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おかえり!妖精の家へようこそ ~スキル図鑑で家族が増えていく物語~  作者: 月瀬 リュカ


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第51話 白雲村への出発



 翌朝。


 妖精たちが旅の荷物を玄関へ運び始めていた。


「準備できたよ!」


 ピクが元気よく飛び回る。


 ピーチは薬箱の中身を一つずつ確認している。


「回復薬、解毒薬、包帯……よし」


 ローズは地図を広げた。


「白雲村までは徒歩で二日ほどです」


「山道になるな」


 俺は地図を見ながら頷く。


 依頼の手紙には《山岳地域・白雲村》と書かれていた。


 山奥にある小さな村らしい。


 クローバーは牧場へ向かい、一匹ずつ魔物たちの様子を見て回っていた。


「留守番をお願いしますね」


「モォ」


 ミルクバッファローが鼻を鳴らす。


 角兎たちも元気よく跳ね回っていた。


「心配か?」


 俺が声を掛ける。


「少しだけです」


 クローバーは微笑んだ。


「でも、昨日の夜に分かりました」


「何が?」


「私がいなくても、この子たちは安心して眠れるんです」


 牧場では妖精たちが餌を運び、水場を掃除している。


 皆、自分の仕事を理解していた。


「だから今回は安心して出発できます」


 クローバーはもう一度ミルクバッファローの首を撫でた。


「帰ったら、また一緒に過ごしましょう」


「モォ!」


     ◇


 旅の準備を終え、俺たちは妖精の家の前へ並んだ。


「忘れ物はない?」


 ラベンダーが尋ねる。


「大丈夫です」


 ピーチが薬箱を軽く叩く。


「薬も十分あります」


「食料も問題ありません」


 ローズが収納袋を確認した。


 俺は最後に妖精の家を振り返る。


「行こう」


 皆が頷いた。


 玄関の扉を閉めると、妖精たちが一斉に手を振る。


「いってらっしゃーい!」


「気を付けてねー!」


「お土産!」


「最後のは違うだろ」


 思わず笑いがこぼれた。


     ◇


 街道を半日ほど歩く。


 やがて平原は終わり、山道へ入った。


 空気が少しひんやりとしている。


「涼しいですね」


 クローバーが周囲を見渡す。


「山は久しぶりですか?」


 ローズが尋ねる。


「はい。あの風車小屋から、ほとんど離れられませんでしたから」


 クローバーは少し照れたように笑った。


「皆さんと旅をするだけでも、新鮮です」


「これからもっと色々な場所へ行くよ!」


 ピクが前を飛ぶ。


「海も! 雪も!」


「全部ついて来てもらうぞ」


「もちろんです」


 クローバーは嬉しそうに頷いた。


     ◇


 夕方。


 峠へ差しかかった時だった。


「止まってください」


 ローズが足を止める。


「どうした?」


「風に乗って……何か聞こえます」


 全員が耳を澄ませる。


 微かに聞こえるのは、人の悲鳴だった。


「助けて!」


 山道の先から若い女性の声が響く。


 俺は剣へ手を掛けた。


「急ぐぞ!」


 全員が一斉に駆け出す。


 白雲村へ着く前から、助けを求める声が山へ響いていた。


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