116 序盤は簡単じゃなかったのかよ!
ゲーム的なメタな考えをすれば、何かしらのチャンスが突然現れて、その隙に逃げれば何とかDF1875に辿り着ける……となるのだが、このゲームは想像上ではあるがリアルを追及している部分もある。
それを考えると、船の位置関係を考慮して一番追跡がしにくいと判断した時に逃走する……それが最適解となる。
どっちもありそうで、どっちでもない可能性はある。
可能性だけを考えてたら、いくらでも可能性が生まれてしまうな。
っと、俺は1人じゃなかった。船に合わせて難易度が変わっているようなので、付属品というのもおかしな話だが、メイとセバスも込みで難易度が決まっていたら、この2人に話を聞かないのはどうなんだ?
シナリオイベントは、戦闘に関していえばアンドロイドの力を借りられるので、2人の話を聞くべきかもしれない。もしNG行動なら、何かしらの規制がかかるはずだから、行動してから考えよう。
「メイ、セバス、今の状況を打破する案がないか聞きたい」
数瞬、悩んだ様子を見せて、メイとセバスがアイコンタクトを交わし、メイが口を開いた。
「おそらくですが、この包囲網はリスク無しで逃げ切ることは出来ません。ただ逃げるのは、クラス5の船が相手にいますのでショートジャンプで逃げることは難しいです。そこまでは、ご主人様も気付いていると思います。
可能性があるとすれば、クラス3の2隻を行動不能にすれば、何とかなるかもしれません」
ん? 何でクラス3の2隻を落とせば、何とかなるんだ?
「相手の行動原理は分かりませんが、クラス3の2隻を撃沈ではなく行動不能にすれば、クラス5の船が守るために動く可能性があるという考えです」
なるほど。逃げるかクラス5を落とさないと、どうにもならないと思っていたが、第3の選択肢があったのか。でも、
「クラス2を行動不能にするのは、意味ないのか?」
「意味がない事はないと思いますが、クラス2の船であれば見捨てる選択肢もあるということです。クラス3の船であれば、回収を考える可能性はあります」
下手に考えても時間の無駄だ。メイの助言通りクラス3を2隻行動不能にしよう。
「クラス3を行動不能にするとして、どういう作戦が取れる?」
「相手の動きを先読みして、クラス3の後ろにクラス2の船が来るように位置が取れれば、行動不能にさせられる可能性が高くなります」
クラス3に回避行動をとらせないようにするのか。回避したら後ろの船に当たる……ゲスイ考えだけど、これは戦闘なんだ。1対8なんだから、こっちはなりふり構ってられない。
「2人が想定した敵のルートはあるか?」
俺が言うと、すぐにレーダーにルートを表示してくれた。
俺の位置から見て、船が重なる場所は……2ヶ所か。1ヶ所は反撃のリスクはあるが、若干後ろから狙えるのでエンジンを撃ち抜きやすい位置。もう1ヶ所は、反撃のリスクはすぐに無いが、ほぼ正面になるので逃走が難しくなる位置。
前者だな。船の向いている方向を考えれば、こっちしかない。
予定の位置に来るのには、もう時間がない。クラス3を1隻行動不能にできたとして、もう1隻をどう対応するべきか……
距離があるから乱戦は無理、1隻を行動不能にしたら一旦反転して逃げよう。
スラスターを使い小惑星を予定の位置に移動させ、船を目的の方角へ向ける。
今回は、エネルギーを節約するために1発しか撃てない。セバスの補正を最大に受けての砲撃となる。
砲撃後はアンカーを外してスラスターを最大にし、武装集団の射線上に小惑星を割り込ませて、小惑星を盾にしながらここから離脱だな。
やることは決まった!
3
2
1
ファイヤ!
狙い違わず、クラス3の船のエンジンを撃ち抜く。当たり所が悪かったのか、船の後方部分が誘爆した。
アンカーを外し小惑星に隠れる。
船を回転させ、一気にエンジンを全開にして離脱する。
こちらの居場所はバレているし、こちらより索敵範囲が広い船が相手なので、遠慮なくアクティブソナーを使って、相手の船の位置と情報を奪っていく。
3発目のアクティブソナーを使ったところで、クラス5の船の主砲の情報が手に入った。軍グレードの主砲ではないことが分かり、少しだけホッとする。
やっぱり、こちらの船の情報がバレているのは間違いなさそうだ。
クラス5の船の後ろにクラス3の船が並んでおり、こっちが反転して引き撃ちしてもクラス5に阻まれるかたちだ。
予想外だったのは、クラス2の5隻はクラス3の船の救助に向かっているようで、こちらを追ってきているのは2隻だけだった。
とはいえ、クラス5が追ってきているので、こっちが圧倒的に不利な状況には変わりない。
こっちは、クラス5の船と同じくらいの航行速度はある。ショートジャンプは向こうの方が距離が長い。運が悪ければ1回目のショートジャンプで追いつかれて、撃沈される……
このまま追いかけっこをしても既に射程に入っている状態なので、小惑星の盾を失えばすぐに砲撃をされてしまう。
ならば、あいつが小惑星を越えるタイミングでショートジャンプをしよう。それまでは、エネルギーのオーバーチャージをして、次のジャンプを迅速に行えるようにするべきだ。
ストレージが少し劣化してしまうけど誤差だし、撃墜されるよりはましだ。
アクティブソナーで、しっかりとクラス5の船の位置を確認しながら、船を動かし速度を上げていく。
小惑星を超す……前にショートジャンプ!
相手もこちらを捕捉していたので、小惑星を超える前から主砲にエネルギーを回していたようだ。射線に入るとそのまま砲撃してくることが分かったので、間一髪ショートジャンプが間に合った。
30度ほど進む方向を変えてエンジンを噴かす。
少し遅れてクラス5が距離をつめて、俺を追撃してきた。
ランダム回避運動をメイに任せて、アクティブソナーを放ちクラス5を監視する。
ショートジャンプ1回で、クラス2の主砲の射程範囲に入っていた。ランダム回避でも、どれだけ逃げ切れるか分からない状況だ。
ギリギリまでエネルギーをチャージして、ショートジャンプをしたい……
あれ?
「セバス! クラス3の船を確認できるか?」
「ソナーの反応は、ぎりぎりクラス7の主砲の射程内という所です」
大分離れたな……クラスク4の範囲内からクラス7の射程内か。
もう1回ジャンプして、反転してから加速して短めのジャンプすれば、クラス3の船を狙えそうだな。
いや、ショートジャンプの距離を短くして、反転して突撃すれば……近距離戦になるか?
ジャンプするときのエネルギーで大体の距離がわかるから、あえて距離をつめずに一定の距離を取る可能性は高い……やっぱり、初めの作戦通りクラス3を狙おう。
反転して加速するまでの間、砲撃にさらされることになるけど、気合で避けて耐えるしかない。




