友に成長
スポーツの世界ではメンタルは必要不可欠である!
様々な状況の中で指導者から選手たちへの罵声が飛び交う!
「お前はメンタルが弱いからダメなんだ!」
「メンタルが弱いから負けたんだ!」
「そんなことだからメンタルが弱いんだ!」
メンタルの弱さを罵倒してもメンタルが強くなる方法は誰も教えてくれない!
スポーツには勝敗がつきまとう!
勝てば何も言うことはなく喜べばいい!
負けたときどんな罵声を浴びせても選手がどんなに落ちて凹んでいても最後に「絶好調です!」と言わせる環境であれば選手たちの潜在意識はマイナスの意識からプラスの意識へ変換され強靭なメンタルが創られる!
スポーツは勝たなければ賞賛されないため負けたときが最大のメンタルトレーニングになることが理解できない!
負けた経験を最大限に生かし更なる強さを求める拓也!
夏が近づいて来た頃、
関東での敗戦に浸る暇もなくジムに来る選手たちの育成と8月のタイトルマッチに向かって始動していた!
拓也は指導者としても才能を発揮し始めていた!
ジュニアの地域チャンピオンを育成したりプロを目指す選手を育成したり指導力とジム経営では男を越えていた!
それでも拓也本人のトレーニングは男に頼ってくれる事に感謝さえ覚えた!
ある日、拓也のトレーニング日にジムである光景が見受けられた!
地域チャンピオンになり他団体のタイトルマッチに挑むジュニア選手が親子で練習に励んでいた!
ジムに入ると拓也の機嫌が明らかに悪かった!
ジュニア選手の親御さんの罵声がすごかった!
拓也は自分のジム内でいい加減にしてくれという雰囲気でジュニア選手をリングに呼びスパーリングが始まった!
ジュニアの選手が日本トップランカーにかなうわけもなくボコボコにやられてリングから降りて親にうるさく言われる!
拓也も親に面と向かって言えない分、選手にイライラをぶちまけている!
男は心が重苦しい雰囲気のまま笑顔で拓也に調子はどうか!と訪ねた!
拓也はちょっと和らいだ顔になり「絶好調です!」と返してきた!
格闘技の世界はほんとに殺伐としている!
笑顔で戦おう!などと言っているのが笑えるくらい怒りと闘争の世界である!
男は思った!
拓也と同じ年の頃は今の拓也が神に見えるくらい殺伐としていた!
罵声を浴びせている親の役とリングでボコボコにする役を二役やっていた!
それが今では笑顔で戦おう!
人は変われば変わるものである!
拓也に良くやってますね!と伝えジュニア選手たちのトレーニングから始まった!
ジュニアの選手たちでも拓也でも必ず初めは言霊トレーニングと笑顔トレーニングから始まる!
笑顔で「強気」って10回
「チャンピオン」って10回
「ゆるします」って10回
「絶好調」って100回
そして大きな声で「チャンピオンになりました!ありがとうございました!」と完成系で言う!
最後に「せ~の」でみんなで「絶好調!」と叫ぶ!
今さっきまでの殺伐とした雰囲気を吹き飛ばしてトレーニングは始まった!
笑顔あり半笑いあり苦痛な顔ありでトレーニングは終了!
夜はこってり拓也のパーソナルトレーニング!
吐きそうになるくらい拓也を追い込んで無事終了!
夜の食事&ミーティングで親の出しゃばりに日々ストレスが溜まっていることを言っていた!
男はそれでも良くやっているとダメ出しすることなく励まし俺はこんなにダメだったぞ!と男の失敗談で拓也の気持ちを軽くすることに努めた!
試合と指導と経営に人間関係!
少しでも拓也の気が楽になればと気を配った!
今度の試合の相手は人気実力ともにその団体ではナンバー1!
そして完全アウェー!
関東のメジャー団体の時と同様ハードな試合になることはわかっている!
まず倒さなければ勝てないだろう!
だが拓也がこの試合にかける意気込みが今までと違うのは感じていた!
口には出さないがきっと引退を考えている!
もう30歳!タイトルを奪取して花道を飾るつもりだろう!
男も気持ちを察して悔いの残らないようにトレーニングをサポートした!
こうして拓也は試合とは関係ない様々なことも乗り越え試合当日をむかえた!
拓也の試合はメインイベントで今一番見たいカードと言われチケットは完売していた!
午前中にはアマチュアの大会がありジュニアクラスであの時親に罵声を浴びせられていた選手がアマチュアのタイトルマッチに挑んでいた!
少年は試合前に自分で男に言ってきた!
「試合前に絶好調~って一緒にかけ声をやってください!」
あの時ひ弱そうに見えた少年の姿はもうなかった!
試合は見事判定で勝利しアマチュアのタイトル2冠目を奪取した!
子供の成長の凄さに感動した!
プロの試合になり空いていた席はどんどん埋まっていった!
そしてメインイベントになるころは立ち見も含め超満員になっていた!
さすが今一番見たいカード!
最高の舞台で拓也の試合が行われることに身震いをした!
完全アウェーといっても拓也の応援もかなり来ていた!
そんな超満員!熱気むんむんの中二人は入場してきた!
相手も拓也も体の張り艶!顔の表情は最高潮のように見えた!
そして5ラウンドの激闘が幕を開けた!
凄まじい戦いになる1ラウンド目に衝撃が走った!
相手が最初から怒涛のラッシュをかけてきた!
