それから
ユリウスは頭を抱え、大きなため息を吐く。
迷惑だったのだろうか。
けれどもこの気持ちを伝えずに、彼と別れることになるのはあまりにも悲しかった。
「すみません、突然このようなことを告げてしまって」
「まったくだ」
このまま何も言わなかったら、この先もずっとユリウスと友人関係でいられただろうか。
それについて考えると、胸が切なくなる。
「どうして先に言う?」
「え?」
ユリウスの言葉の意味がわからず、聞き返してしまう。
「この問題が解決して、しばらく落ち着いてから、アルヴィとの時間をゆっくり過ごす中で、気持ちを伝えるつもりだった」
「つまり、その、私とユリウスは、同じ気持ちだった、ということですか?」
「他に何がある?」
「――っ!!」
私とユリウスは同じ気持ちだった。こんなに嬉しいことはないだろう。
ただ喜んでばかりもいられない。
今後、ユリウスはどうするのか。
「あの、ユリウス。これからどうするのか、お聞きしてもいいでしょうか?」
「ああ、それについてはもう決めてある。アインホルン聖国に戻るつもりはない」
戻っても校長が関わった事件の責任を取らされるだけだという。
「オブリガシオン王国に亡命していたほうがましだろう」
それを聞いて安堵する。
これからもユリウスと共に生きることができそうだ。
◇◇◇
ユリウスと話し終えると、セシリアから呼び出しを受ける。
「よく戻ってきたわ」
「はっ――!」
思っていたよりも短い期間だったが、私にとって大きな収穫があったように思える。
ユリウスの亡命も受け入れ、教会での業務に就いてもらうという。
ラウル枢機卿についても、セシリアに伝えることとなった。
「そう……」
ラウル枢機卿のおかげで私達は脱出できたのだ。
それを伝えると、セシリアは目を伏せ、拳を握る。
「二人は、愛し合っていたのかしら?」
「私には、そのように見えました」
セシリアは一冊の本を私に見せる。
「それは?」
「〝神学校・真なる兄弟の絆〟初版本よ」
「見つけたのですか?」
「ええ。エルヴィンが持ってきてくれたの」
なんでも私が探していると聞いて、探してくれたらしい。
「よく見つかりましたね」
「ええ。エルヴィンの母君の愛読書だったみたいで」
「は、はあ」
エルヴィンの母は三冊所有していたようで、その中の一冊をくれたようだ。
「作者のシャルロット・ド・ドリージャンは、神学校の校長だったらしいの」
「え!? そうだったのですか?」
「ええ。エルヴィンの母君から聞いたわ」
校長の名前はジャンフリード・フォン・シャルロード。
たしかに名前が似ている。
「実話だったらしいの」
「そう、だったのですね」
セシリアはそういう話をエルヴィンの母君から聞いたという。
「さっそくエルヴィンの母君と打ち解けているようで」
「ええ。話が合うわ」
本の貸し借りで盛り上がっているという。
なんとも平和な関係だと思った。
◇◇◇
それからというもの、ユリウスはオブリガシオン王国に正式に亡命し、教会で働くこととなった。
彼は教会内で頭角を現し、枢機卿となる。
私はセシリアの騎士として侍っていたのだが、二十三歳のときにユリウスと結婚した。
婚礼衣装のドレスを着た私を見て、母は号泣していたのである。
その翌年に、子どもが生まれた。
側付きの騎士の役目は、エルヴィンが務めることとなる。
暮らしに余裕が出てきたら、パウウルとフィン、ヘィン、ホィンの三人をオブリガシオン王国に招いた。
パウウルは聖職者となり、フィンとヘィン、ホィンは織物工房を開いてタオルをオブリガシオン王国に広めてくれた。
平和な毎日が続く。
それをもたらしてくれる女王陛下、セシリアに感謝したのだった。




