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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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009話 死合

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字があればご報告ください、泣いて喜んで修正いたします。

「さーてと、坊主はどんぐらい強いのかね?」


そこ声の調子は今までと何も変わらない、軽い感じで発せられた。

だが、纏う雰囲気は今までとは一線を画した。

俺はバロックさんに会って、まだ一日二日程度しか経っていない。

それでも、下山ルートを先行する時、魔物が出てきて一緒に戦った時、ちょっとした雑談を話す時、村の人達と話す時、そんな機会はそれなりにあった。

そのどれもが、実は別人でしたと言われても疑うことのないような空気感。

これが殺気というやつか。

重い、そして鋭い。


「っなんで!バロックさん!」


きっと聞いたって意味なんかない。

バロックさんが偽物かもしれない、操られているのかもしれない。

どんな状況であれ、この質問に答えてくれるわけはない。


「あん?別にそんなこたぁ後でもいいだろ。」


言うのが速いか、高速で剣を振り下ろしてきた。


「クッ!」


腰の剣を片手で素早く抜き、その剣をギリギリで受け止める。

一撃がなんという威力だ。

今までの魔物の攻撃とはまるで比べ物にならない。

それでも全力で受け止めた結果、何とか剣閃を止めることができた。


「ほぅ!片手で受け止めれるか!基礎能力は嬢ちゃんより上みたいだな。」


いつもの笑顔でバロックさんがそう言った。


「ほら、嬢ちゃんを横に置いときな。今のでわかっただろ?そう簡単に俺に勝つのは無理だよ。」


バロックさんは身を引き、肩に剣を担ぎながらなんでもないかのように言った。

何を考えているのかはわからなかったが、言っていることに間違いはなかった。

クリスを庇いながら勝てるような相手じゃない。


「……なんのつもり…ですか」


クリスをそっと脇に横たわらせ、両手で剣を構える。


「何ってそりゃぁ、そのほうが面白いからに決まってるだろ。」


面白いから?

その言葉から推測すると、操られている感じではないことは確かだ。

俺は邪魔者のはず、その俺をわざわざ生かすようなことを操っている人間がするはずはない。


「…偽物か?」


「本物か偽物かも、後でいいだろ。やらなきゃ殺すぜ?坊主。」


相変わらずの笑顔。

殺気が更に膨れ上がっていく。


「剣を受け止めれたから、ちょっとはレベルを上げていこうか。」


砂利を蹴り、バロックさんが疾走してくる。

いや、正確には後からそうだったと気付くレベルの速さだ。


「はっ……!」


既に目の前には大剣が斜めから高速で迫っていた。

躱せない

そう判断したら、迷わず剣を両手でしっかり握り迎え撃つ。

剣が交差する高音が激しく鳴り響く。

右足が砂利の地面に沈むのがわかる。

くそっ!なんて威力だよ!


「いいねいいねぇ!次々行くぞ!!」


バロックさんは『連続剣』を発動したかのようなスピードで剣を振るっていく。

それをギリギリ致命傷を避ける形で、なんとか捌いていく。


「ははは!これも対応するか!対人戦は嬢ちゃんよりずっと上だな!」


会話をする余裕があるバロックさんとは対照的に、俺は一瞬足りとも気を抜くことができない。

意識を剣閃に集中させる。

夜の河原で、ほぼ足元の松明くらいしか光がない中躱し続けるのはとんでもなく精神をすり減らす。

しかも相手は自分より数段格上の相手だ。

今もこうして生きて相対できるだけでも奇跡に近い。

バロックさんが大きく剣を振りかぶり、今までよりも威力を込めた剣を放ってくる。

俺は少し後ろに飛んで衝撃を殺そうとしたが、あまりの威力に想像よりも大きく後ろに飛ばされ、背中から河原に落ちてしまった。


「ガハッ…!」


痛い

もちろん背中もだが、剣を持っていた両腕がしびれているようだ。

この感じ、訓練でビックボアの突進を剣で受け止めたことがあるが、それ以上だ。


「一撃一撃が即死コースかよ。」


悪態をつきながら素早く立ち上がる。

予想外にもバロックさんは襲いかかってこなかった。


「いや~、強いな坊主。」


バロックさんは心底感心したような顔をしている。

闇に目が慣れてきたせいか、水面に映る月明かりが強くなってきたのか、この距離でも表情がわかるようになってきた。


「手加減していたとはいえ、王都の衛兵でも俺相手にここまで持たなかったぞ。」


「余裕ぶっこきやがって。」


バロックさん…いや、バロックは無傷だ。

俺が攻撃らしい攻撃ができてないから当然なのだが。


「まぁ年の功だわな。さて、俺も次のレベルに行こうと思うんだが、お前も"次のレベル"があるんだろ?」


…こいつ


「あんたは人のステータスでも見えるのかよ。」


「いやぁ、言ったろ?年の功だよ。所謂、勘ってやつだな。」


聞いた話だと、バロックは以前に隣国との大規模な戦争、魔の大陸からの魔物の襲来など、いくつもの戦場の最前線から生きて帰ってきた兵だという。

俺なんかよりもずっと勇者らしい。(俺は勇者じゃないけど)

