第26話 タロウ、息抜きをする
息抜き回のはずが少し長くなりました(そんなに息抜きしてない)
よろしくお願いします!
冒険者ギルドに戻ってきた。とりあえず、ベリーさんとは明日も会う約束をして別れた。
「お~いクソ坊主、今日は一人かー?」
「あ、ギルド長お疲れ様です。さっきまでベリーさんと訓練してましたよ…」
「それにしては早くないか?まだお昼だぞ?」
「えぇ、まぁ、ベリーさんに用事があるとかでですね、はい」
「そうか、お前はクエスト受けて行かねーのか?」
「あ、そ、そうですね、何か受けていこうかなーとか思ったり」
俺は何か簡単に出来るクエストがないか聞くために受付まで足を運んだ。
「すいませんお姉さん、何かいいクエストありますか?ベリーさん居ないんで採集かお使いクエストでお願いします」
「ちょっと待ってね~…あ、これが急ぎなんだけど、タロウ君子供好き?」
「え?まぁ、嫌いではないですね」
「なら良かった、今から書く住所に行って子守りしてきて欲しいのよ。ご両親が旅をしながら芸を見せてる旅芸人さんらしくて、この街に来たばっかでいろいろ忙しいみたいなの」
「子守りでいいんですね?分かりました、行ってきます」
「よろしく頼むわね~」
◇◇◇
ここが書かれてる住所だよな…?普通の宿に泊まってるんだな。勝手な想像だけどテントとかで過ごしてるかと思ったわ。
「すいませーん。クエストを受けて来た者ですけどー」
宿の一室に向かい声をかけた。中からご両親らしき人達が出てきた。
「よく来てくれたな。とりあえず入ってくれ」
「失礼します。」
「あらあら、若い方が来てくださって、これならうちの子達も安心するかしら」
「俺は旅芸人の座長をさせてもらってるビータだ。」
「妻のラーナです。」
「タロウです。冒険者もしていますが一応学園の生徒です。」
「それでさっそくだが、俺らはまだこの街に来たばっかでな、いろいろ動きまわらないと行けないんだけど…」
「私達には8歳になる子供もいまして、子育てしながら旅もしているという訳でして、特に午後からは忙しいのでその間だけでも面倒を見てくれる方を探しておりました。」
なるほど、芸を見せる場所や練習で子育てしながらだとやはり大変なのだろう。街にいる間くらいは子守りを頼んで練習などに打ち込んでいるのかもしれない。
親なら両立した方が…なんて思ったりするけど芸でお金を稼いでる以上、練習は必要だし仕方ない部分もあるのかもしれないな。
「分かりました。午後からなら僕も予定を空けれますし、期間はどのくらいでしょうか?」
「そうですね、三国武道祭に出る選手を応援するパレードがあるのはご存知ですか?10日後くらいですけど。それに私らも演目の1つとして出させてもらうので、その前の日までお願いできますか?」
いえ、ご存知ないですね…パレードとか聞いてないぞ!皆知ってる事か?先輩達は去年よりもっと前から王都に居て、カルミナも王都に住んでるから…みんな当たり前に知っているのか…
「大丈夫かタロウ君」
「大丈夫です!あのパレードですよね知ってます知ってます。出演されるのですね、凄いなぁ」
「そうだろう!王都で大々的にやるパレードだから王族の方もいらっしゃるし、失敗はできないんだ。新しいのも考えないといけないし…という訳で子守りをお願い出来るかな?」
「分かりました!今日から約10日間ほど頑張らせてもらいます!」
「では、さっそく娘達を紹介しよう!おいで!アリッサ、メリッサ!」
「アリッサ、メリッサ、この人はタロウさんと言って午後からはこの方が遊んでくださるわ。言うことをちゃんと聞くのよ?」
「……」「はいぃ……」
アリッサちゃんは金髪で髪が腰くらいまである。たぶんお姉さん。気が強そう。
メリッサちゃんは金髪で髪はショートだ。たぶん妹さん。こっちは気が弱そう。なんか双子でも正反対な感じだ。顔はそっくりだけど。
「すいませんねタロウさん。この子達少し人見知りで…」
「いえ、大丈夫ですよ。いきなり仲良しになんて難しいですからね。アリッサちゃんがお姉さんでメリッサちゃんが妹さんですか?」
「逆よ!」「反対ですぅ…」
「あ、そうなんだごめんね…」
気の強そうな方が"妹"のアリッサちゃん。
気の弱そうな方が"姉"のメリッサちゃん。たぶん覚えた。
「では、タロウ君さっそくですまないが私達も行かなくてはならなくてね。夕方くらいには帰って来れると思うからそれまで頼むね」
「わかりました。こっちの事は任せてください!」
「じゃ、行ってきますね。アリッサ、メリッサいい子にしてるのよ。では、タロウさんお願いします」
「「「はーい」」」
◇◇◇
さ、どうしましょっか?
