Epilogue
「あら、雨が降って来てしまったわね。」
ぽつりぽつりと外で雨音がし始めた。
「舘脇さん、大丈夫かしら。」
少し憂いた目で外を眺めながら、そんな言葉をポツリ、呟く。
「それにしたって今日は何だか愉しくって、気持ちがすっきりしたわ。」
【お前が楽しそうなのは、久方ぶりだな。】
酷く嗄れた、変に不気味なまではいかないが、低い声が花屋の中で木霊する。
「あら、起きてたの、水神様。」
【起きてたさ……お前たちが話しているのを、ずうっと聴いていた。】
「あらそう、愉しくって気づかなかったわ。」
カウンターに肘をつき、ニコニコして頬杖をする。
雨が降っているせいか、湿度が上がり自然と花の匂いも濃く漂っていく。
「お水って不思議よねぇ、布や紙を濡らして色を濃くさせたり、材質を変形させたり、凍らせると量が増すのに、無味無臭で気化すれば見えなくなる。お花にお水をやっているとお花たちはより美しく、艶やかになる。」
【……水のやりすぎは逆に腐らせるがな。】
「ふふ、それもそうね。時に水は毒にも成りうるわね。そして何かを反射して鏡にも虹にも成りうる……。」
カランカラン、と不意に花屋の扉のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ、透明なお客さん。」
今夜も真夜中の花屋が、怪談話に花開く。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
もしかしたら、この小説続くやも知れません。
そうなればまたよろしくお願いいたします。




