第47話 故郷での決意
今回、新キャラクターの登場です。また嫁候補が増えます。性格は何となく色分けが出来ている気がしますが、外見的表現が足らない気がします。どっかでちゃんと書かないと思うこの頃です。
ダンと話をした翌日、シンはフィアナを伴ってガリアを発つ。今回は長くても1ヶ月はかからないだろう事もあり、シンはフィアナの体調も考慮しつつ、のんびりとした行程を組んでいる。フィアナは変わらず楽しそうにしており、旅の疲れは感じさせないが、それでも負の感情を感じると眉を潜める事もある。
「シン、この道をまっすぐ行くのはやめたほうがいいかも。恐らくこの先で、あまり良くない事が起こっている」
「それは複数の人が何かをしているということかい?」
「恐らくは野党か軍が暴れている。野党なら懲らしめればいいけど、軍なら、手を出すと大変。でもシンなら手を出してしまう」
シンは少しだけ考えた後、フィアナに向かって自分の思いを伝える。
「フィー、申し訳ないけど、そう言う話なら尚更、行かない訳にはいかないよ。ちょっと危険な目に合わせてしまうけどね」
「シンならそう言うと思った。でも、無理をしないでね」
「ありがとう。フィアナを守るのは、約束するよ。問題はその後だけどね」
シンはそう言って、馬の脇を蹴って、歩を進める。程なくして、軍が民衆の対して何やら怒鳴りつけているのが見える。悪い方の予感が当たってしまう。シンは慎重に馬を御しながら、その一団に話しかける。
「すいません、旅の商人でヤマトと申します。こちらで何かあったのでしょうか?」
「ああっ?なんだお前は?何者だ?」
「旅の商人でございます。お役人様。実は妻と二人で旅をしているのですが、妻が少し気分が優れないとの事で、休めるところを探しておりまして。それでここに寄らせていただいたのですが、何やら怒鳴り声がしたものですから、何事かと思いまして」
シンは極力へりくだった態度に終始する。フィアナはいつものニコニコ顔ではなく、目を閉じて、シンの胸に顔を預けている。その様子に兵士は興味が失せたのか、横柄な態度でシン達をあしらう。
「ここは今取り込み中だ。他へ行けっ」
「ここで休ませてもらう事は難しいでしょうか?」
「こいつらは今、罪状を確認中だ。ここに立ち入る事は許さん。あまりごちゃごちゃういうようなら、お前らも引っ立ててやろうか?」
兵士は食い下がるシンに苛立ちを募らせて、脅しをかけてくる。シンはそれを涼しい顔で受け流し、更に食い下がる。
「それは流石にご無体な。私どもはただ少し休ませていただければと思っただけですので。兵士の方々もあまり根を詰めると良くないでしょう。些少ではございますが、こちらで兵士の方にも何か振る舞っていただければ」
シンはそう言うと。懐から金貨を数枚取り出して、そっと怒鳴り散らしていた兵士に渡す。兵士は少しだけ驚いた顔をしたが、すぐにニヤけた顔となり、部下の兵士たちに一時休憩を与えると、シン達にも立ち入りの許可を出す。
「確かに、あまり根を詰めてもあれだしな。うん、そなたの妻も辛そうだ。一時であれば休む事を許可をしよう。ただし、変な事はするなよ」
「お役人様、許可をいただきまして、ありがとうございます。できれば建物をお借りしたいと思いますが、村人に声をかけさせていただいてもよろしいでしょうか」
「構わん、好きにしろ」
シンは再び御礼をした後、村人の中で年長の老人に話かける。
「すいません、先ほどお役人にお話しした通りです。どこか休めるところをご提供いただけますでしょうか?勿論、謝礼は致しますので」
「ならば、儂のうちに来なさるがいい。酷い責め苦を味わっておったでの、一時でもお救いいただいた事に感謝したい」
「いえいえ、私共は偶々通りかかったに過ぎませんので。それにしても災難でしたね」
