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いわゆる、他人事ってやつ 10 ♯ルート:Sf




~シファル視点~



二人の会話が持つ意味がわからない。


ひなが一人じゃないということと、ナーヴが選ばれたということ。


息を飲み、二人からの言葉を待つ俺たちの耳に、不思議な音が聴こえだす。


カツン…コツン…とガラスのような固形物がぶつかる音。


魔石っぽくも聴こえる上に、物同士がぶつかる音の高さが一定じゃなく、何かの音階にも聴こえなくもない。


その音に気を取られていると、「あー…やっと生成できたか」というナーヴの声がする。


「生成?」


思わず体をナーヴに寄せると、険しい顔つきでカルナークに「兄貴をどうにかしろ」と文句を言われる始末。


「どうにかって…」


指名されたカルナークはカルナークで、どうしてか顔を赤らめて俺を見ているし。


「……なんだよ」


突き放すように声をかけても、顔を赤らめたまま見つめられ続け。


「へへ……」


「…はは」


オチが、お前らなんなんだよとか思われていそうな笑顔の応酬とかいう……。


カルナークはこれで、俺をどうにか出来たということにしたのか? 謎なんだけど…、ただ妙な照れくささがあっただけで。


脳内でツッコミを入れていたら、ナーヴがやっと説明をはじめた。


「あの音は、アイツの頭から出てるものを一時的に閉じ込めて魔石化してる。時間が足りなくて、一定数作製したら魔方陣の更新が必要。いわゆる、一時しのぎだな」


見ると、ひなのベッドの足元の方に小さな魔方陣が浮かんでいて、頭の方から転送でもしているのか…そこから玉子でも産んでいる感じで丸い魔石が転がって出てくる。


「アレを、ひとまずどこかに預ける格好にして、数個は研究用に避けて…。それと、解析の結果、瘴気に近いモノで間違いないな。教会のやつらには、そのへんの話は流さず。……えーと、あとは……」


ナーヴがおもむろにポケットから紙を取り出し、開いた紙の真ん中を指先でトンと突く。


ほわりと丸い光が出てきて、ナーヴはそれを手のひらにのせたまま腕をまっすぐ伸ばして。


「結界展開」


そう呟き、指を鳴らす。


ナーヴの体を薄く覆うように光のオーラみたいなものが、ナーヴの体を包み込んでいく。


それと、さっき口元を覆っていたナーヴとカルナークの魔力が込められた大きなハンカチを手にして。


「……よし。それじゃ、カルナーク、ちょっと手伝えよ?」


そう言ったかと思えば、ナーヴがカルナークを引っ張ってベッドの方へと歩き出した。


「さっき言ってた話だよね」


とカルナークがナーヴに確かめると、ナーヴはただうなずくだけだ。


「大丈夫なのか? ナーヴ。ひなのそれが瘴気に近いものなんだろう? お前の体に影響が…」


ひなをどうにかしてあげたい気持ちと、幼なじみの命と…どっちも俺にとって大事で。


「影響ないための結界だ。時間なかったけど、多分…短時間ならイケるはずだ。……俺ばかり高みの見物って訳にいかなくなったしな」


そう呟き、ひなの傍らに立つ二人。


俺も駆け寄って、二人とは反対側のベッドの横に立った。


ひなのそばに来てみて、何度か深呼吸をして、結界の機能を確認してからナーヴがひなの手をカルナークに握らせた。


「で、俺からもそっちに流すから、上手いこと混ぜこませろ。浄化の時に直接触れるとか平気な状態か自信ないから、今から俺の魔力も馴染ませる。外部魔力を魔石状にして抜いてるから、多少の魔力は大丈夫なはず。その作業やりながら、抜けるだけ抜くから。コイツの負担になってる瘴気みたいなやつは」


「…うん、わかった」


ナーヴの話を聞き、カルナークがひなの手を握っていつもの訓練のような空気を纏いだした。


魔法に関していえば、この二人以上の適任者はいないだろうし、魔力の総量だって問題ない。


俺がひなにしてやれない部分だ。そこは素直に認めよう。


――出来ないものは出来ないんだから。


そう思う心の裏っかわで、やっぱり考えてしまうのも認めよう。


あの時失くしてしまった魔力が戻せたら、もっと力になれたのかもしれない? なんて。


俺の未来だって変わっていたかもしれないと、今でも思わないこともない。


考えても無駄なことは考えない方がいい。効率が悪いし。


とか思うのに、自業自得で失くしたものを欲しがるだなんて、俺も結構強欲なんじゃないか?


