036話 アレク・其ノ二
やっぱ今月の仕事量は半端ない…
多分しばらく日付跨ぎ更新とかが多くなるかもです…
「俺と…同じ…?」
俺がオウム返しした瞬間、奴は剣を引き抜き襲いかかってきた。
「なっ!?」
信じられない速度。
さっきのキメラなんかよりもずっと速い。
俺の反応速度ギリギリのスピードだ。
「ああ!そうだよ!」
ギリギリで刀で受け止める。
重い。
「お前と同じなんだよ!」
斬り返しもすさまじい速さだ。
捌き切れない!
「僕も!」
剣の切っ先のみがギリギリ見えるスピードで斬りかかってくる。
やばい!体制が崩れた!
「『勇者』だったんだよ!!」
その言葉を聞いた瞬間、奴の赤黒い剣が俺の身体を斬り裂いた。
既の所で身を後ろに反り、ギリギリで回避…しきれなかった。
鎧はバターみたいに切り裂かれ、ギリギリ薄皮一枚を切り裂かれる。
左肩から右腰にかけて斜めに赤い線。
ダメージはないが、このままここで棒立ちになるわけにはいかない、追撃が来たらそれこそ一巻の終わりだ
全力で後方に飛び退いた。
「いったぁ………くそ、思ったよりもずっと強いな、お前。」
それよりこいつはなんて言った?
自分も『勇者』だった?
「当たり前だろう?なにせ勇者だったからな、落ちこぼれて今は魔の大陸に厄介になってるけどね!」
「どういうことだ……?」
落ちこぼれ?
しかも魔の大陸に厄介になっている?
「はっ!やっぱり新しい勇者様は違うね!本当に勇者みたいな台詞を言うとはね!」
アレクから今までに感じたこともないような感情の発露を感じる。
"憎悪"
"嫉妬"
そして"憤怒"
いつも余裕の表情を見せるこいつがこんな感情を出すなんて。
なにがこいつをそこまで思わせるんだ?
「お前の言ってることは正直理解が追いつかないが…少なくとも俺は勇者じゃない。」
「そんな力を持ってるのにかい!?
違う世界から連れてこられて、そんな馬鹿みたいな力を与えられて、無双していい気になってたんだろう!?
もっと信じられる嘘をいいなよ!」
……つまり、こいつも『転生者』なのか。
しかも俺とは違い、ちゃんと勇者としてこっちの世界に来た。
はたから見れば、俺のほうがお邪魔虫じゃねぇか?
「いや、そんなこと言われても…」
問答は終わりだとばかりにアレクが再度襲い掛かってくる。
今度は俺も焦りなどはない、十分に迎撃できる。
「…話を聞くことが増えたな。」
そう呟きながら、刀を正眼に構える。
しかしこんな高速で動いてるのに、奴のフードは変わらずめくれもしない。
なんか魔法でもかかってんのか?
……ちょうどいい、まずはあのフードを引っぺがすか。
「『高速連続剣』!」
俺も前に飛び出てる。
そして間合いに入った途端、俺はスキル名を唱える。
俺自身の力量によって更に研ぎ澄まされた『高速連続剣』は、如何に勇者でもそう簡単には捌き切れないだろう。
事実、奴はその剣速に対処するので精一杯のようだ。
「くそっ!」
耐えかねて奴が一旦間合いを取る。
それも想定済みだ。
「『飛翔剣・五月雨』!」
俺の一番得意な形となりつつある『高速連続剣』からの『飛翔剣・五月雨』
近づいても剣の雨、遠ざかっても剣の雨
さぁ、奴はどう崩す?
「『転移』!」
スキルがアレクに当たる直前、奴の姿が消え去った。
「は!?転移は使えないんじゃ…」
その瞬間、背後から強烈な殺気を感じ、振り返らずにその場から飛び退く。
すると直前まで俺の立っていた場所に強烈な雷が落ちた。
「チッ!」
「うわ!あぶねぇ!」
何で奴が転移を………いや待て、『空間固定』は"この場"から転移をできなくするためだ。
ということは"この場"、つまり『空間固定』をしている空間内では使えるのか。
「スキルは使いようだろ?」
俺が答えに行き着いたのがわかったのか、いつもの笑みを口元に作った。
……ムカつく。
「だがそれを最初に使わなかったってことは、制約があるんだろ?回数か距離か……もしくは場所…いや、座標か?」
そう答えると奴の口元が若干歪んだ。
「座標か。おそらく登録した場所にしか飛べないんだろう。今お前の立っている位置、確かお前がこの戦場に来た時の場所のすぐ側だよな?
