64話 子獲り箱
「子獲り箱・・・そのような寓話も実現しているのですか。」
「寓話?」
首をかしげるアリスに陰は説明する
「本来は教訓的、風刺的な内容の物語を指す言葉ですが、私と兄様は酒呑童子やエペタムの様な実在した出来事が本になる物語ではなく、完全に架空の物語を分ける意味として使い分けています。
最近では、妖魔のバランスが崩れた為か、寓話が実体化する現象が起きています。」
「具体的にはどんな違いがあんの?」
今度は史が問う
「そうですね・・・寓話の方がより厄介でしょうか。
元ネタが無いため、無限に強くなる可能性がありますし、何よりも助かる方法がない寓話が実現した場合は人々がその寓話を忘れるまで待つ以外に対処のしようがありません。
その上寓話が人の手によって書き換えられ、今回のように強化される事もあります、ただでさえ人の記憶は曖昧なものなのに、そこに恐怖を与えたらより寓話を増長する結果になります。」
「それにしても、子獲り箱なんて無差別攻撃みたいな寓話で一人を狙うことは出来るの?」
アリスの言葉にエレボスは頷いて口を開く
「本来なら不可能だよ、でも僕が調べたところだとある条件がそろえば可能だと書き換わっていたよ。
その条件は、箱に詰める雌の生物の心臓などが全て人間の女性の物で、百人の子供達の命を捧げた獄戒であり、尚且つ箱に詰める人間の女性の心臓などの持ち主と生贄になる全ての子供たちが『同一の人物によって殺されている事』、それに特別な呪い(まじない)を掛ける事で、その生贄達を殺した者だけを殺す子獲り箱になると書いてあったよ。」
「兄様は長い間執行者を務めていました、その間に女も子供も数多く殺しています、そしてその死体は国に回収されていました。
今回はそれを使ったのでしょう、ただ兄様を殺す為だけに・・・」
「そうだね、でも僕たちにできる事は無い僕より彼女の方が強いし、第一彼女の事だから殺した人々へのけじめは自分で付けたいだろうからね。」
「そうですね・・・兄様は基本的に自己責任を重視します。
困った人には手を差し出すのに、強いからと言って自分からは誰かの手を借りようとしない・・本当に不器用な人です。」
陰のセリフに史はにやけながら言った
「へぇ~、兄が好きなのになかなか言い出せなくて、他の子に告白されたと知って慌てて告白したような不器用な人が何を言ってるのかな?」
「そ、それとこれとは別です!」
陰は酷く赤面し、辺りには史の笑い声が響くのだった