子守りといっても2つ下なだけの子と何を話したらいいか分からずに、とりあえず今はお茶を飲んでいる。ラーナさんが置いていってくれたやつだけど。
「アリッサちゃん、メリッサちゃん。何かしたいことはあるかい?」
「「……」」
くっ…!
子供同士だから何とかなるかと思ったけど会話が続かない…お菓子でも食べよう…
俺はアイテムボックスにしまってあるクッキーを取り出して、お茶請けとして食べ始めた。
「クッキー!」「クッキーです~…」
ん?クッキーが欲しいのか?2人が興味を出してくれた事に少し嬉しくなりアイテムボックスから2人分のクッキーを取り出した
「ほら、食べていいよ?」
「いや、クッキーじゃなくて!」「どこから出てきたんですかぁ~…」
なんだ…クッキーが欲しかった訳じゃないのか…
でも、何か突破口が見えた気がしてきたな。
「クッキーはポケットの中に入っているんだ」
「うそよ!」「うそですよ…」
「嘘じゃないよ、ほら!」
俺はポケットに手を突っ込んでクッキーを取り出してみせた。2人の驚いてる顔が少しおかしいが不思議な事が目の前で起きて興味が尽きないのだろう。
「え…?すごい!」「お兄さんも旅の芸人なのですかぁ…?」
どうやら奇術師と思われてしまったようだ。ただのアイテムボックスなんだけどね。どうせだからもう少し手品を見てもらう事にした。
「ククク、実はそうなんだよ…。こちらをご覧ください。何の変哲もないただの布ですが…」
俺は布を手で包み込むように持ち、召喚と凍えで唱えた
「3…2…1!」
『ピヨ!ピヨ!ピヨ!』
「ひよこが出たわ!」「ひよこさんですぅ!」
驚いてる驚いてる。召喚とかアイテムボックスってこういう使い道もあるのか。お金に困ったらこうして稼ぐのも良いかもしれないな。
「ピヨリ、この子達はアリッサちゃんとメリッサちゃんだ」
『ごしゅじん~おなかすいたッピ!』
「アリッサちゃん、メリッサちゃん。ピヨリがお腹すいたみたいだからそこのクッキー食べさせてみない?」
「ひよこの言葉が…」「わかるのですかぁ…?」
そうか、2人にはピヨピヨとしか聞こえてないのか。
「いや、なんとなくだよ?それよりもほら!ピヨリが待ってるよ?」
『ごはんッピ!ごはんッピ!』
「はい、ひよこ」「ひよこさん…ごはんですよぉ…」
ピヨリがパクパクと食べ出した事で2人の顔も驚きの顔から笑顔になっていく。ピヨリのおかげで少しは打ち解けられたかな?