シンは後半の言葉はあえて小声にして、兵士達には聞こえないように話をする。老人は少し驚いた顔をするが、言葉は返さず、建物の中にシン達を通すと、そこで先ほどの答えを返す。
「あまりああ言う事はこの場ではおっしゃらない方がいいでしょう。確かに私共には災難ではありますが」
「今回はどのような言いがかりなんですか?」
「奴らの言い分では租税が足らないとか。当初言われた通りの量は納めておったのにの。帝国の治世になって、こんな事はしょっちゅうで、方々の村々では逃げ出すものが多発しておりますじゃ」
「それはひどいですね。私にできる事があれば、お手伝いもさせていただきますが」
「いやいや、偶々来られた旅の御仁にそこまで何かさせるのは申し訳ない。恐らく今日は旅の御仁のお蔭で引き下がるだろう。奴らは遊ぶ金欲しさに、取り立てに来ているだけ。その原資はもう手元にあるようじゃからの」
シンが部屋の窓から外を眺めると、確かに兵士達は帰り支度をはじめている。シンは知らない内に厳しい表情で剣の柄を握りしめていたのを、フィアナがそっと手を重ね、その怒気をそぐ。シンは一呼吸を置いて再び老人に向き直り、話かける。
「今日はどうやらやり過ごせたようですが、皆さんは今後どうされるのですか?」
「わしらはこの土地で育って、この土地と共に過ごしてきました。若いもんは別だが、今更余所に行く気力もない。生きながらえるまで、この土地にしがみつくしかないの」
「そうですか、ではこちらを受け取ってはいただけませんか?これがあれば、暫くは奴らの目をごまかせるでしょう」
シンはそう言って、金貨を十数枚分を入れた袋をそのまま老人へ渡す。
「なっ、流石にここまでしてもらっては」
「いえ、妻を休ませていただいた謝礼です。それに俺もこの土地に縁のあるものですから」
シンはそう言って笑顔で自分の黒髪を指さしす。フィアナもいつものニコニコ顔に戻って、隣で微笑んでいる。老人はその場で深く腰をおって、いつまでも御礼を続けていた。
その村を発った後、ほとんどの村が同じような状況のようだった。直接助けた村以外は、シン達はあえて助けようとはせずに、基本すぐに立ち去った。シンもフィアナもそれが根本的な解決にならない事がわかっているからだ。そうしていくつかの村と町を超えて、シン達はついにシンの故郷、アルナス領へと到着する。
アルナス領は想像以上の惨状だった。建物は焼き落ち、田畑は放置され、草木は枯れ果てていた。領都の惨状は特にひどく、あれだけ賑わっていた商店街も店を構えるものはなく、人の気配すら存在しない。まさに廃墟だった。シンとフィアナはそのまま馬に乗り、元々領館があったところまで、馬を進める。そこにはもう建物もなく、焼き落ちた瓦礫が山となっているだけだった。シンとフィアナはそこで馬を下りて、手を合わせると、暫く黙祷をささげる。シンの目を閉じて思い浮かべた光景は、明るく暖かい、楽しい幸せだった場所の姿で、その事を思うと自然と目頭が熱くなるのを感じる。ただ涙を流すことはせず、再び顔を上げて今のその光景を脳裏に焼き付けると、決然と言う。
「やっぱりここが俺のスタートだ。今俺の心にあるこの気持ちが、すべてを決める指針になる。フィアナ、俺は守りたいんだ。俺の手に届く範囲のものはすべて守りたい。あの時俺の広げられる手は狭かった。今もまだ救える人は少ないのかもしれない。でも、それでも俺は、自分が大切なものを守れるようにする。それが俺の誓いだ」
フィアナはそれを黙って聞いていた。否定も肯定もしない。フィアナの姿勢は終始一貫してシンのすべてを受け入れる事だった。だからあえて言葉にはせずに、シンの正面に立ってシンの胸に抱きつく。シンもそんなフィアナの気持ちがわかるからこそ、フィアナを抱き返して、口づけを交わす。二人の影はそうして暫くの間、一つとなって廃墟となった故郷に溶け込んでいた。
