028 フラグを建てたつもりはない
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アラームの音で目が覚めた。
普段使っているスマートフォンを探すために右手を伸ばすが、壁に指がぶつかり痛かったため、手を抱え込むように体を丸くした。
「うぅ痛てぇ……俺のベッドの右側に壁なんてなかったはずなのに、頭と足の位置が逆転でもしてたか?」
寝ぼけている頭でぼんやりと、昨日の事を思い出すように体を起こそうとして失敗する。
ガンッ!
今度はおでこをぶつけて、痛みに襲われる。
その痛みで意識が覚醒したのか、今がゲーム内だということをやっと思い出した。寝る際にカプセルみたいな奴に入ったんだったな。
一応ゲーム内でシャワーも浴びられるようなのだが、目が覚めたので浴びる必要も無いと考え、コクピットへ向かう。
セバスが待機しており、寝ている間の話を聞いた。1個目のゲートを抜け、2個目のゲートへ向かって移動している最中とのことだ。
ここらへんは軍のテリトリーに近いので、宙賊の活動はほとんどないらしい。安全だと言われていた首都星の近くで襲撃された俺は、どうしても疑り深くなってしまう。
そんなことを考えていると、フラグでも立てたのかと言わんばかりに、アラームが鳴り響いた。
原因を調べると、救助要請の出ている船が近くにあるらしい。
航宙法では、救助要請を出している船を発見した場合、直ちに確認しに行く必要があるとしている。離れたところから確認し、近付いても問題ないと判断した場合、船を近くに寄せ状況を確認する義務があると明記している。
セバスにそう教わったので、俺が確認しに行く必要がありそうだ。
「こちらX-354、この宙域で救助要請を確認した。今から確認に向かう。状況も船のサイズも分からないため、軍にも協力を要請します」
オペレーターに言われた通り、座標と救助要請のシグナルのデータを軍へ送信する。近くにいる部隊を寄こすそうだが、それなりに時間がかかってしまうようなので、慎重に確認作業を行うように、と軍の人から話があった。
俺が操船して、セバスがレーダーを担当する形で進む。しばらく進むとメイがコクピットへ戻って来た。どこへ行っていたのかと思ったら、俺の食事を準備してくれていたようだ。
フードカートリッジを利用して作られた食事だってさ。でもさ、俺の操船ってコントローラーで両手で全部を調整するから、片手を離して食べるということができないんだが……
そうするとメイが隣に座り、コースをナビしながら食事を口に運んでくれた……えっと、女性に縁のなかった俺には、少しハードルが高いのだが、食べるように何度も促してくるので、口元に出されたサンドイッチにかぶりつく。
うん、普通のサンドイッチだな。コンビニのサンドイッチっぽい。可もなく不可もなく普通に美味しいあれだな。
メイが俺に食事を食べるように言ってきたのは、このゲームには満腹度と喉の渇きというモノがあり、パーセンテージでデバフがかかったりするんだとか。目がかすんだりとか、動きにくくなったりとかするんだとさ。
セバスに指示された位置へ到着する。
救助要請を出している船はまだはるか先だが、レーダーの範囲内に捉えており、詳細を調べるために最大距離の半分ほどの位置まで移動する必要がある。
ん~、レーダーの反応を見る限り、他の船の反応は無いけど……
「他の船の反応はありませんが、いくつか気になるサイズの小惑星がありますね。裏側にはレーダーが届かないので、何かが潜んでいても分からないから注意が必要です」
「セバス、小惑星の裏に何かがいると仮定して、この船にとって最悪の想定はどんなもんだ?」
色々な計算をするためか、セバスが黙った。
「一番大きいのでクラス5の船が2隻、その他クラスの船が10隻ほどでしょうか?」
「クラス5か……さすがにこの船じゃどうにもならんか。メイこの辺の地図ってもらってきてたっけ?」
そういうと、3Dマップが表示される。
「この位置からショートジャンプでここまで行って、レーダーで調べれば脅威はどの程度除ける?」
俺が考えたのは、今いる位置から見えないなら違う位置から見ればいいのでは? というモノだ。
だから、エネルギーを多少消費しても、すぐに移動可能なショートジャンプで、いくつかある小惑星の裏側を調べられる位置に飛んだらどうかという提案だな。
俺の提案にセバスは多少修正を加えて、効率の良い位置を割り出してくれた。
ドンピシャで想定している場所へ行けるわけではないが、その付近までたどり着ければ問題ない。
「メイ、ショートジャンプが終わったら、次のショートジャンプができるように、エネルギーのコントロールを頼む」
もし目の前の船が釣り餌で、近くに来た船を襲うためなら、確実に狙える範囲に敵がいるはずだ、とセバスが言うので慎重に移動をする。
多少無理をして、エネルギーを120パーセントまでチャージしてから、ショートジャンプで移動する。
「ジャンプアウト! すぐに周囲をスキャンします」
セバスが周囲のスキャンを始め、メイはサポートのためか、スキャンされたデータをセバスと確認している。
「索敵範囲内に敵性反応は発見できません。釣り餌ではなく本当に単独で航行不能になっただけでしょうか?」
事故をしたような形跡もないので、本当にトラブルによって船が止まったのだろうか? セバスとメイは、判断に困っているようだ。
この2人なら、正確な情報がある程度集まっていれば、正解を断言してくれる気はするが、今ある情報だけではさすがに判断に困るようだ。
「セバス、念のための確認なんだけど、俺たちがショートジャンプしてここに来たように、宙賊がいると仮定して、あの船の周りに近付いたところで、直接近くにジャンプアウトできたりするか?」
一応可能のようだが、危険があるので普通ならやらない手段だろうとさ。
「緊急離脱できる状態で、船の近くへ行って詳細を調べようか」
明確な危険がなかったので、船に近付き調べなければ、俺が航宙法で裁かれることになるからな。知らないふりをしてバレても問題だし、軍に通報してから行動を開始しているので、問題が無ければ調べないとまずい状況である。
船をゆっくりと近付ける。近付く位置は、急に動き出しても問題ないように射線が通らない場所だ。エネルギーはマックスを維持して、セバスに詳細を調べさせる。
調べ始めたセバスが、何故か苦笑している。船の中で何かが起きているのだろうか?
そう思っていると、急にアラームがブリッジ内に鳴り響いた。
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