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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
アナザーパーティ編
59/107

その高き塔で

さっそく町での戦闘がまたまた始まります。9月中におわるかなぁ?

 翌日の夜一行はホテルに到着した。ホテルはディレインやティアマットの宿とは違って清掃が行き届いている。

 取っていた部屋に入った4人はさっそく椅子や床に座った。


「そうそう。また彼女を見たんだよ。猫を連れていたからまず間違いはないんだろうね。」


 椅子に座るなり、ジョシュアは言った。

 すると杏奈も何かを察したかのように上着のポケットから紙切れを取り出した。その紙切れは折り曲げられており、猫の歯型がついている。


「私もこれを受け取った。猫が私のところに来て、こいつを置いていったんだ。」


 杏奈は猫が置いて行ったという紙切れを広げた。繊細な筆跡で何かが書かれており、一部が猫の唾液でにじんでいた。


 ――タワーに来て。


 書かれていた内容はそれだけだ。だが、文字を見たジョシュアは何かを確信したようだった。


「これは間違いなくアルセリアが書いたものだ。今からタワーに行ってもいいだろうか?」


 ジョシュアは言った。


「それは構わないぞ。行方不明だったのならなおさらだ。」


 と、シオンは言う。ジョシュアは椅子から立ち上がってホテルの部屋を出ようとする。ここで杏奈がジョシュアを呼び止めた。


「何があるかわからないから私も一緒に行くよ。そもそも受け取ったのは私。」


「ああ。あまり邪魔をしないでくれれば構わない。」


 ジョシュアが答え、杏奈とジョシュアはホテルを出た。

 向かう場所はクロックワイズのタワー。そのタワーは蛍光ブルーの無機質な光を放ち、ガラス張りであることも相まって美しい。写真を撮影すればさぞ綺麗に映ることだろう。




 杏奈とジョシュアはタワーの前に到着した。受け取った紙には「タワーに来て」と書かれていたが、ここには誰もいない。


「おかしいね。アルセリアは約束をすっぽかすような人ではないのだけど。」


 と、ジョシュアは言った。彼の発言から、アルセリアへの信頼が見て取れる。


「約束をすっぽかされていないとすれば、タワーの上にいるかもしれない。」


 杏奈は言った。


 こうして、杏奈とジョシュアはチケットを買うとタワーのエレベーターに乗り、展望台を目指す。タワーには300メートルの高さの場所に展望台があり、そこから階段でさらに上へ行ける。タワーを上るエレベーターの中、杏奈は下を見下ろした。モダンなクロックワイズの町が広がっているのが見える。地上で見たのと同じく、色とりどりの無機質な明かりが町を彩るのだ。


「ついたみたいだ。」


 ジョシュアは言った。

 エレベーターが止まり、ドアが開く。その瞬間、展望台とそこから見える景色が目に飛び込んできた。


 何組ものカップルが訪れたであろう展望台には一人の青年が立っている。二人はエレベーターを降り、展望台のフロアに立つ。


「……ジョシュア・ノートン。来たか。」


 足音が聞こえたのか、振り向きざまに青年は言った。その青年は緑色の服で身を包み、展望台のガラスのすぐそばに立っていた。彼の姿を見たジョシュアはすぐさま身構える。目の前にいる青年は只者ではない。


「アルセリアではないな。誰だ、お前は。」


 ジョシュアは尋ねた。


「ああ、俺?メックスだ。アンジェラ様の命令でルーン石を集めている。」


 その青年、メックスは答えた。


「アルセリアはどこにいる?彼女から手紙を受け取ったのだが。」


 尋ねる杏奈。するとメックスは彼女をバカにしたような表情となる。


「ここまで信じてくれるなんて、さすが鮮血の夜明団だぜ。アルセリアはここにいない。お前らをおびき出すための罠だよ、馬鹿が。」


 と言うと、メックスは拳銃を抜いた。抜いて1秒もたたずに杏奈に銃口を向けて引き金を引く。銃声。だが、撃たれたのは杏奈ではなかった。ジョシュアが杏奈とメックスの間に入る。三点バーストで撃ち出された弾丸がジョシュアに命中。頭と胸と喉に一発ずつ当たっており、人間であれば致命傷となる。

 ジョシュアは息を吐くと同時に赤黒い血の塊を吐き出した。口から血を流すジョシュアは目線を上げる。彼を見たメックスは茫然とする。なぜ彼は銃弾を受けても平気な顔をしていられるのか。


「信じられない、って顔をしているね。君は吸血鬼を知っているかい?」


 ジョシュアが言葉を発すると、さらに彼の口から赤黒い血がこぼれてきた。メックスにとってその様子は余計に気味が悪かった。


 ――吸血鬼でありながら魔物ハンターである。ジョシュア・ノートン。彼は夜を駆け、狩るべき者を狩る。目には目を、歯には歯を、魔には魔を。


「私も吸血鬼だ。」


 ジョシュアはそう言うと、一瞬にしてメックスに詰め寄った。メックスも負けじと引き金を引く。響く銃声。再び額に弾丸を受けたジョシュアはよろめき、メックスは距離を取る。杏奈はエレベーターのドアを開け、エレベーターの中に避難した。強化ガラスの窓からジョシュアとメックスの様子が見える。

 引き金を引くメックス。弾丸をかいくぐり、メックスの生き血を求めるジョシュア。この瞬間にもジョシュアの喉笛に弾丸が撃ち込まれる。その瞬間、ジョシュアの手刀がメックスの顔に傷を入れた。


「……お前の再生力は桁違いだな。さすが吸血鬼。」


 メックスは言った。弾切れではなく、この瞬間にもジョシュアに銃口を向けている。


 メックスの外した弾丸はエレベーターのドアにもめり込む。再装填もなしにメックスは10発以上撃っている。


「まさか……」


 杏奈の中に嫌な予感がよぎる。杏奈はただ、エレベーターの中から見ていることしかできなかった。人間である杏奈は銃弾を撃たれれば死につながる。頭を撃たれればなおさらだ。



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