シン達は領都を後にした後、そこから山間部に抜ける細い獣道を歩いている。シンは馬を下りてその手綱を引き、フィオナはそのまま馬に乗った状態で進んで行く。正直馬で行くのは厳しい道だったが、その馬を置いておける場所もなく、苦肉の策である。
「フィアナ、結構揺れるだろうけど、大丈夫かい?」
「はい、体調は大丈夫なのですが、少しだけおしりが痛いです」
「済まないけど、もう少しだけ我慢してくれ。もうそろそろのはずなんだ」
「そうですね、少しだけ人の気配を感じます。あっ」
そうフィアナがこぼした瞬間、シンに目掛けて矢が飛んでくる。シンはそれに気付いたが、あえてよけず、シンの右肩部分にあたったはずだったが、矢は刺さる事もなく、シンの前に落ちる。シンがその矢を拾ってフィアナに渡すと、フィアナもシンが避けなかった理由に気が付く。
「矢じりが丸い?」
「厳密には矢じりが重りになっているが正解。多分、見張りが驚いているかを確認して、驚かない人間が身内と判断しているのさ」
確かにフィオナが周囲を探ると、先ほどまであった警戒の気配が弱まり、こちらに人が近づいてくる。するとその近づいてきた人間を追い越して、すごい勢いで更に近寄ってくる気配がすると、その気配はシンの飛びついた。
「シン、シンッ。生きてた。やっぱ生きてたよ。良かった。良かった―」
シンは、突然抱きつかれて仰天するものの、その抱きついてきた人物を見て、合点する。
「アカネか?お前も無事だったのか、良かった。よくぞ無事で」
そう言って、シンの胸で泣きじゃくるアカネの髪を撫でてやり、落ち着くのを待っているとその後ろからも声がかかる。
「シン様?シン様ですかい。いやたまげた。おい、みんなに知らせろ。シン様だ。シン様がお帰りになったぞー」
シンは何やら大騒ぎになりそうな雰囲気を察して、苦笑いをすると、そろそろ落ち着いただろうアカネに声をかける。
「アカネ、悪いけど連れもいるから、先に集落へ連れて行ってくれないか?」
「連れ?」
アカネはシンしか見えていなかったのか、泣き腫らした真っ赤な目を見上げてキョトンとする。そして、シンの横にいる馬上のフィアナを見上げて、そのフィアナを威嚇するように、キツイ口調で聞いてくる。
「シン、この娘誰?私、聞いてないけど?」
シンはその物言いに呆れた顔で返す。
「聞いてないって、当たり前だろう。3年振りに会ったんだ。彼女は俺の連れで大切な人だ」
アカネはそんなシンの物言いを聞き流し、フィアナを睨みつけて、問いただす。
「あなた、シンのなんなのかしら?」
「私はシンの大切な人、シンも私の大切な人、そういう間柄です」
フィアナは感情高ぶるアカネを気にもかけずに、自分の思っている事をそのまま言葉にして返す。アカネは、ますます感情を高ぶらせ、フィアナに啖呵を切る。
「ふざけないで、シンは私のものよ。後からのこのこ籠絡しようとしたって、渡さないんだからっ」
シンは堪らず、アカネを引き離すと、諭すようにアカネに言う。
「おい、アカネ。初めて会う俺の連れにその物言いは、流石に失礼じゃないか?それに俺はお前のものになった覚えはないぞ」
するとアカネは今度はシンを睨みつけ、
「シンのバカ、アホ、ニブチン」
そう罵声を浴びせて、すごい勢いで森の奥へ逃げ去っていく。罵声を浴びせられたシンは、大きく溜息をつくと、フィアナに詫びようとするが、その前に、フィアナから声がかかる。
「シン、アカネさんのお気持ちに気付いていらっしゃらなかったんですか?ミリアさんの事と言い、本当にニブチンです」
シンは、その後村人が呼びに来るまで、只々、絶句した。
本日、2度目のPV1000越えでした。まだまだショボい実績ですが、見ていただきありがとうございます。その勢いでブクマと評価もお願いします!




