088 結局一番損した
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「ダメージコントロール!」
ギリギリシールドを張れたが、至近距離での爆発だったため、シールドを剥がされて船体も破損してしまう。
「船首が1割ほど無くなり融解しています。船体の側面には多少の傷はあります。エネルギー関係は問題ないですが、エンジンの推進部が大きく損傷し自力航行が不可能になりました」
船が動かなくなったと報告があり、絶望しかない。
PKの船は、ほぼ大破しているので撃沈したと言っても問題ないが、俺は動けないので、向こうの援軍が来ればそれで終わりだな……
宙賊が来るのが先か、こちらの援軍が……って、呼んでないから来るわけないな。発掘船がここに来ない限りは、俺は見つけてもらえないだろう。
爆発の所為で通信機の送受信機も壊れるし、レーダーすら動かない状態だ。1回目の忠告で船を動かせていれば、もう少しだけダメージを低くできたはずだ……
やることなすこと、PKに有利に作用していたから、この勝利は本当に偶然としか言いようが無いのに、最後にミスって引き分けもしくは負けになってしまうところだ。
シールドは張れても、動けないのだからまったく意味がない。オートタレットもほとんど潰れてしまっているので、本当に何もできない状態だ。
どうしようか悩んでいると、
『クソが、やっと通じやがったな! てめぇ、よくもやってくれたな! 俺の前に引きずり出して、頭カチ割って脳ミソにお前の犯した悪行を刻み込んでやるよ!』
なんかわからないが、通信が入った。
「PKの船からの、強制介入の光通信です。一方的に音声を船体に叩きつけて、中の人間に声を伝えるシステムです」
無線が使えなくなった船に、助けに来たとか伝えるために作られた装置なのだが、PKはその装置を使って、俺を脅してきた感じだな。
そっちも動けないだろうに、何がしたいんだろうな?
取得していたPKの船のデータから、船倉で主砲を撃った際の被害を考えると、エンジンもジェネレーターもいかれているので、あの船は動くことはもうできない。
人を送り込もうとしても、船倉がぐちゃぐちゃなので、宇宙遊泳できる装備があるかどうか。
身を守るために強化外骨格を着ていたとしても、中型以上の強化外骨格を着込んでいることはないので、自力で移動するのがかなり困難だ。
乗り込んで、こっちを制圧しようにも、シールドがあるのでまず近寄れないだろう。乗り込まれても戦闘用の強化外骨格はあるので、船倉の使えない向こうには勝ち目のない戦力だと思われる。
となれば、仲間が助けに来るかってことだよな……現状で救難信号は、かえって身を危険にさらす行為だ。どんな船でも拾うことが可能なので、宙賊に見つかればアウトだ。
向こうがすでに出していることを考えれば、それほど時間は無いと思う……が何もできない。
1時間ほど、PKの戯言を聞いていると、ジャンプアウトの反応が近くであったようだ。
これまでだったか……
通信から勝ち誇ったような声が聞こえているのが不愉快だ。元々だみ声といえばいいのか、俺が苦手なタイプの声で、それがまた腹立たしく感じる。
「ご主人様、ジャンプアウトの反応が4隻ありました。時間差で現れたことを考えると、宙賊ではないと思われます」
光学望遠鏡も使えない状態なので、ジャンプアウトしてきた相手を知ることは出来ないが、宙賊だったら4隻もまとまってアステロイドベルトに入ってこない。
アステロイドベルトの中に集団で、しかもジャンプアウトしてくる可能性があるのは、軍以外ありえないとセバスが判断する。
『この宙域にいるすべての船に通達する。この通信が届いた時点で、全ての行動を起こすことを禁ずる。エンジンやジェネレーターの火を落とし、シールドのみ展開を許可する』
高圧的な通信が流れる。
どうやら軍が来たようだ。4隻だけでなく、アステロイドベルトを包囲するように後2部隊8隻が配置されているようだ。
それだとアステロイドベルトを包囲できなくないか? そんなことをつぶやいてしまった。
「ご主人様、おそらく軍は、情報艦を持ち出してきたと思われます。レーダーや通信の機能が特化された軍艦です。ビーコンなどをばら撒いておけば、かなりの範囲をカバーできると聞いています」
軍にだけ許された装備って奴か。特殊艦というらしいが、詳しい事はあまり口外されていない。じゃぁ、君たちは何でそれを知っているのだろうか?
そんな疑問が尽きないが……軍が何やら言っているな。まとめると臨検するので動くなということらしい。
そもそも動けないから、助けてほしいんだけどな。
おや? 動いていないのに、PKの船は何やら攻撃をされている。船内の維持システムすら破壊したのではないかとメイが言っていた。
近付いてきた軍艦から船が2隻こちらへ向かってきている。片方はこちらへ、もう片方はPKの船へ。
チューブでドッキングされ、軍の人が乗船許可を求めてきた。臨検だから許可なく入ってくるのだと思ったが、どうも違うらしい。
船のデータから、俺たちが宙賊に襲われていた船だと分かっているため、俺たちは臨検ではなく話を聞かせてほしいというお願いだった。
どういうことだろうか?
話についていけなかったので、セバスに話を任せメイに要約したことを伝えてもらう。
かみ砕いていえば、この出動はギルドの報告を受け、犯行の手口から危険性が高いと判断して、ギルドの要請で出動した形なんだとか。
で、倒したPKは結構悪さをしていたようで、かなりの賞金額がかかっていたそうだ。
今回出動にかかった費用の相殺はできるが、アステロイドベルトに突入した事や、船を直してレッカーされる代金を考えると、今の手持ちでは全く足りなくなってしまうのだとか。
借金をして乗り越えるか、多少手元にお金が残るが手柄だけを譲ってくれるのなら、借金をしなくても済む方法を示してくれるようだ。
メイの試算では、手柄を譲った場合でも、本来ならこちらの赤字になると判断している。それだけ、アステロイドベルトでの救出などは、お金が跳ね上がるみたいだ。
倒せはしたけど、連れて帰ることもできないし、俺は手柄が欲しいわけじゃないから、多少手元にお金が残るようにしていただければ嬉しいかな。
ゲームとはいえ、多額の借金をしたくない!
これがリアルで、功績があれば有利にはたらくというのなら、話は変わってくるだろうが、ゲームの中の話だからな。すべてそちらにお任せします。
だから軍人がこちらに来た時に、臨検ではなく乗船許可を求めたのか。軍としてはお金はともかく、功績が欲しかったようだ。
その功績も、自分たちが撃沈させた! というわけではなく、救援を求められ連携して凶悪犯を捕まえた……ということになるようだ。
嘘じゃないから質が悪いが、俺が気にしないのであればセバスもメイも、問題ないと判断したので、船をレッカーし直してもらうところまでがワンセットとなった。
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