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ロマンチスト・ソウル  作者: タイラ
三章 「千秋楽山・決戦編」
21/28

21話 「分断点」


「琉琉助、俺、千秋楽山を降りるよ。……もう、帰ってくる気は無い」


「えっ……」


 突然あいつはそう言った。

 風が生温い夏の夕方だった。


 蝉の鳴き声がひどく遠くに聞こえる。


「琉琉助。お前は『仙人』として、これからも山の上から人を見守っていくんだろう。俺は、『強者』として、人々を纏めて、導いていきたい」


「なんでだよ、そんな、急に……」


「『赫阿修羅かくあしゅら』に皆、殺された。仙人達全ての力を結集しても、封印がやっとだった」


「っ……」


「その未来は避けられなかったのか?」


 言葉に詰まった。

 何を言えばいいのか分からなかった。


「……ああ。避けられなかった」


「……いつか『赫阿修羅』は復活するんだろ? その時、俺達だけで勝つことなんて到底できない。人間達の力が必要なんじゃないのか?」


 人間達の力……!?

 俺たち仙人は、『能力者』は、人と関わらない事で均衡を保ってきたはずだ。

 それを、まさか。あり得ない。


「本気で言ってんのかよ……」


「未来視れば分かるだろ。俺は本気だ。『強者』だけが責任と犠牲を払うだなんてごめんなんだよ」


「…………」


「俺は人々を導く」


 駄目だ。

 そんな事はしてはいけない。

 『強者』が力を見せびらかせば、必ず世界は崩れる。

 『強者』と『弱者』の世界が出来てしまう。


「今後、復活した『赫阿修羅』に勝つ算段はある……! だから……!」


「……〈それ〉をお前に実行する勇気があるのか? 琉琉助」


「っ………!」


 またしても何も言い返せない。

 当然だ。■■■■■■するだなんて、そんな事……できるわけがない……!

 大勢の為に、一人を犠牲にするのは正しい事なのか……!?


「……だから中途半端なんだよ。俺は意思を曲げない」


「待てよ『金華きんか』……! 俺は……!」


 俺はお前とだけは、未来じゃなく、イレギュラーに変化し続ける『今』を生きたかった。


 その言葉が、口から出ることはついぞ無かった。


─────────────────────


「相手は初手で俺達をランダムな場所に飛ばしてくる。準備しておいて」


「はい」


 ついにこの時が来てしまった。

 1秒1秒に、緊張が走り、冷や汗が伝う。


「悠真」


 それを察したのか、桜が俺に声をかけた。


「あぁ」


 覚悟はもう、決めてある。


 今日の夕焼けは、不気味なくらい紅かった。


─────────────────────


「相手は未来視えてるから、ここは迷わず、堂々と行こう! 導鏡、準備は出来てる?」


「はい。術を発動します」


 『童子』が合図を送ると、浮かぶ大きな鏡のうえに座る銀髪の女が答える。

 

─────


「皆、そろそろだよ」


「!……はい。」


 琉琉助が未来を予知し、カウントダウンを始める。


「10……9……


─────


 『童子』は導鏡に合図を送りながら、カウントダウンを始める。


「8……7……


─────


「6……5………


─────


「4……3…


─────


「2……1……

「2……1……


─────


「「0」」


─────


 「能力『天功鏡てんこうきょう』」


─────────────────────


 悠真は、山の何処かに転移させられた。



「っ……!」


 ここ……何処だ?

 一瞬周りが光ったと思ったら、次の瞬間には飛ばされていた……

 琉琉助の言う通り、転移させる能力……

 いつ敵襲が来るか分からない、警戒しておかないと……


─────────────────────


「転移は完了しました。『童子様』はどうなさいますか?」


 導鏡は、鏡の上で座禅を組みながら、『童子様』に問う。


「俺は琉琉助に久しぶりに会いに行ってくるよ。あ、それと……後で菊ちゃんにも連絡しておくから……」


「随分と用意周到なんですね?」


 二人の会話を遮るように、男の声がした。


「びっくりさせんなよ……『森主キュピー』 久しぶり。元気してt」


 言い終わる前に、キュピーは地面から先端が尖った木を生やし、『童子』に向けて繰り出す。

 その木を、『光線』が焼き飛ばす。


「チッ……」


「『童子』様に無礼ですよ」


(あの女の光線……鏡から放つ感じですか。)


 キュピーはさらに木を伸ばし、『童子』を捉える。


「『童子』様、ここは我々に任せて下さい」


「あぁ。頼んだよ」


 『童子』は導鏡に軽く手を振った後、軽々と木の間を飛び越えて逃げていく。


「……どういうつもりですか? 私に一対一で勝てるとお思いで?」


「……いえ。貴方に一対一で勝てる確証は有りません。ですから……」


 導鏡の周囲に、大量の鏡が出現する。


「ここから一気に叩かせてもらいます」


 大量に浮かべられた鏡の中から一人ずつ出て来る。


 やがてそれは、先駆者の軍勢へと成る。



「なるほど。そうやって大軍を移動させるのですね」


「逆に、貴方はこの人数相手に一人で戦うつもりですか?」


 導鏡は顔色一つ変えずに、鏡の上からキュピーを見下ろす。


「皆様、あの男を倒し、山の中へと攻め込みましょう」


 導鏡の合図とともに、大軍は山の中へと足を踏み入れていく。

 キュピーは、導鏡を見てニヤッと笑った。


「貴女は大変な思い違いをしていますね」


「……なんですか」


「こんな羽虫共、いくら用意したって何の意味も無い」


「……!?」


 導鏡は何かを察知し、声を荒げる。


「皆様! 戻って! これはっ……」


「遅ぇよ」


 次の瞬間、山に踏み入った大軍を、大量の蔦が襲い、地面の中へと引きずり込んでいく。


 先駆者達の必死の抵抗すら、もはや何の意味も成さなかった。


「な……え……」


 導鏡が目を開け唖然としているうちに、大軍の悲鳴はやがて聞こえなくなった。


「何が……起きて……」


「土に還ってもらいました。山の養分として有効に再利用させてもらいます」


「ふ、ふざけないで下さいっ!!」


 導鏡は大量に浮かべた鏡から、無数の光線を打ち出す。

 それをキュピーは木を生やして簡単に防ぐ。


「貴女も養分になって下さい」


「……舐めないで下さい……貴方程度、私一人で十分ですっ……!」


─────────────────────


 時は全員がランダムな場所に飛ばされたときまで戻る。


(……ここは……山のふもと? 随分な距離飛ばされたな……)


 桜は刀を抜き、自身に向けて飛ばされる『燃える羽』を叩き落とす。

 そして、その『羽』を飛ばしてきたであろう張本人のいる方へと目を向ける。


「随分と手荒じゃない?」


「あぁ、ごめんごめん。女の子だったか! 俺、迦楼羅。よろしく〜」


 赤い髪に、燃える大きな翼を生やした男は、自身の羽を指先で弄りながら、こちらへと歩いてくる。


「てか君めちゃくちゃ可愛いね。どう? 全部忘れさせてあげるくらい良い思いさせてあげるからさ、俺と遊ばない?」


 桜は迦楼羅に刀を向け、額に青筋を浮かべながらニヤリと嗤った。


「そのナンパ、成功したことないでしょ。村のジジィ共のほうがまだ、誘い文句はマシだったけど?」


「……ぁ゙?」


 

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