ひなの額に浮かぶ汗をタオルで拭い、二人の邪魔にならない程度に佇んでいた。


「……シファ。さっきのことも気になってるんだろ? コイツが“一人じゃなかった”って話」


「それと、ナーヴが選ばれたって話も」


何かをしながらでも会話が出来るあたり、さすがと言ったところか。


カルナークは他に気を取られる余裕なんかないようで、ひなと同じように汗を浮かべつつ真剣に魔力をつなげている。


「とりあえず順を追って説明する。最初にコイツの魔力を魔石状にしているのについては、カルナークの魔力操作でどうにかって話も出たんだけどな。感情で揺らぎやすいから、ちょっとマズいかもって話になって、急ぎで構築したのがさっきの魔方陣。コイツ…コントロールは上手いのに、感情が顔に出るのと一緒でそっちの方もブッレブレになるのさえ直せたら、いろいろやれるようになると思う」


そこまで話をしていると、ナーヴの横から今にも泣きだしそうなカルナークが真横のナーヴを見ていた。


「…ほぉら、な? こういう話ですら、すぐに動揺する。……もうそろそろ、成人だろ? がんばれよ? カルナーク」


カルナークにとっては、もう一人の兄のようで、魔法に関しての師匠にも近い存在のナーヴ。


瘴気のことがなきゃ、いろんなことでナーヴが常にカルナークの先を歩いていた。


この国での成人は、17だ。カルナークは15。あと二年で成人になる。


「成りたいものや成りたい自分があるのなら、成長してくしかねぇんだよ」


手をつないでいなきゃ、頭でも撫でられていそうな空気だ。


「…ほら。涙浮かべてねぇで、集中しろ。…お前にとっても大事にしたい子なんだろ? コイツ」


言いながら、俺の方をチラッと見て口角をあげて小さく笑うナーヴ。


口パクで「お前もな」と言っているのがわかる。


こういう時にどんな顔をしていいのかわからなくて、視線を外した。


「で、だ。話の続きな? 魔石状にしたのには理由があって、この中に入っている魔力を属性転換とか出来ねぇかなと思ったのと、それが出来りゃそこから魔力譲渡が叶わないか? って考えた」


魔力譲渡とか、そんなもん受取先があるって状況での話だろうが。


首をかしげる俺に「お前だよ、シファ」とナーヴが告げる。


「魔力ぶっ飛ばして減らしたものを、お前は自力で戻そうとしてきた。それでも難しかった。自力でやるには限界があった。そこで…お前の弟の登場だ」


「え……俺?」


ナーヴの体にも負担が出始めたのか、じんわり汗をかき出す。


「今、こうしてやっていることの応用編だな。俺の研究したものが間違っていなきゃ、イケるはず。コイツの体には負担なものを取り上げて、必要とする人間に渡す。……ただし、魔力を持っていることと、受け取れるだけの空きがあるのが条件。だから、魔力の総量を上げるためだけに使うのならば、該当しない。100までしか入らない人間を120にしたいからって言われても、器以上のものは溢れたり零れるだけ。戦闘時の魔力補給にも使えるシステムになるかな? と。魔力回復の薬はあるけど、薬の材料にだって限界があるし、コイツとは違った理由で魔力過多って人間が最近増えているって報告もあったしな。吸い上げて、譲渡先の人間の属性に合った魔力にして譲渡する…が出来れば悪い話じゃないかなと。……ただ、戦争とかに使われんのは望まない。だから、そのへんの扱い方に関しては、ジークとアレクと俺とで話を煮詰めているところ」


そこまで話をしたとこで、ひなの様子がいつものあの状態になっていく。


体内に魔力が入ってくると、くすぐったかったり体がほんのりあたたかさを帯びたりして、心地いい感じになるとか。


結果、ひなの顔がふにゃりと緩むんだよな……。悪いことじゃないけど、カルナークがデレデレになるキッカケになるわけで。


「…………カルナーク…集中しろったろ? デレてんじゃねぇ」


案の定…ナーヴに叱られるほど、顔に出まくっていた。


「今のところ、進行具合はどうなの? 魔力、混ぜるのに…どっちにも反動とかないの?」


誰にも万遍なく負担が大きそうなその作業に、不安が募る。


「ないわけじゃないけど、そうならないためのカルナークだ。コレが魔力を馴染ませてあるが故の、可能な策」


カルナークが魔力を馴染ませた理由も知っているかのように、ナーヴがからかうようにカルナークに視線を向けた。


「……な? しかも、相手の体に負担がないようなやり方なのが、条件として最高すぎる。……上出来。でも」


そこまで呟いてから、ポソッとカルナークに囁くような声で。


「女の子相手に、最悪。……コレ終わったら、お前の魔力、解除してやれよ?」


目を見張り、また泣き出しそうになっているカルナーク。


「ほーら、集中、集中。なーに言われても、やることから目を外すな」


自分でカルナークが動揺するようなことを口にしておきながらも、集中が切れたら遠慮なく注意をして。


「シファ」


そして、おもむろに俺の名を呼び。


「さっき話した、俺が選ばれたってやつなんだけど」


そう呟いてから、話しにくそうに重く息を吐き出してから言葉を続けた。


「コイツを“どうにか出来る”のも、護れるのも、浄化に関してのアレやコレや、最後の最後に俺だけがどうにかしてやれる。さっき話したように、俺が光属性なのが関係してんだけどな」


なんて、またなにか引っかかる物言いをする。


「選ばれたのがわかったのは、ここ数日内。そして、本当に俺が選ばれたのかがわかるのは、この後」


ナーヴがそう話すと、カルナークがひなから手を離す。


「多分、大丈夫かな…と」


カルナークがナーヴに報告のようにそう話しかければ、二人が位置を変えてひなを見下ろす。


ナーヴの方がひなに近くなって、すこしだけその身を屈める。


腰を折って会釈でもしたような姿のナーヴが、おもむろにひなのひたいに自分のひたいをくっつけた。


まるで、あの日、ひながカルナークにしようとした姿のように。



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