本とコーヒーとダラダラする感じ
プレナをほったらかし、ユークは本屋を探していた。
魔王城にいた頃は、誰かが買ってきたものや出掛ける父に頼んでもらったものを読んでいたユークだが、こうして自分の足で買いにくれば、選りすぐりの本を見つけられる。
ここか。
見つけたのは古風でこじんまりとした本屋。数は多少物足りないかもしれないが、気に入った本を見つけるには充分だろう。
店内を覗いてみると、客はほとんどいなかった。
人が少ないが・・・かえって好都合だ。人目が多いと選びにくいからな。
この感覚、分かってほしい。
店に入ったユークはライトノベルコーナーに直行する。
ユークはファンタジー・・・魔法や現代の技術をもっても実現できない話が好きだった。
決して登場する女の子が可愛いからではない。本当だぞ?
「知らないのばっかだな・・・というか、俺が持っているのが一つも置いてない。」
もしかして、俺が持っているのって、ひと昔前のなのか?
「とりあえずこれと・・・これ。」
表紙のイラストが可愛いものを二冊選ぶ。即決だ。
そしてカウンターに直行。他の本に興味はない。
「まいど。」
「そんなに高くなかったな。さて、昼飯にするか。」
次に向かったのは、町に入った時に目に付いた喫茶店。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「あ、はい。」
「こちらのお席にどうぞ。」
黒髪の可愛いウェイトレスだ。この店の看板娘だな。
今の娘がきっとオーダーを取りにくるだろう。
ここはカッコよくブラックコーヒーと・・・カッコイイ食べ物はよく分からないから・・・サンドイッチにしよっと。
「すみませんお嬢さん。」
俺の出せる最大限のイケボで呼びかける。
「はーい。」
「ブラックコーヒーとサンドイッチを。」
「かしこまりました。」
ふっ。あまりのイケボに惚れてしまったかもしれないな。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
思ったより早くきたな。
あ、名札見ればよかった。あの娘の名前が分からないじゃないか。
確認したいところだが、じろじろ見ると変態の烙印を押されてしまうからな。
次来た時に名前を見よう。あ、コーヒーにがっ。ジュースにすればよかった。
「まぁ・・・でも・・・。」
たまにはこういう・・・町に出てダラダラするのもいいかもしれない。
元ニートだから、ダラダラすること自体は毎日やってたけどな。
ははは。
むなしくなるからやめよう。