異界の都市
今回から新たなパート突入です!
かなり前に張った伏線もぼちぼち回収していきます。覚えていてくださると嬉しいです。
住人を失い、地下から炎に包まれた町が一つ消えた。それにかかわった6人の男女は夜闇にまぎれてその町を去った。
「……そうですか。結局は無能な男でしたね、アヴラズ。町一つを無駄にするなど言語道断です。僕はお前を助けない。せいぜいそこで死んでいればいい」
ティアマットの町の役所。その粗大ゴミ置き場に倒れているアヴラズ。彼からルーン石を回収したビリーは冷ややかな目を向け、二度とアヴラズを受け入れる事はなかった。
次にビリーが向かう先も決まっている。
「次はクロックワイズですね。彼らがしくじることはないでしょうが念のため」
杏奈、シオン、グランツ、ジョシュアの4人は3日かけて本来目的としていた町のクロックワイズに到着する。4人が到着した頃にはすでに明け方近くなっていた。
クロックワイズはディレインやティアマットと比較しても発展しているようで、高層ビルが立ち並んでいる。青、緑、ピンク、オレンジなど、様々な色の照明が暗い町を彩っている。
「俺たちはしばらくクロックワイズでノエルと二コラを待つ」
シオンは言った。4日ほど前、ノエルは銃弾を受けて治療のために離脱している。合流場所をクロックワイズの町と決め、シオンや杏奈たちは数日の間待つことにしていた。
「そうでしたね。待っている間に私はこの町を調査してみます」
杏奈も言った。冷静を装っている杏奈であるが、内心ではノエルのことを気にしている。
一行はクロックワイズの町のとあるホテルに向かった。きらびやかながらもどこか無機質な光が一行を包んでいた。
そんな町を歩く中、ジョシュアの視界にある女が飛び込んできた。――白髪、赤眼、透き通るような白い肌、蛍光色を多用した上着。彼女は猫を頭の上に載せている。
「生きていたのか……」
ジョシュアは思わず立ち止まってつぶやいた。
「どういうこと?」
と、杏奈はジョシュアに聞き返した。
「私や二コラとともに異界の調査に来ていた魔物ハンターだよ。彼女で間違いがなければ名前はアルセリア。猫が好きでね、うちの支部のネズミ捕獲長の世話もしていたよ」
ジョシュアは目を伏せながらアルセリアの事を他3人に話す。その一方、杏奈は異界に来る前に見た行方不明者のデータを思い出す。二コラとジョシュア以外にもあと二人いた。
「おいおい!魔物ハンターってことは、俺たちの味方になるかもしれねえんだろ!」
杏奈の思考を遮るようにグランツは言った。どこからどこまでも楽天的なグランツはアルセリアが敵対する可能性など1ミリたりとも考えていなかった。裏切りを許容しない鮮血の夜明団に所属する者として、その考えは間違っていないのだが。
「そうだね。彼女は多くを語る人ではないが裏切るような人でもない。裏切るようなことがあれば、相当なことがあるとみていいだろう」
ジョシュアは言った。
「俺たちがアルセリアを迎えに行こう」
ジョシュアの見た白髪の女はとある高層ビルへと向かっていく。その目的が何なのか、一行に知る由もなかった。
夜明け、クロックワイズの町のとあるビル。そのビルに4人の男女が集まっていた。彼らが集まった目的は合コンなどではなく、もっと大切な事だという。
「ルーン石がことごとく奪われているらしいな」
筋肉質な男のアモットが言った。
「そうですね。ドリー……じゃなかった。ドロシーが言うには鮮血の夜明団の異界調査隊御一行がルーンを逆に奪っているなんて話もあるようです」
このメンバー中唯一の女、アルセリアが言った。彼女は白髪に透き通るような白い肌と赤い眼が特徴的な、アルビノと言われるような姿をしている。
「まあ、その話は本当なんですけど」
と、アルセリアは付け加える。
「他はどうなのか知りませんけど、私はアンジェラさんのためにあいつらからルーン石を奪い取ります。どんな手を使っても」
アルセリアの赤い瞳には正体不明の意思が宿っていた。忠誠心とはまた違ったものだ。彼女がどのようにアンジェラを見ていたのか、他の3人にはわかりかねる。
「とにかく異界調査隊御一行から俺たちがルーンを奪う。いいな?」
そこにいたメンバーは全員頷いた。
それから彼らはルーン石を回収すべく、ルーン石の所持者の動向を探ることにした。