スロースターターな拓也の弱点を突いてきた!
だが拓也も最初に仕掛けてくるのを予想していた!
怒涛のラッシュをよく見てしのいでいた!その時足が引っかかり拓也が転倒した!
相手は倒れた拓也の頭部に蹴りを蹴り込んだ!
もちろん反則である!
レフリーも試合をストップして相手に減点を与えた!
立ってきた拓也の目は明らかに朦朧としていた!
反則とはいえ言え1ラウンド目からこのダメージ!
相手の怒涛のラッシュは止まらなかった!
しのいでコーナーに帰ってくるのを祈った!
何度か腰が崩れそうになる場面もあった!
だが徐々に朦朧としていた目に光が戻ってきた!
ここで関東での試合の経験が生きてきた!
あの時にこのくらいのピンチは経験して来た!
そして怒涛の1ラウンドが終了した!
コーナーに帰ってきた拓也に「よく帰ってきた」と笑顔でむかえた!
次の指示を出し2ラウンド目に突入!
相手は2ラウンド目も怒涛のラッシュは止まらなかった!がテクニック!スピードで勝る拓也は的確に攻撃を入れていき試合を立て直していった!
アグレッシブな相手に対してクレバーにポイントを取っていった!
観客席は総立ちになり白熱した試合に場内のボルテージは最高潮のままラウンドが進んでいった!
そして最終ラウンド!
ポイントは取っている!
だが!アウェー!ダウンを取りたい!
最終ラウンドになると両者一歩も引かずに打ち合った!
男はこの興奮状態の場内で冷静に試合を見ていた!
戦いの神様は拓也に何を与えるのか!
試合の流れ!アウェー!ポイントリード!フッと頭をよぎったときレフリーが二人を止めた!
ダウン~!
レフリーがダウンを宣告したのは拓也だった!
場内もざわついた!
拓也も納得が行かない!
意味不明なダウンのカウントが数えられた!
アウェーでは何が起こるかわからない!
無情なダウンを取り返そうと最後まで壮絶な打ち合いが続いた!
そしてラウンド終了のゴングがなった!
1ラウンドの反則!
ポイントリード!
最終ラウンドのダウン!
男は天を見上げた!
判定の結果!
一人目のジャッチ!49対48対戦相手!
場内大歓声が上がった!
二人目!ドロー!
後一人がドローか拓也に上がればエキストララウンド〔延長戦〕がある!
三人目!
49対47
対戦相手!
2対0
対戦相手の勝利!
男は天を見上げ笑顔になった!
いつものルーティンを行った!
心は空白の時間が続いた!
リングから降りた拓也は初めてその場で泣き崩れた!
みんなに支えられながら引きずられながら控え室に戻っていった!
男は笑顔を貫いた!が心は天に叫んだ!
なぜ反則をして疑惑のダウンのほうに勝利を運んだ!
なぜあんなに不利な状況で勇敢に戦った拓也にこんな仕打ちをするのか!
笑顔と心のアンバランスでどうにかなりそうになった!
控え室に戻ると泣きながらみんなに謝罪する拓也の姿があった!
「いつも偉そうなことを言って負けてしまってゴメン!
今日、応援に来てくれた皆さん期待に答えられなくてすみませんでした!」
「えへへへ!」
拓也は泣きじゃくりながら挨拶した締めに笑いで締めくくった!
もう拓也は男の教えは越えていた!
男は拓也に近づき自分でも抑えられない言葉を言った!
「いつも、あなたには無理難題を言ってきた!笑顔で戦おう!負けたときほど笑顔で進もう!
こんな時でも、まだやってくれる拓也に心から感謝してる!
そしてこれからもよろしく!」
男の言葉も涙と一緒にたどたどしかった!
拓也の最後のタイトルマッチは終わった!
男はとりあえず体を休めよう!とだけ言って後世語り継がれるこの熱い戦いの日は終了した!
拓也はブログをやっていた!
試合後、二週間ほど経ったときブログが更新されていた!
試合の内容、いまの心境、葛藤、が書かれていた!
男は内容に心を打たれた!
ブログの内容は試合が終わり翌日一日中寝ていた!
すると夕方サンドバックを叩く音が!
うるさいと思いジムの方へ向かうと昨日ジュニアクラスでタイトルを取った少年が練習に来ていた!
今日は休みにすると言っていたはずやけど!
少年は昨日の先生の〔拓也〕試合を見てこんな試合をしたいと思ったんだと!
先生のようにみんなに感動を与えられる試合がしたい!
そう言って黙々とサンドバックを打ち続けた!
すると休みと言っていたのに練習生が続々やってきた!
そしてみんなが感動しました!
また、あんなスゴい試合を見たいです!
と言っていつも以上に活気のあるジムになっていた!
自分はまだ負けた悔しさで立ち上がれない!
でも回りがこんなに変わったのなら俺の負けも意味があったのもしれない!
男はこのブログを見ながら涙が止まらなかった!
それから3ヶ月!
拓也から連絡があった!
「まだやれることがあるのかもしれない!
まだ終わっていない気がします!
また、よろしくお願いします!」
大きな病気から帰ってきてリハビリから始めるようなものである!
だが拓也の言葉には力があった!
男は「こちらこそよろしく!新たな最強伝説を創ろう!」
きっと拓也とは一生をかけて友に成長していくのであろうと思う男であった!
つづく!