それを聞いただけで、数えきれない修羅場を経験したことが窺い知れる。


「残念だけど、その勘はハズレだろうな。」


「そうかい、じゃぁ力を出す前に殺すか、無理やり出させるかだな。」


っ!!殺気がまた倍くらいに膨れ上がった!!


「『飛翔閃』」


スキル名を放った途端、死が具現化されたような圧を感じる。

そして目にも止まらぬ速さで剣が振りぬかれると

"剣閃が飛んできた"


「『生命剣』!!」


圧を感じた瞬間に、俺もスキルを放っていた。

HPを少量犠牲にし、剣の威力を上げる。

あまりHPを犠牲にし過ぎると、急激なHP減少により目眩がしてしまう。


「ぅぐ………くそ…ったれぇ!!」


こちらも剣を振り飛んできた剣閃を受け止めようとする。

あまりの威力に数メートル後ろに押しこまれてしまうが、こちらの剣を振りぬき剣閃をかき消した。


「まだ終わらんよ。『飛翔剣・五月雨』」


今度は先程の連続剣かと見間違うような剣速で『飛翔剣』を繰り出していく。


「今度は連続で放つのかよ!」


あれが全て先ほどと同じ威力なんだとすれば、とても受け切れない。

俺は全力で剣閃の雨の中を、飛んでくる軌道をなんとか見切り躱し続けた。

時には体を捻り、飛び、転がり、剣で捌き、生きた心地がしない中ギリギリで命を繋いでいた。

俺が躱した後には、地面に転がってる大小様々な石が、ウォーターカッターで切られたかのような綺麗な断面を残していた。

人間一人が隠れれる大きさの岩すら、まるで紙切れみたいに切り裂かれていた。

あんなもん直撃したらただじゃすまないだろ!


「8…7…6…」


バロックのつぶやきが聞こえる。


一体何のカウントダウンだ?


「3…2…1…………チェックだ。」


"1"のカウントの際に『飛翔剣』に剣を持って行かれ取り落としてしまい、次の『飛翔剣』が目の前に飛んで来るのがわかった。

やばい

体制を崩してしまっている、さらに防ぐための剣も今から拾ったんじゃ間に合わない。


「やべっ…!」


完全に直撃コースだった。

その瞬間、大きな炸裂音と土煙が舞った。






少し土煙が晴れ、そこには真っ二つになった俺が…


「…………良い判断だ!」


いなかった。


「ギリギリで魔力障壁を作ったか!」


バロックは楽しそうに笑っていた。

『飛翔剣』が当たる寸前、魔力障壁を作り出して致命傷を避けた。

万が一のために、クリスから魔力障壁の作り方を教えてもらっていてよかった。

魔力障壁は、魔力による簡単な盾だ。

込める魔力(MP)によって硬度が変わる。

先ほどの破裂音と土煙は魔力障壁が破壊された影響だ。


「さて、そんな状態でもまだ本気を出さねぇか?」


直撃を防いだと言っても、正直かなりの重症だ。

左肩から右下にかけての深い裂傷。

真っ二つにならなかっただけでも御の字だ。


「はぁ……はぁ……はぁ…………ぅ……がっ……はっ……!」


肺の一部まで達しているかもしれない。

痛みと出血でくらくらする。


「あー…これじゃぁ無理かね。」


バロックが近くに歩いてきて、頭を掻きながら残念そうな顔をする。


「っ……!流石に……ここまで…………やられると…………」


痛みをこらえながら軽口を叩く。

だが実際、これ以上無理か。


「頭に……来るんでね…………俺も……!」


痛みが激しいがそれにかまけている暇はない。

全身の神経を集中させて、とあるスキルを発動しようとする。

大丈夫だ、発動さえすれば。

これは"そういうスキル"なんだ。

バロックが俺の気配が変わったのを感じたのか、歩みを止めた。


「あんたの……力が……どれほどか……わからない…………けど……っ」


このまま殺されてたまるか!


「し……『しん……ま………へん……かん……』!!」


息も絶え絶えにスキル名を唱えた。

その瞬間、俺の身体は光りに包まれた。

ここからは俺が"お前を"殺しに行く番だ。

バロックの放った殺気と同等か、それ以上の別の殺気がその空間に広がった。






やばい!ギリ投稿!

書く暇を作らなきゃ!


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