魔王、始めました
玉座の間まで移動してみると、そこには大量の冒険者どもがいた。
「ウェーイ。」
「ウェイウェーイ。」
若者が好き勝手に暴れている。
「ぐおお!俺の城がぁ!」
「いや俺の城だからな!?そしてなんじゃこりゃあ!?俺のラノベがぁ!」
「そこですか・・・?」
一体全体、どうしてこうなった。
「くそぉ・・・父さんが留守にしている間に攻め落とされるとは・・・ユーク、何でもっと強い警備にしなかったんだ!?」
「親父が低いランクしか使えなくしたからだろ!?つーか魔王がいないんだから帰れよ!?」
そう言ってユークはずっと前、プレナが言っていたことを思い出す。
もし魔王が待ち構えていなかったら・・・帰る者もいれば荒らす者もいる・・・みたいな。
「ってそんな前の伏線、分かるかぁ!」
腹いせに近くにいたウェーイをぶん殴る。
「とりあえず、全員ぶっ潰す!お前ら手伝え!」
「了解。」
「ふえぇ。」
「はい。」
「父さんは地下に行ってるから、終わったら教えてくれ。」
親父はダメだったが、他の皆はOKしてくれた。さすが俺。人望がある。
魔王とは魔族の王族。決しておとぎ話に出てくるような、凶悪な力を持った存在ではない。
けれど、それでも魔族には人間よりも強く、その中でも特に強い存在が王族となって土地を支配した。
そこにはれっきとした強者の血筋があり、現代、それを受け継いだ者は強い。たとえ、訓練をしていなかったとしてもだ。
腐っても魔王。その力は圧倒的である。
「ウヴォア!」
ユークの鉄拳がウェーイを吹っ飛ばす。
「やっぱ弱いな。こういう奴って。」
「一撃で倒せますよ。ユーク様は魔王なのですから。」
あっという間に全滅させ、荒れた部屋の中、汚れた玉座に座る。
「しょうがないから、警備体制をしっかりさせないとな。」
「ふえぇ。疲れたからお風呂入りたいよぉ。」
モルガナが唐突にそう言った。通訳がまた必要になったから、プレナもふえぇの翻訳で大変になるな。
「私が、付き添う。行こ、モルガナ。」
クオンがモルガナの手を握り、地下へと下りようとする。
立ち止まり、思い出したように振り向いた。
「ユーク。」
「ん?何だ?」
「ありがとう。これからもよろしくね。」
そう言ってクオンはモルガナとともに地下へ行った。
「さてと、警備よりも修理が先・・・だよな。プレナ、ちゃちゃっと聞いてきてくれ。」
「はい。ユーク様。」
移動魔法によってプレナの姿が消え、ちょっとしたら戻ってきた。
「大丈夫だそうです。明日から工事に来てくださるそうですよ。」
「おう。・・・相変わらず早いな。」
「ふふっ。懐かしいですね。このやり取りも。」
「だな。」
親父よって無理やり後釜になった時も、こんな感じで話し合ってた気がする。
いや、いつもの日常になったんだから、こういうのが普通になっていくのか。
むしろ、今までが異常だったんだ。
何考えているかよく分からないクオンと、いつもうるさくて口が悪いモルガナ。
2人から始まった魔王の仕事も、ちょっと、いや、大分騒がしくなったな。
「ユーク様、久しぶりの2人きりですし、町にでも出ませんか。現地調査ということで。」
「そいつは魅力的な提案だけど、今は遠慮しておくぜ。」
4人でいるのが当たり前になったし、まだあの町に4人で行ったことはない。2人きりで行くのは、その後かな。
「さぁて、俺も風呂に入ってくるか。」
「いえ、まだ冒険者が来る可能性があるので、この広間にいてください。」
「マジか?」
「マジです。」
2人で笑いあった。
辛いけど、面倒だけど、ここにいてやるか。
始めさせられた、あの時とは違うからな。
心機一転!叫んで気合を入れるか!
「我が名はユーク!今ここに、改めて宣言する!俺が魔王だ!」
こうして、俺は『新魔王』から『魔王』へとジョブチェンジした。
そして今こそ、この言葉を。
魔王、始めました。
ひとまず、この物語はこれでおしまいです。
読んでくださった方々、ありがとうございました。少しでも、ユークたちの生活を楽しんでくださったなら幸いです。
気が向いたら、外伝としてまた、彼らのお話を書くかもしれません。それでは改めて、読んでくださりありがとうございました。