「タロウ…さん、このひよこ欲しい」「可愛いです…」
「ごめんね2人共。ピヨリは召喚魔法で出した僕の使い魔だからあげられないんだ」
ピヨリを欲しくなる気持ちはよく分かる。可愛いし癒されるもんな。とりあえずピヨリは肩に乗せておく。
「魔法で召喚…」「私達とはレベルが違う…」
「ごめんねホントは芸人じゃないんだ。僕はただの冒険者で学園の生徒だよ。見せる為じゃなくて、戦うために召喚を覚えたんだよね…一応」
召喚したのがピヨリとハルミナ様だからどうしようか考え中なんだけど。
「2人は将来、お父さんお母さんのように芸人になるのかい?」
「なるの!」「まだ訓練中ですけど…」
訓練中か…このままこの宿に居ても退屈しちゃうだろうし少し外に行って見せて貰おう。ついでに王都の散歩も出来ていいかな。
「2人さえ良ければ今から外に行かない?2人の技も見せて欲しいし」
「外に行きたい!」「だ、大丈夫かなぁ…」
とりあえず、ギルドで場所を借りてそのあと散歩にでもいこうかな?
「じゃあ出発だ!まずは2人に技を見せて貰って、その後王都を散歩しよう!」
◇◇◇
「おい坊主、戻って来たのか!…なんだその双子は?」
「ギルド長あんまり汚い言葉はやめてくださいよ、この子達にハゲが移ったらどうするんですか!」
「そんなもん移るか!で、誰なんだその子達は?」
「クエストで少し面倒を見ることになった旅芸人の娘さん達ですよ。ちょっとギルドの訓練場の空いてるとこ借りますね」
「それは構わねぇが何すんだ?」
「この子達も将来は旅芸人になりたいらしく、その訓練をするんですよ」
「そうかい、お嬢ちゃん達頑張りな」
「……」「…ヒッ…!」
厳ついギルド長が怖かったのか2人共背中に隠れてしまった。周りの冒険者達からもクスクスと笑いが聞こえてくる。
「悲しいなギルド長…」
「そこまで怖いか俺の顔は…」
「2人共、大丈夫だから。とりあえず訓練場に行こうか、着いてきて。」
強面ギルド長は置いといて、俺達はさっそく芸の練習をする事にした。
「2人共、まずは何か見せてくれるかな?」
「わかった!」「わかりました…」
妹のアリッサちゃんから見せてくれるみたいだ。
「光よ」
アリッサちゃんが複数の光の玉をだしてそれを動物の形に変えていく。ウサギにリスに鳥の形になってそれを動かしている。なかなか器用だな。
「火よ」
今度は火魔法でさっきと同じように動物の形にしていった。小動物が動いてる姿はけっこう癒されるな。
「ど、どう?」
「うん。とっても可愛らしかったよ器用だねアリッサちゃん」
次はどうやら姉のメリッサちゃんが見せてくれるみたいだ。緊張してるようでちょっと心配だ。
「い、いきます。水よ」
メリッサちゃんが水の玉をいくつも自分の回りに浮かべた。かなり制御が上手いようだ。
「アリッサちゃんお願いぃ…」「わかった!」
お?アリッサちゃんが何かするのか?
「光よ!」
アリッサちゃんが光の玉をだしてメリッサちゃんの水の中に吸い込まれる様に入っていった。輝く水の玉になってとてもキラキラして綺麗だった。
「すごい!すごいよ2人共!とっても綺麗だったよ!」
「はぁ…ギリギリだけど」「つ、疲れますぅ…」
これでもっと長い時間見せれる魔力があったらもう一人前なんじゃないだろうか?
「もうちょっと見ていたい気持ちになるね。2人の課題は魔力の多さかな?」
「そうね…」「まだまだ2人の技も増やさないとです…」
そっか2人で技をか、さっきの水と光の玉を使っての演出は綺麗だったな水の玉が光の玉を受け入れる時の強度やタイミング等も調節しないと難しい技だった。双子ならではの息の合いようでぴったりだったな。
ん?2人で技…息が合えば…いや、自分とほぼ同じ力量な出来るのか…?……いける?いけるか!?
