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実力主義への道  作者: 酒呑童児
エピローグ 勝ち取った未来
125/125

114話 例えこの心が壊れていたとしても

 ・・・・・・・・・・・・何時いつからだろうか、一寸の光も差し込まないこの薄暗い場所に居るのは。

あの日から一年が過ぎた、だけどもう時間の感覚も無い。

仕事は問題なく行っている、それがあの方の頼みだったから。

あの方の記憶を見せて頂いた時に一緒に頼まれた事、それは冤罪者の解放だった。

当然私は承諾し、あの方が休息に入られた後、全ての逮捕者の記憶を覗いて冤罪者を解放した。

・・・・・・でも、私は最初から求めてなど居なかったけれど感謝などされなかった。

私が助けた人、その人の家族、事の結末を知った人は皆私を恐れた。

望月小夜子は人の心を見てトラウマを見せつけ、人を壊す化け物だと。

当然あの方と行動を共にした皆さんはそんな事は無いと庇ってくれた・・・でも私は誰とも会わない事を選んだ。

表立って悪口を言う人は居なくなったが私には本心が解る。

心を見るまでもない。

あの人達の視線は私を恐れていた、あの人達の言葉は私を疎んでいた、まるで人ならぬ者を見るように。

人の心はとても醜い、それに晒される私は壊れてしまいそうだった・・・もう壊れているのかもしれない。

それから私はこの元地下牢に入った。

寝台、仕事道具、それと普段は電源を切ってあるけど携帯電話を一つ。

そして私は全ての照明を取り除き、その中で生活している。

見えない事への恐怖は無い、暗闇に対しても。

元々見えない事が私の普通だったし、暗闇の中はあの方に守られているような気がする。

仕事も暗闇の中で全てこなせる、何も問題は無い。

・・・・・・それなのに何故こんなにも胸が痛いのだろうか。


 私は今、寝台に横になっている。

トテトテと何かが天井の上を走る音がする。

・・・消えなさい。

その何かは慌てたようにそっと逃げて行った。

ねずみだったか、悪い事をした。

最近は妙に気が立っている、全てに対する破壊衝動を抑えるのに必死なぐらい。


 足音がする、ここには誰も来ない筈なのに。

軽めの足音、多分女性、そして恐らく裸足、心を見て正体を掴もうとするが全く分からない、でもそれこそが答え、他に居る筈がない。

重い鉄扉が音を立てて開き、身を起こした私は数か月ぶりに瞳を開けた。

「久しぶり、待たせてすまなかったね。」

「必要ならわたしは何百年でも待ち続けます。」

ありがとう、そう呟いて彼女は私の隣に座る。

「大丈夫?随分とやつれているけど。」

「・・・解りません。」

正直に私は答える、本当に自分の事が解らないのだ。

「そう、取り合えずこれを。」

そう言って彼女は盃を私の口元に持ってくる。

「これは?」

「御神酒、神に捧げられたお酒だよ。」

「そんなものをわたしが飲んでも?」

「当然、そもそもこれは私のだからね、私の好きなように使える。」

私はそれを一口だけ呑むと盃から口を放す。

「御神酒を呑むのは神と同じ物を食すという事で、神との触れ合いになる、言わば無礼講だね。」

私はただ頷くと彼女の顔を見つめる。

「さて、悩みがあるんでしょ?全て私に言ってごらん。」

残りの御神酒を一気に飲み干して彼女がそういうと私は堰が切れたように話し始めた。


 「そう、人が怖いのか、その気持ちは私にもよくわかるよ。」

彼女はそう言って話し始める。

「私も君と一緒で昔から酷い目に会ってきた、それに悪い気持ちなら私には全て筒抜け、人に絶望するのもよくわかるよ。」

だけどね、と彼女は続ける。

「アリスや鈴音、彼女たちも昔は酷い目に会って来た、それでも明るく暮らしている、それを見たら何だか恨むのが馬鹿々々しくなってきた。」

「でも・・・」

続く言葉を彼女は遮る。

「そうやって生きれる事が出来る彼女たちが妬ましいとは私も思うよ、でもそうじゃないんだ、自分の生きる道をしっかり進めばいいの、そうすればきっと悩んでいるよりずっと良い。」

「・・・・・・はい。」

「狂気に犯されそうなんでしょ?心が壊れて仕舞いそうなんでしょ?でもそれでいいの、それは嫌な事に抗おうとしているから、何も感じなくなったら意味が無い、それは人間じゃない、ただの機械人形と同じ。」

私が何も答えないのを見て彼女は言葉を続ける。

「もし君が狂気に犯されてしまったら私が助けてあげる、すべて壊してしまいたいなら私が相手になってあげる、それに本当に駄目なら神域に連れて行ってあげる、だから安心して、君は決して一人じゃない。」

「はい。」

この方は国の事抜きで本当に私の事を思ってくれている、それを肌で感じて私は思わず泣き出してしまう。

「大丈夫だよ。」

優しく言われて顔を上げると突然唇を奪われる。

「・・・好きです、この思い受け取って下さい。」

「もちろんだよ、さあ外に出よう。」

「はい。」

・・・この思いは変わらない、例え辛くてもこの方と共に生きて行こう、それが私の選んだ道だから。

嘘でも続ければ真実になると信じているから。

だから私は例え嘘であっても笑顔で居続けます。

もう二度と・・・悲しい涙を流さないために。

これでこの物語は一旦幕引きです、ですがこれはまだ全ての始まりの物語、これからも続いて行くのでしょう。


そしてこれからの投稿ですがまだプロットの段階なので春までには始めるつもりです。

次の大作はなろうテンプレのダンジョン物とこれの外伝です。

それまでも短編なども書くので小まめに確認していただけると嬉しいです。

月に一つは書いて行くのでよろしくお願いします。

大作、短編とも楽しみに待っていて下さい。

ここまで読んで頂き大変ありがとうございました。

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