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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第四章 断食の夜に

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再度屋根裏へ

 神学校に入学してから、初めての休日を迎える。

 しかしながら神へ仕える身であるゆえ、休みといっても羽を伸ばせるわけではない。

 外出するのはもってのほか、カードゲームや遊戯盤などの持ち込みも禁じられているので、遊びようがないのかもしれない。

 休日というよりは、体を休める休息日と表したほうが相応しいのだろう。

 寮内とはいえ、歩き回るときは制服を着なければならない。

 朝食後、パウウルは面倒だと言って制服から着替えずに寝転がり、そのまま眠ってしまった。

 フィンとヘィン、ホィンは自習室で勉強するらしい。

 偉いな、と思っていたら、ヘィンは嫌だと訴えるも、フィンに引きずられて向かっていた。ホィンもしぶしぶといった感じでついて行っている。

 フィンの提案で、意思に反して勉強会をすることになったようだ。

 ホィンが私を振り返り、誘ってくれた。


「アルヴィも一緒に僕らと勉強しようよ」

「やりたい気持ちはあるのですが、これからユリウスと共に外出する予定でして」

「ええ、そうなの!? でも、外出はできないって、ブラザー・マテオが言っていたような?」

「そうなんです。ユリウスが特別に、私の外出許可まで取ってくれて」


 ユリウスの実家に行って、兄弟ブリューダーだと紹介してもらうのだと言うと、同情の眼差しを向ける。


「いろいろ大変なんだね」

「ええ……。ユリウスに相応しい者か認めてもらえるか、ドキドキしています」

「大丈夫だよ! アルヴィは礼儀正しいし、物腰も柔らかくて、人もいいから」

「ありがとうございます」


 三つ子を見送ったあと、私服に着替える。

 アインホルン聖国にやってきた日に着ていた、黒を基調にした聖職者を思わせる一着だ。

 そろそろ約束していた時間になる。

 出かける前にパウウルにも声をかけておいた。


「パウウル、起きていますか?」

「あーーー、うーーーん」

「ごめんなさい、起こしてしまって」

「大丈夫。半分起きていたから」 


 半分起きていたとは? と思いつつも、時間がないのでそのまま会話を続ける。


「少し出かけてきますね」

「なんか、さっきホィンと話していたな。ユリウスの家に行くんだっけ」

「ええ、そうなんです」


 パウウルはカーテンを開き、大きな欠伸をする。


「外出は私服でいいんだ」

「みたいですね」

「かっこいいじゃんか」

「ありがとうございます」


 そろそろ夏に近づきつつあるので、この装いでは暑くなるだろう。

 まあ、この先頻繁に出かけることもなくなるだろうが。


「なあ、アルヴィ」

「なんでしょう?」


 パウウルがいつになく深刻な声色で話しかけるので、思わずまっすぐ顔を見てしまう。


「前にさ、噂で聞いたこともあって。貴族の屋敷に行った人がさ、戻らなくなった話を聞いたことがあってさ」

「私も聞いたことあります」


 昨日聞いた、ホフマン家が関わっていた件かもしれない。


「ユリウスだから大丈夫だと思うが、貴族はいろいろきな臭い話を聞くから、気をつけろよ」

「はい、ありがとうございます」


 時間があれば、お土産を買ってこよう。

 そういう余裕があるかわからないので、今は言わないでおく。


「では、行ってきますね」

「ああ、行ってらっしゃい!」


 パウウルの見送りを受けつつ、太陽寮を出てユリウスと落ち合ったのだった。


 今日もユリウスが先にきていた。


「お待たせしました」

「いいや、今来たところだ」


 人に見られないうちに、早急に行動に起こす。

 月寮の生徒はほとんど出かけてしまったらしい。

 ブラザー達も寮の監視員以外いないようで、校舎のほうはもぬけの殻となっているようだ。

 ユリウスは屋根裏で発見した骨を包んで背負っている。

 これ以上増えませんように、と祈りつつ屋根裏へ向かった。


 校内は施錠されているので、校舎をよじ登って屋根裏の窓から中へと入る。

 ユリウスは最短の侵入ルートを考えていたようで、案内してくれる。

 木を伝って二階に上り、さらにバルコニーから窓枠に飛び移って屋根を目指す。

 ユリウスは慣れた様子で、するすると上って行っていた。


「アルヴィが運動神経がよくて助かった」

「その、ついて行くことができてよかったです」


 どうしてこんなことができるのかと言うと、ユリウスは幼少期によく屋敷を抜け出し、街をぶらぶらしていたらしい。


「今振り返れば、誘拐されなくてよかったと思っている」

「子どもの独り歩き、恐ろしいですよね」


 幼少期のユリウスはさぞかし愛らしかっただろう。一度も誘拐されずにここまで生きてこられたことを、奇跡のように思った。


 なんて話を挟みながら、屋根の上に到達することができた。

 屋根裏の窓は施錠されていないので、難なく侵入したのである。

 昼間でも、屋根裏は薄暗くて不気味だった。

 漂う異臭も相変わらずである。

 ユリウスは侵入ルートを考えるために、昨日の夜にここまで来ていたらしい。


「そのように危険なことをされていたとは」

「まあ、暇を持て余していたからな」


 次にそのようなことをするときは、私を誘ってほしいと伝えておく。


「迷惑だろうと思って」

「迷惑なんかではありません」

「そうか……わかった。次はアルヴィも誘おう」


 一人で危険なことをさせるよりも、一緒のほうがいいだろう。

 今回、外から異変を感じ取れないように、暗幕を窓に張り付けておく。

 続いてユリウスは前回と同じように、聖術で光の球を作り出す。

 明るく照らすよう、大きめに展開させた。すると、屋根裏は一気に明るくなる。

 初めて全貌を目にした私達は、絶句してしまった。

 これまで闇に包まれていた屋根裏に、無数の骨が散らばっていたから。

 頭蓋骨もいくつか確認できた。


「――っ!!」


 これだけの白骨化した遺体があれば、異臭もするはずである。


「なんなんだ、これは」

「いったい何人分のご遺体なんでしょうか?」


 近くにあった骨は、ずいぶんと月日が経っているように思えてならない。

 何年、何十年と前から、ここに隠しているようにしか見えなかった。


「ここにある骨をすべて持って行くのは無理だろう。というか、一つを確認すれば十分だ」


 ユリウスは傍にあった頭蓋骨に聖水を振りかけてから、祈りを捧げる。私も彼のあとに続いた。

 魂が穏やかになるように祈ったあと、ユリウスは頭蓋骨に布を被せて包む。

 それを先日拾った骨と一緒に背負った。


「まず、医者のところに行って、調査を頼もう」

「そうですね」


 神学校の敷地内の外に馬車を待たせているという。

 それに乗って、聖都シエルに行くようだ。


 

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