着きました
整備されていない道を、ひたすら馬車は進む。
「・・・ッホイ!」
ユークは右手を正面に突き出し、力を込めるが何も起こらない。
「ふえぇ。下手くそだよこいつ。こうやるんだよぉ。」
モルガナが同じく右手を突き出し、掌から炎を放った。
「いや、どうやるんだよ?口で説明してくれよ。」
魔法の訓練。魔法の使えないユークは、いやいやモルガナに頭を下げて教えを乞ったのだが、どうにも上手くいかない。
「ふえぇ。ユークに才能はないよぉ。」
「諦めたら?」
「いーや、俺にもできるはずだ。教えが悪いに違いない。なぁプレナ、魔法のコツとかって何かないのか?」
手綱をとっているプレナへの質問。
「魔法は身体の一部みたいなものですよ。」
前を向いたまま、そのような回答をした。
「どういう意味だ?」
「ユーク様、例えば何か物を掴む時に、右腕を動かそう、右手で掴もう、とは考えないでしょう?魔法もそれと同じで、深く考える必要はありませんよ。」
うーん、分かったような分からないような・・・。
「ねぇ、いつ着くの?」
次いでクオンの質問。
「夜前には着くと思いますよ。」
もうしばらくかかるようだ。
「じゃあ、またトランプをやるか。」
「えー、ユーク弱いからいい。」
「クオンちゃんの言う通りだよぉ。」
「・・・・・・。」
無言になった車内の空気に構うことなく、馬車は淡々と進む。
その雰囲気をプレナは背中で感じ、馬車を少し急がせることにした。
やがて太陽は傾きだし、もうすぐ夜が顔を覗かせようとする頃、馬車はゆっくりと停まった。
「着きましたよ。」
潮風が少し強く、プレナは髪を押さえた。
「さぁ行きましょう。」
港になっており、中型船がそこに停まっている。
「あれに乗るのか?」
「はい。お金は私が払いますので、大丈夫ですよ。」
「・・・ん?」
船に乗ろうとした時、奇妙な後ろ姿を船上に捉えた。
薄暗く分かりづらいが、上下で大きく色の異なる防具を着けた者だ。
「・・・変なやつ。」
「なに?ユークの話?」
「なんで自分で自分を変なやつ扱いすんだよ。俺じゃなくてあっち。」
前を指さしたが、既にその姿はなかった。
「ふえぇ。誰もいないよぉ。大丈夫?」
「うるせぇ。さっきまでいたんだよ。」
出航。
「で、どれくらいかかるんだ?」
「一時間もかかりませんよ。ここで夕食にしましょう。」
夕食はハンバーガー。赤い髪したピエロがトレードマークの一品だ。
そして到着。
「おお・・・涼しい?」
以前訪れたヤポニャより大分涼しい。
南の方は暑いもんだとばかり思っていた。
「夜なので幾分か涼しいですが、日中はヤポニャとそんなに変わりません。この時期はそれでも涼しい方ですが。」
プレナを先頭に歩きだす。
「今は魔族にとって治安がよくありません。早くホテルを探しましょう。」