てことは、お前が今まで立っていた場所はどこかしら座標が登録されてるってことだ。
それに座標登録も無限ってわけじゃないだろう、古いものから消えていくか…もしくは任意の座標を消していくか、どちらにせよ制限はあるだろう?」
「……ほんと、お前みたいに無駄に察しがいいやつは嫌いだ。」
奴の口元が完全に逆三日月の形に歪む。
実は察したとか分析したとかじゃなくて、単に『原理究明』でわかっただけなんですけどね。
それをわざわざ伝えることもないし、戦いの最中に相手の精神に揺さぶりをかけるのも有効な手だからな。
『原理究明』で俺も使えるようになったかと思ったが、流石に無理だった。
それだけ特殊なスキルなんだろう。
習得はできなかったが、その"副産物"はしっかりと手に入れることができた。
「だけど僕が優位なのは変わらない!」
そう言って奴はまた転移のスキルを発動する。
今度はどこにいった?
奴は俺の斜め後ろから出現し、剣を振り下ろしてきた。
予想通り!
「ほらよ!」
奴の剣を受け止めるではなく流すように捌き、体制を崩させる。
その勢いのまま、奴のフード目掛けて剣を走らせる。
このまま首を落とせなくもないが、それでは目的を達成できない。
神業ともいえる剣捌きでフードのみを狙う。
「なっ!?」
奴が慌ててに距離を取る。
俺の足元に、切れたローブの切れ端が舞い落ちた。
「さーて、お前さんのムカつく面を拝見させて………」
そう言ってやつを見た。
そこにいたのは
金髪の美少女だった。
「……………」
「くそっ!ふざけやがって!」
あ、この声はやっぱりアレクか。
想像してたのとあまりに違う顔に、戦いの最中なのに一瞬意識が飛んでた。
フードを取って初めてわかったが
金髪のビロードのような長い髪、フランス人形のような長い睫毛、深い琥珀のような瞳、そして透き通るような肌
……なんて美少女
「………お前、女だったのか……」
「だったらなんだよ!?」
いや、声が中性的だからどっちかわかんなかったんだけどさ…女でもこんな美少女だとは思わないでしょう
うーん、美少女だと思うと、何故かムカつきが治まる不思議。
可愛いは正義なのか…
「って、そんなこと考えてる場合じゃないよな。」
間違いなくこいつはアレクで、村の人達を連れ去り、大量の冒険者を虐殺した大悪党だ。
殺さないまでも、倒さなきゃいけない相手だ。
うん、そうだ、間違いない。
決して可愛いからって手加減とかはしないぞ、絶対だぞ。
……でも顔は攻撃しないどこう。
俺からの殺気が揺らいでるのがわかったのか、アレクがいつも見ていた口元と同じように、可愛…ムカつく笑顔で襲い掛かってくる。
「隙だらけだぞ!」
確かに。否定はできない。
「っと!」
取り敢えずという形でその一撃を防ぎ、俺はよれて少し右足を後ろに引く。
その瞬間、アレクは瞳を見開かせた。
「残念だったな!次代の勇者!!」
転移のスキルを唱え、アレクの姿が目の前から消える。
俺の体制を崩したと理解したのだろう、転移で俺の死角に移動したのだった。
そして奴は完全に俺の死角である、背後の座標に姿を現した。
「(死ね!!)」
シンに気づかれないように声を出さず、殺気も極力抑え背後から剣を振り下ろす。
先ほどの油断は何だったのか、それは今でも理解できないが絶好のチャンスだったのは間違いない。
奴には転移の仕組みが何故かバレている、ここまで察しのいいやつは初めてだ。
数度、僕の転移を見ただけでそこまで理解できるとは…やはり遊んでいたのはまずかったか。
だがここで始末すれば、僕の計画は達成したも同然だ。
Aランクパーティーの冒険者も、騎士団も歯が立たない、最強の軍勢を作れるのだから。
こいつだ、こいつさえいなければ!
そして切っ先が奴の首にかかると思った瞬間。
「残念」
奴はこちらを見向きもせずに剣を躱した。
「ばっ………!」
馬鹿な!なぜ避けられる!?完全に奴の隙を突いた形だぞ!?
混乱する頭で必死に考えようとするが、奴は瞬時に反撃に移った。
奴の動きが全く見えない!
まだ混乱から脱出できていない頭では、奴の動きを見ることも理解することもできなかった。
そして三撃、何かを食らって、僕の意識は完全に失われた。
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可愛いとカッコイイには勝てない(経験談)




