これが新魔王です
ユークは部屋でゴロゴロしていた。
ベッドの上に寝そべり、本を読んでいた。
「こういう、可愛い感じの子・・・俺にゾッコンな子がいればなぁ・・・。」
男の願望、いや欲望を口にする。
ふと時計を見ると、侵入者の報告を聞いてから三時間ほど経とうとしていた。
「帰ったのかな・・・なら楽だな。やっぱダラダラして可愛い女の子の絵と話を読むに限る!あー!働きたくねぇなぁ!!」
そう叫んだ直後、部屋をノックする音がした。
ユークは本を急いで閉じ、本棚に投げつけるようにして本を片づけた。
そして、ベッドから降りカーペットの上にあぐらをかいて集中してますよポーズをとる。
完璧だ。誰もダラダラしていたとは思うまい。
「入れ。」
「失礼します。」
予想通り、部屋に来たのはプレナだった。
「ユーク様、冒険者がもうすぐ玉座の間に到着します。」
「分かった。俺の集中も高まってきたところだ。行こうか。」
完璧な演技だ。あたかも集中していたかのようである。プレナが疑うような視線を向けてきた気がするが、気のせいに違いない。
地下から出て、玉座をもとの位置に戻して座っていると、階段を下りてくる者が現れた。
「来たか。冒険者・・・一人?」
ボロボロの若い男が一人。
「ウェーイ。見つけたぜ魔王。」
なんだこいつ?軽いな。
「覚悟しろよ魔王!俺に勝てると思ってんのか!」
ほんと何こいつ?もしかしてなめられてる?
ユークは自分の恰好を見る。
普通の洋服じゃなくて、もっと魔王っぽい恰好すればよかった。ローブとかマントとか。
てか、何で一人なんだ?
「魔王様、この冒険者の仲間は途中でやられました。この者の命も限界が近いです。」
玉座の後ろに隠れるように立っていたプレナが、そうささやいた。
なんだ。弱いのか。なら俺でも勝てるな。
「俺・・・じゃない。我の前まで来たものはお前・・・いや、貴殿、違うな・・・貴様が初めてだ。褒めてやろう。」
たどたどしくそれっぽい台詞を言うユーク。練習しとけばよかった。
「まじか!やっぱ俺、強えんだわ。」
うざい。
早くやっつけよう。
「じゃあかかってこい。魔王の俺が相手してやる。」
魔王っぽい態度をとるのが面倒になったので、素の状態に戻した。やっぱ元ニートに威厳のある態度はそうそうできないな。
「んじゃ、遠慮なく。まっ俺が勝つに決まってるけどウボァ!」
試しに殴ってみたらすごい勢いで吹っ飛んでいった。
「あれ?」
「魔王様、ほぼ一般人と同等の冒険者を殴っては・・・。」
吹っ飛ばされた男は床に転がると、光に包まれて消えてしまった。
「一撃で終わってしまいます。仮にも魔王なのですから。」
そうだったのか。何も特訓とかしてないけど、俺って強かったのか。
さすが俺。