思い付いたらすぐに行動しないとな!
「召喚、ルミナス」
『タロウようやく呼んでくれたのですね』
「「わぁ、妖精さんだぁ!」」
ルミナスにさっき見せてもらった技を伝えて出来るかどうか聞いてみた。
『たぶん大丈夫ですよ。アレンジまで含めて任せてください。』
……とりあえず大丈夫そうだ。よし、
「水よ」
メリッサちゃんの様に水を浮かべる。頼むよルミナス。
『光よ』
ルミナスが出した光の玉を水の中に入れてくる。ここまでは成功だな。出来ると分かったからもう十分ではあるが…
アリッサちゃんもメリッサちゃんも食い入るように見てくれている。期待に答えようか。
「動け」
俺は光輝く水の玉を自分の周囲で動かした。これだけでも十分綺麗だし幻想的でもある。場所が訓練場ってのがアレだが。
『七色変色』
ルミナスがやってくれた。光輝く水の玉が七色の玉に変わった。
「わぁ~」「きれいですぅ…」
2人共に見惚れてしまったようだ。俺も自分で見てて美しい光景に思える。こうなったらとことんサービスだ!
「ピヨリ、自由に飛んでくれ!」
『わかったッピ!』
空を飛ぶというよりは浮かんで進んでる様なピヨリの後に七色水玉を追尾させる。不恰好だが、ピヨリの後に七色の線が出来てる様に見えて面白いな。
訓練していた冒険者達も集まってきてやいのやいの騒ぎ出した。
「すごいよお兄ちゃん」「すごいですお兄さん…」
アリッサちゃんもメリッサちゃんも満足してくれたみたいだし、ここまでにしておくか。
「ありがとうピヨリ、ルミナス。もう終わりにするよ」
最後に七色水玉をはじけさせて終わりにした。周りからの拍手が少し恥ずかしいが嬉しかった。
『タロウこれは使えますね』
「はい。俺とルミナスなら色々組み合わせられますね」
2人共同じ考えに至った所で後で話をする約束をし、送還した。
「アリッサちゃん、メリッサちゃん、ありがとう。2人のおかげで戦闘での新しい技が出来そうだ。」
「お兄ちゃんすごかった!」「こちらこそ参考になりました…」
「さっきの七色水玉は2人へのプレゼントにするからもっと練習して出来るように頑張ってね」
「わぁ!」「ありがとうございます…」
このクエストを受けて良かったな。どの出会いが何を生み出すか分かったもんじゃないな。一期一会を大切にするってこういうことなのかもな。
この後は王都のスイーツを堪能したりぶらぶらしたり、散歩を楽しんだ。2人共楽しんでる様に見えなくもないが少しだけ帰りたそうだ。
「2人共帰りたかったりする?」
「うん!あのね散歩も楽しいけど、早く練習したい!」「お兄さんに早く近づける様に…」
そういう事か。なら今日は帰るとするか。
「あら?タロウ君。アリッサにメリッサも、散歩ですか?」
「お父さん!」「お母さん!」
2人のご両親もちょうど帰る時だったらしくばったり会ったので一緒に宿まで帰る事にした。その間も…
「あのねお母さん、お兄ちゃんすごかった!」「お兄さんすごかったの…」
「あらあら、そうなの~?仲良くなれたみたいで良かったわね」
「タロウ君…娘達はやらんぞ!」
「いえ、そういうんじゃ…」
なんて会話をしながら帰り。宿に着いた所で今日はおしまいだ。
「では、また明日昼頃にお伺いしますね。」
「来てくれたのがタロウ君で良かったわ。明日もよろしくね。」
「「お兄ちゃん (さん)バイバイ」」
宿を後にした俺は明日の朝の訓練の為に色んなアイデアを浮かべながら寮へ帰っていった。
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