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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第三章 神学校の謎

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図書室と太陽が沈む頃

 太陽が沈みかけている。

 そろそろ寮に戻ったほうがいいのだろう。


「ユリウス、また明日調べにきましょう」

「ああ、そうだな」


 業務記録をあった場所に差し込み、脱いでいた外套を着込んで帰り支度を進める。


「アルヴィ、今度の休日に、ハンスかルーカス、マクシミリアンの家に行ってみようと思うのだが、どう思う?」

「いいかもしれません」


 神学校側からなんと言われて退学することになったのかも気になる。


「アルヴィさえよければ、一緒に行ってくれるだろうか?」

「ええ、私でよければ同行するのですが、外出はできるのでしょうか?」

「基本的に週に一度の休日であれば、いつでも許可なくできるが――もしや劣等生フェアザーガーは外出を禁じられているのか?」

「ええ。基本的に長期のホリデー以外は外出できないと、入学案内書にありました」

「そうだったのか……。ならば明日、ブラザー・マテオにアルヴィを連れて行けるか聞いてみるか」

「お願いします」


 あの三人は私に会ってくれるのだろうか。

 恨まれているような気がしてならない。

 それも不安ではあるものの、まずは外出許可が取れることを祈るばかりだ。

 なんて話をしている間に、日が暮れてしまった。

 外はすっかり真っ暗である。

 食事の時間も始まっているだろう。


「急いで帰ろうか」

「はい」


 ユリウスのあとに続こうと一歩踏み出した瞬間、鐘の音が鳴ってギョッとする。

 これはおそらく、食事の開始を知らせる鐘だろう。

 続いて部屋の灯りが消えたので、心臓が口から飛び出るかと思った。

 立ち止まったユリウスの背中にぶつかってしまう。


「すみません」

「いや、それはいいのだが……どうして灯りが消えたのか」

「校内にも消灯時間があるのでしょうか」

「そういえば、そんなものがあったな」


 ブラザー達も帰ってしまったのかもしれない。

 図書室内は暗闇に包まれている。

 外は曇天で、月灯りすら差し込まない。

 そんな状況で歩き始めたのだが、テーブルの脚に思いっきり足をぶつけてしまった。


「いっ――!!」

「大丈夫か?」

「ええ、まあ」

「見えないのに動こうとするな。私に掴まっておけ」


 ユリウスも見えないのではないか、なんて言うと、彼は聞こえるか、聞こえないかの声で答えた。


「私も一応、〝ナイト・ウォーカー〟の血筋だからな」

「え? 今、なんと言いましたか?」

「なんでもない。夜目が多少利くだけだ」

「そうだったのですね」


 どこを掴んでいいものか迷っていたら、ユリウスは私の手を握って歩き始めた。

 彼の手は思いのほか大きくて、ふしくれ立ち、大人の男性のものだと思った。

 華奢きゃしゃな印象があったので、ギャップに驚く。

 ユリウスは本当に夜目が利くようで、ずんずん歩いて行く。

 出入り口で十字架飾りローゼン・クランツをかざし、解錠しようとした。

 しかしながら、反応はしない。

 もう一度、同じようにかざすも結果は同じ。

 ユリウスは深く長いため息をはーーーーー、と吐き出す。


「聖術の仕掛け全般が封じられているようだな」


 灯りが消えた時点で、扉も開かないのでは思っていたらしい。

 ユリウスが想像していた通りの結果となったようだ。


「どうやら閉じ込められてしまったみたいですね」

「やられた!」


 消灯時間についてはユリウスも把握していたようだが、聖術の効果が発揮されない件については知らなかったという。

 もしかしたら鐘を鳴らすブラザーが残っているかもしれない。

 扉を叩いて誰かいないか叫んでみるも、反応はなく……。

 図書室内は壁一面に本棚が並び、高い位置にしか窓がない。

 その窓も聖術で管理されているようで、自力で開閉できるものではないようだ。

 おそらく盗みを警戒するあまりの対策に違いないが、私達みたいな調べ物に夢中になっている生徒が閉じ込められることは想定していないのだろう。


「アルヴィ、すまない。私がしっかりしていれば、このようなことにはならなかったのに」

「いいえ、私も時間を忘れて読み込んでいたので……」


 何度か鐘の音が鳴っていたとは思うが、集中するあまり耳に届いていなかったのだろう。


「ユリウスのルームメイトも心配してしまいますよね」

「ルームメイトはいないが」

「ルームメイトがいない……ということは、もしかして一人部屋ですか?」

「そのもしかしてだ」


 なんて羨ましいのか、と思ってしまう。

 こういう部分にも、優等生シュトレーバー劣等生フェアザーガーの扱いに差があるようだ。


「アルヴィは何人部屋なんだ?」

「通常は十人部屋なのですが、急に入学できなかった人達がいたようで、今は五人でひと部屋使っています」


 同じクラスのホィンも同じ部屋のルームメイトであると紹介した。


「ああ、だから特別親しげな様子だったのか」

「ええ、そうなんです」


 きっとホィンだけでなく、パウウルやフィン、ヘィンも私が寮に戻らなかったので、心配しているだろう。

 私の不在に気付いた寮母から、問い詰められないといいが……。


「どうしましょう」

「扉を壊すか」

「退学になりますよ」

「ならば止めておこう」


 本気の声色に聞こえたので、思いとどまってくれてよかった。

 それはそうとして、本当にどうやって図書室から脱出すればいいものか。

 頭を抱えてしまった。   

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