表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
35/103

034話 キメラ

「こいつの相手は俺とクリスでやる!他のやつは手を出すな!」


強めの口調で他のメンバーに伝える。

アレクの強さを正確に感じ取っているのだろう、言われずとも他のメンバーは自分では相手にならないとばかりに距離をとっている。


「わ、私も!」


そこへサラが歩み出る。

因縁がないというわけでもないし、実力的にもまぁ大丈夫だろう。


「油断するなよ、少なくともお前に『キーチェーンマジック』を仕掛けた相手なんだからな。」


「は、はい!本人を目の前にすると、つ、強さがなんとなく…」


しっかりと目の前でとらえたのはこれで二度目。

一度目は俺の『気配察知』がそれほど強くなかったし、力の差が大きすぎて感じ取れなかった。

だが今は違う、こいつは間違いなくこの戦場のどの魔物よりも強い。


「………僕もさぁ、予想外のことは嫌いじゃないんだよ」


一歩近づいてくる


「……………でもね、これは違うよ」


更に一歩


「……………………ことごとく邪魔してくれちゃってさぁ」


立ち止まる


「………………………………死ねよ」


可視化されているかと思うようなプレッシャーが溢れてくる。

強さが足りないものは、これだけで負けを認めてしまうんじゃないかと思えるような。

言葉で人を殺す、それを実体験した。


「こっちもお前を殺すつもりだよ!」


「その前に洗いざらい吐いてもらうけどね!」


「わ、私を利用したのは絶対に許せません!」


こっちもマックスの臨戦態勢だ。


その瞬間、奴の周りに複数の転移魔法陣と思われるものが浮かび上がる。

あれはまずい、俺の予想が間違っていなければ…


「防げ!」


それを合図に魔法陣から多数の剣や槍が射出された。

クリスは切り払い、サラは魔法で防御している。

俺も問題なく刀で切り払う。

やはりあの魔法陣は…よくある武具を大量に吐き出すやつか!


「おとなしく…死ねよ」


今度は俺達を取り囲むように魔法陣が展開される。

この距離はかわしきれない。

既に一度見ているので、他のメンバーもその魔法陣の外へと高速で退避する。

くそっ!距離はある程度離れても良いのかよ!


「お前自身は来ないのかよ!」


「………」


こっちの問いかけには無視かよ。

これでも仕留められないのを理解したのか、奴は一際大きく禍々しい魔法陣を出した。


「……来い、フィアー・キメラ」


その魔法陣から、街の近くに夜よく出る以前俺たちが倒したキメラモドキとは全く違う、まさにRPGでよく見るキメラが……

いや、なんかすごく禍々しいんですけど

てかキメラにしては融合されてる魔物が多いような…


「こいつは僕お手製の魔物だ。作るのに苦労したんだ、材料だってそんなに手に入んないんだから、ちゃんとかわいがってくれよ。」


奴に少しいつもの笑みが出てきた。

あの笑みは奴が優位に立ってるという気持ちの現われなんだろう。

自分は安全圏から盤上を見て楽しむだけ、一番嫌いなタイプだな。


「っ!シンさん!あの魔物…」


「あぁ、かなり強い。」


「いえ…そうではなくて…」


サラが言いづらそうに報告してくる。


「あの魔物から…その……よく知った魔力を感じます…」


「………は?」


何を言って…


「多分……偵察隊の人のだと…思うんですが…それと、とても似ていて…」


「………その人は、もしかして最初に偵察に行って、戻ってこなかった人のものか?」


サラが静かに頷く。


「…そういうことかよ、このクソ野郎が。」


奴は言った

『それに殺したとは言っても、無駄になんてしてないよ。』

その結果がこれか


「……このキメラに冒険者を取り込ませたな…」


「そのとおり、よく出来ました。」


奴の口元はいつもの三日月形になっていた。


「こいつは中でも一番の最高傑作でね、他のはやられてるのを見ると失敗作ってことかな。」


「まさか……この戦場にいる魔物って……」


「あれ?気づいてなかったかい?他の魔物よりちょっと強い奴は、だいたい冒険者を糧にして"作った"魔物だよ。」


「……それが"実験"の一つだったってことか…」


サラとクリスが絶句している。

いや、後方に控えている他の者も言葉にならないようだ。

敵だと思って殺していた魔物が、実は仲間の冒険者の成れの果てだった。

奴の言葉をそのまま解釈すれば、冒険者が死んだ後に魔物として作り変えた、というから生きている仲間を殺したことにならないが…その精神のショックは計り知れないだろう。


「うそ…この戦場の魔物が…元冒険者…」


後ろからそんな声が聞こえる。

まずいな、かなり士気に影響する。


「のまれるな!今はもう魔物だ!奴は死体を加工しているんだ!どのみちもう死んでいる!むしろちゃんと弔うために、魔物の姿から解放してやれ!」


「へぇ…君みたいなのでも、多少は戦場ってやつをわかってるんだね。」


アレクがそう言うと、キメラが襲いかかってきた。

めちゃくちゃ早い。


「うっ!」


完全に対応が遅れ、刀で受け止める。

が、止め切れない。

力に負けて大きく弾かれる。


「はあっ!」


俺が飛ばされると同時に、クリスが斬りかかる。

キメラは特に気にする様子もなく、その身に剣を受ける。

体毛自体が恐ろしく硬いのか、クリスの剣は通らなかった。

クリスが驚いていると、"五本"ある蛇の形をした尻尾がクリスに襲いかかる。

明らかに致死性と思われる猛毒の牙を突き立てようと迫るが、ギリギリで剣で受け、不安定な体勢のまま他の蛇に横から薙ぎ払われる。


「ぐっあっ!」


蛇はクリスの腹に直撃し、吹き飛ばされてしまう。

二回転ほど地面にたたきつけられてが、反動を利用しすぐに立ち上がる。


「げほっ…あいつ硬いし、攻撃も速い。」


「なら、私の魔法で!」


サラが魔力をねり、キメラに向けて放つ。


「『サンダーソード』!!」


雷で作った巨大な刀剣、それを頭上から振り下ろし両断しようと迫る。

だが今度は背中の"三匹"の角の生えた色違いの羊?のような魔物がひと鳴きし、キメラの頭上に魔法陣が出現する。

『サンダーソード』はその魔法陣に防がれてしまう、そしてそのまま消えてしまった。


「うそ…あんな強力な魔法障壁…」


サラの魔法もかなり強力だった。

それでもあの魔法障壁とやらは貫通できなかった。

それどころか


「にげ…!」


キメラが炎の魔法をはなってきた。

無詠唱だが間違いない、あれは『ファイアージャベリン』だ、それもかなり強力な。

サラがギリギリで同じように魔法障壁で防ごうとする、が、こちらは防ぎきれず障壁がガラスのように砕け散ってしまった。


「きゃああああ!」


サラが悲鳴を上げる。

障壁でダメージを弱めたが、それでもかなりの威力だったようだ。


「…う、うそ…」


所々に焦げた後が残っている。

防がれたことも、防げなかったことも予想外だったようだ。


「サラ!クリス!!」


「わかった?この子はかなり強いよ?多分、最初に使ったあの強力な魔法…いや、あれは魔法ではないか?でも防ぎきると思うよ。」


だろうな、物理攻撃でも魔法攻撃でも、ほとんど通じていない。


「シン…」


「シンさん…」


二人が不安そうな顔をする。

刀を握り直し、努めて冷静な声で答える。


「大丈夫だ、俺に任せろ。」


奴の顔が少しひきつった気がした。


いいだろう、俺の本気をぶつけてやる。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