魔王女の帰城
「ふえぇ。ここが魔王城だよぉ。」
食後、モルガナに案内された先は町の端の方――海辺だった。
「ここが魔王城・・・つーか、案外普通にあるんだな。」
人に見つかりにくい場所にあるもんだと何となく思っていたため、こうして町中に普通にあるのを見ると何だか拍子抜けだ。
「ふえぇ!」
モルガナがひときわ大きな声で叫ぶと、城門がゆっくりと開き出した。
どんなシステムだ。鳴き声に反応するのか?
中に誰か立っている。
背が高い。男性のようだ。
「おお!モルガナ!帰ってきたのか!」
駆けよってきてモルガナを抱きしめた。
何だこのおっさん?
「私のお父様だよぉ。ただいま。」
モルガナは、はにかみながらそう言った。
・・・・・・・・・
「失礼。少し恥ずかしい姿を見せてしまったね。」
「少し・・・?」
ボソッとクオンが呟いた。
失礼だろ。でもまぁ、娘に全力でハグする親父というのは少しアレだが。
「はじめましてだね。私はフリット。このヴェリニヤの元魔王だ。」
「ども。ラスィカヤの魔王・ユークです。こっちは護衛のクオン。それと・・・。」
「秘書のプレナです。モルガナ様にはいつもお世話になっております。」
「そうか。愛娘と仲良くしてくれて嬉しい限りだよ。」
フリットは紳士的だ。愛娘とは大違いだな。
「いてっ。」
蹴られた。
「それで、本日はどうしたんだい?」
「ふえぇ。しばらくクオンちゃんのところで暮らすことにしたから、そのことを言いに来たんだ。」
「なんと!?それは本当かモルガナ!?」
「うん。本当だよぉ。」
「そうか・・・とうとうそういう日が来てしまったか・・・。」
ハンカチで目頭を押さえるフリット。
娘を本当に愛していることが伝わってくる。
「・・・言葉は通じていますね。やはり、何か起きたのかもしれません。」
ああ、そうだった。すっかり忘れていたが、魔族間でなぜか言葉が通じるようになっていたんだった。
「ふむ。確かにそうだね。この国と君たちの国では使用する言葉は違うはず。けれど、今はこうして会話ができるというわけか。」
フリットは考え込む。
待つこと数分。
やがて、考えがまとまったのか、ゆっくりと口を開いた。
「全然分からん。」
ダメだった。
「まぁ何かしら起きているということだろう。不思議だが、何か害があるわけじゃないし、別にいいんじゃないかな?」
そうかもな。
「ああそうだ。害で思いだした。今ヴェリニヤにはフシンシャが来ているんだ。外出する時には気を付けてくれ。」
不審者か。こんなオシャレな国にもいるもんだな。そういうの。
「さて、今日は泊まっていくんだろう?部屋はあるから、自由に使ってくれ。」
「やることがあるので失礼するよ。」とフリットは言い、その場を後にした。




