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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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010話 野獣

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字があればご報告ください、泣いて喜んで修正いたします。

「し……『しん……ま………へん……かん……』!!」


俺がスキル名を発した瞬間、殺気が禍々しく形を形成する様に俺の周りにまとわりついた。

そしてそれが身体に染み込むかのように入り込んでいく。

肉が盛り上がり、ミチミチと嫌な音を立てて見るも無残な傷口が塞がっていく。


「『心魔変換』…マジかよ。」


バロックのそんなつぶやきが聞こえる。

どうやらこのスキルを知っているらしい。

そうしてる間にも俺の身体の傷は塞がり、傷を負う前よりも生命力が、いや、闘争力が上昇していた。

肌は浅黒くなり、筋肉は大きく膨らんでいる。

目つきもかなり鋭くなり、犬歯も大きくなっている。

さながら野獣のようだ。


「そのスキルは元々魔術師用の切り札なんだがなぁ。秘密にしてるスキルが有るとは思ったが、それとはな。」


バロックが驚いた様子で距離を取る。

このスキルはクリスにも言っていない。

いや、言う訳にはいかない。


「坊主、意識はあるか?どのくらい"上乗せ"したんだ?」


「あぁん?てめぇ、やっぱこのスキル知ってんのか。100くらいだよ。」


スキルの影響か、口が悪くなってしまう。

正確には暴力に支配されてしまってきているのだ。


「…100か、全振りだな。それで意識を保ってるとはね。」


『心魔変換』

このスキルは、スキルと魔法の練習をしている時、気付いたら習得していた。

これは自分のMPを犠牲にし、犠牲にした分をステータスに上乗せさせるスキルだ。

形としては『生命刀』の亜種かもしれない。

だが決定的に違うのは、その効果時間とリスクだ。


「俺が昔聞いた効果だと、上乗せできるMPは多くて自身の半分程度。それ以上になると、身体がMP…魔力に侵されてしまう。

まれにそれでも自身の8割近くの魔力を上乗せできるやつもいるらしいが、その場合魔力を身体に吸収しきれなくていずれ崩壊するってことだったが…」


そう、俺のスキル欄にもそう書いてある。

このスキルは禁術に近い。

使い処が難しいどころか、リスクも半端ないのだ。

呪われているスキル…そんなもんをいつの間にか習得してしまったということだ。

だが…


「てめぇを倒さねぇと、どのみち殺されるからな!」


剣を握りしめ、一気に距離を詰める。

自分自身でも驚くほどのスピードだ。

だが、ステータスが上乗せされているせいで、全く問題なく対応できる。

豪速で剣を振り下ろすと、バロックがそれに合わせて大剣で防いできた。


「おぉ!これを止めるか!」


さっきまでとは全く逆の立場だ。


「おらぁ!」


剣を強引に振りぬき、バロックの体制が若干崩れる。

その隙を逃さず、追撃の剣を振るう。


「『連続剣』!!」


スキル名の直後、さっきの『飛翔剣・五月雨』よりもずっと早く重い剣を放つ。

剣閃で火花が散る。

ギリギリのところで踏みとどまっているが、その顔にはさっきまでなかった焦りの色が伺える。


「…くっ!坊主、やるな!!」


まだ軽口を叩く余裕があるらしい。


「はっ!うるせぇよ!!」


連続剣の終わりの一撃を、ことさら力を込めて放つ。

さっきの俺がやったのと同じように、バロックは後ろに飛んだ。

自らの意志で大きく後ろに飛んでちゃんと着地し、体制を整えて一息つこうとしているのがわかる。

確かにこの距離を俺が詰めても、バロックが体制を整える事はできるだろう。

遠距離攻撃が俺にはなく、魔法もMPを全て上乗せしているため全く放てない。

そう、戦いが始まる前の俺なら。


「ぼう…「『飛翔剣・五月雨』」


バロックが何かを言おうとしている。

だがそんなものを聞いてやる義理はない。

俺はスキル名を被せた。

そう、さっき俺が受けたお前のスキルの『原理は理解した』。

つまり、俺にも使えるということだ。






バロックは目を見開いた。

さっきは己が敵に致命傷を負わせたスキルが、己の同スキルとは比べ物にならないくらい強くなって、自分に向かってきている。

これはシンが知る由もない事だが、『飛翔剣』自体の使い手は割と多い。

だが、『飛翔剣・五月雨』まで使えるのは、本当にごく一部の人間だけなのだ。


(冗談じゃねぇぞ!なんで俺のスキルを使うことができるんだよ!)


『飛翔剣』だけでも使い処によっては必殺剣となるものを、連続で高速で放つのだから無理も無いことだ。


(俺の周りで、俺以外にそのスキルを使える奴なんていなかったんだぞ!)


そんな事情もあって、バロックは一呼吸反応が遅れてしまった。

一秒にも満たない、ほんの僅かな時間。

この瞬間においては、絶望的な時間。


「……チッ!!」


バロックは完全に対応できていなかった。


(はえぇ!しかも重くて捌き切れん!)


一撃、二撃、三撃とギリギリで迎え撃ったが、対応できたのはそのくらいだった。


「が…ぁっ!『鉄壁』!!」


剣を持っていた右腕が斬撃により切り落とされ、もはや捌くことはできなくなったと判断したバロックは、スキルによって防御するしかなかった。

『鉄壁』はその名の通り自身の防御力を上げて、鉄の硬度の防御力を手に入れるスキルだ。

その代償として、発動したら効果が切れるまでその場から動くことはできない。

それを動物的な勘で察知したのか、それとも防戦一方になったのをチャンスととらえたのか、シンが大きく飛び上がった。






俺のスキルが奴の右腕を切り落とした。


「が…ぁっ!『鉄壁』!!」


その瞬間、奴はスキル名を放ってその場から動かず、真正面から斬撃を受け止めている。

かなり硬いようだ、切断までは至らず細かい傷をつけていく。


「今だ!!」


俺はそう小さく声に出し、大きく飛び上がった。

バロックは一瞬遅れて俺が飛び上がったのに気付いたのか、顔を少し上に上げた。

ここで決める!!


「うおぉぉぉぉぉ!!」


バロックは動けないのか、顔だけこちらを見て歯を食いしばり俺の一撃に耐えようとしている。

だが無理だ。

この一撃は『心魔転換』によってステータスが上乗せされた俺の全力の一刀。

さらにこのスキルにより倍以上の威力が付与される。

『飛翔剣・五月雨』で傷が付く程度の防御で、防げるわけがない。


「死ねぇぇぇ!!『剛剣』!!!」


一撃のみ、倍以上の威力で攻撃ができるスキル。

全身全霊を込め、俺はバロックを袈裟懸けに切った。

静寂がその場を支配する。






「ガハッ…」


バロックは剣筋に沿って血を吹き出し、その場に崩れ落ちた。





ちょっと主人公の強さを書けたような書けてないような…


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