020 残る謎
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「残りの2隻は、まだ動きませんね。逃げるにしても助けに来るにしても、動きがあってもいいと思うのですが……」
完璧なセバスからしても、宙賊たちの動きは良く分からないようだ。
10隻ほどの宙賊であれば、1隻1隻が重要な戦力であるだろう。そう考えると、助けに来るのが流れのように思えるが、残りの2隻も撃沈されれば……
「あ~そういうことか。おそらく、助けに行きたいけど俺たちが近くにいるから、助けに行って2隻とも撃沈は避けたいっていう、考えじゃないかな。後は、見捨てて帰ったら自分たちもどうなるか分からない……みたいな感じで、動くに動けないとかさ」
俺の考えていることを分かってくれたのか、セバスが納得した様子を見せる。有能過ぎると、バカの考えることが分からなくなるのかもしれないな。ああいうやつらは、合理的ではない思考の持ち主だったりするからな。
「にらめっこをしててもいいけど、する意味があるのかな?」
「船を鹵獲できれば、一応売れますね。エンジンの出力を考えれば、3隻なら曳航できますからね」
さらっと、レーダー範囲ギリギリの2隻も持ち帰る船に数えられていた。
射程の長さを考えれば、こちらが負ける道を考える方が難しい。もっと……それこそこの宙賊たち10隻全部が同時に突っ込んでこなければ、一方的に主砲でおしまいな気がする。
「ご主人様、いかがいたしますか? 2隻も沈めに行ってもいいですし、目の前の船だけ曳航してこの場を離れてもいいと思います」
「曳航するってことは、何かしらでこの船とあの船を繋いで、引っ張るってことだよね。どうしていいか分からないし、道具があるかもわからないのに、引っ張ることって出来るの?」
「あの船のジェネレーターを壊してしまったので取る方法ですが、壊れていなければもっと丁寧に扱いますね」
壊れているからこその扱いをするらしい。船として買い取ってもらうことは出来ないが、船をリサイクルと呼べばいいのか、素材へ戻して再利用するために、壊れた船を買い取っていたりするんだとさ。
そこらへんに放置して、スペースデブリになられても困るので、撃沈した場合は軍へ報告義務があるそうだ。自分で持ってこれないのであれば、軍にすべての権利を渡し運んでもらうということだな。
軍でも回収のためだけに船を出せば割に合わないが、巡回の帰りに拾ってくるのであれば、大した手間にはならないということで、資源を無駄にしないという意味でも、しっかりと報告義務があるんだとさ。
とりあえず、その方法を使っても俺たちに危険はないのか確認する。
「相手のシールドの内側に入れるくらい接近させて、最大出力で何本かアンカーを打ち込むだけですので、危険はありません」
「アンカーで繋げると、あの船から乗り移られないか?」
「絶対に無理です。死ぬ覚悟でミサイルを爆発させでもしない限り、無傷の船に生身で乗り込むのは、宙賊にはできません。軍にあると言われている、潜入用の特殊強化外骨格や、私たちクラスのアンドロイドなら入ることは可能だと思います」
セバスとメイの能力を持ってすれば、強制ハッキングをして船に入れるようだが、その船を守っているのがセバスとメイなので、最低でも3体はこのクラスのアンドロイドがいなければ、ハッキングは成功しないだろうって。
軍の特殊外骨格もハッキングをして、乗り込むタイプらしいのだが、それもセバスとメイがいるので、無力化可能ということだ。
やっぱり、この船よりもこの2人の方が、圧倒的に当たりだよな。
「じゃぁ、近付いてアンカーを打ち込もう。操船はメイに任せるよ、連携をとってあの船の曳航準備に入ってくれ」
俺が指示を出すと、狂いの無い正確な操船で船を横付けし、セバスがアンカーを打ち込んだ。
アンカーを打ち込んだ後どうするのかと思ったら、ワイヤーを巻いて船同士を密着させて移動するようだ。
曳航って言うから引っ張るのかと思ったけど、予想を大幅に裏切った方法で運ぶんだな……
仲間だと思われる2隻の船を放置して、進路を変え移動を開始する。
そうすると、2隻が慌てたように動き出し、こちらを追ってきた。
「2隻が追ってきたけど、どうすればいいと思う?」
「お荷物を1隻抱えていると言っても、こちらの船には追いつけないので、無視して進んでもいいですが、宙賊はゴミみたいなものですので、沈めても問題ありません」
セバスは好戦的だな。でも、アンドロイドの特徴で、自分たちに可能なことで利益になるなら、積極的に行う傾向があるということなので、セバスからしたら危険な状況ではないって事なんだろう。
「敵船にミサイル系の兵装の反応はありませんから、負ける要素は無いですので、殲滅を推奨します」
って、メイさんもそういう考えなのね。
「了解。少しでも危険になるようなら、宙賊の船も捨てて逃げよう。とにかく任せたよ」
「了解しました。メイ、後ろの2隻が追い付ける速度で慣性航行して、船首を敵の方へ向けてください。引き撃ちで狙います」
車で高速でバック走行しながら、追いかけてくる敵の車に銃を撃つのを、宇宙船でやることを引き撃ちという。
慣性と姿勢を整えるスラスターで、減速しないように調整しながら優位に立って戦えるって奴だな。
操船訓練の時にも話にあったあれだな。
これが引き撃ちか……確かに一方的だ。特に主砲の射程が違うので、宙賊船は何をすることもなく沈黙した。運が悪かった1隻は、正面から撃ち抜かれ爆散したため、船体の回収もできなかった。
これはギルドと軍に報告を入れる必要があるっぽいな。
もう片方は、1隻が爆散したことにより逃げようとしたところを、主砲でエンジンを撃ち抜いたため、スラスターだけでは速度を出せず逃げることが不能になっている。
この命中精度は、セバスの能力なのか、それとも船としてこのくらいは当たり前なのだろうか?
射程ギリギリの遠距離砲撃の場合は、船の火器管制からのアシストで、俺が撃っても今回であれば問題なく当てられただろうと、セバスが教えてくれた。
今回はこちらの船の速度が予想よりも早かったのか、回避運動もせずにこちらへ向かってきていたので、回避想定で撃った主砲が何発かは当たらなかったが、簡単に沈めることができたんだとさ。
爆散した1隻はどうにもならないので、ジェネレーターを撃ち抜いた3隻目も同じようにアンカーを打ち込み、首都星へ向けて移動を開始する。
首都星の近くなのに何で宙賊なんていたんだろうな? 安全なはずだったのに……
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