかなってよかったよ」


 シンはリボルバーをホルスターに戻し、体を起こした。

 三人とも必死で気付かなかったが、擦り傷とあざがあちこちに出来ていた。

 大型の魔動人形六体を相手にこれは奇跡的な戦果といえる。落ち着いて番人達の手にした武具を見れば、黒い血の痕が残っていた。シンは一人、ベイカーというトレジャーハンターの仲間達の遺体がないか辺りを見回し、小さく肩を落とした。


「ふふふん」ケイティが笑みを溢した。


「どうしたの?」スコットがきょとんとした。


「お宝は目の前なのよ。笑いが止まらないわ。あたしら最高だよ」


「そうだね、みんな無事だし、嬉しいことくめだ。それにしても、ケイティの欲深さには脱帽だつぼうものだよ」


「何言ってんの。生への執着しゅうちゃく、お宝への執着、強い欲望は一流のトレハンにとって必要不可欠な要素じゃない」


 スコットは返す言葉もないと肩を竦めた。


「生きてるって素晴らしいね、ほんとに」


 シンが満足そうに笑むと、二人も笑顔で応えた。

 丁度ケイティが投げた発炎筒が、火を出し尽くして、しぼむように消えていった。

2016/12/22 改稿。

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