夜明けの空気
一定のリズムで響いていた音と揺れがなくなり、その違和感にユークは目を覚ました。
ベッドから身体を起こすと、いつもよりもずっと天井が近い。
ああ・・・機関車だった。
寝ぼけた頭でそのことを思い出し、窓の外を見ると空は薄暗く、景色は止まっていた。
「あれ・・・?何で・・・?」
そう呟いてから、昨日プレナが言っていたことを思い出した。
そうだ。どこかの駅に停まるって言ってたな。
丁度そのタイミングで目が覚めてしまったようだ。
起きるには早い時間だが、二度寝するかどうかと訊かれたら微妙なところだ。
「ッ・・・!」
ユークは目を細めた。
遠くに見える山脈から太陽が顔を出した。
夜明けだ。
せっかくの機会だし、早起きしてみるか。
ベッドから下りようと左を向いた時、向かいのベッドに寝そべったまま目を開いたクオンが視界に入った。
「こわっ!」
「おはよう。」
「・・・おはよう。」
返事をし、梯子を使って床に下りる。
「・・・何やってたんだよ?」
「誰かが動く気配がしたから、目が覚めた。」
クオンも下りてきた。
「そうかよ。・・・散歩でも行くか。」
朝食の時間まで、まだ大分ある。
「うん。行く。」
自分の荷物を漁り、着替えを取り出すクオン。そして、そのまま着ている服に手をかけた。
「・・・少しは恥じらえよ。」
頓着しないクオンに代わって、ユークが背を向ける。
見るな、とギーギー言われるのは嫌だが、何も言われないのもそれはそれで不安になるな。
「じゃあ、行こう。」
「おう。」
着替えが完了した2人は、まだ寝ているプレナとモルガナを起こさないようそっと部屋を出た。
「で、どっか行きたいとこ、あるか?」
「テラス、行ってみたい。」
了解。俺もまだ行ってなかったし、いい機会だ。
早朝ということもあってか、テラスにはまだ誰もいなかった。
真ん中にあった席に座り、お互い黙って景色を眺めていると、やがて機関車は動きだした。
過ぎ去り、遠ざかっていく景色を見るというのは、中々爽快だ。
「ユークは・・・。」
「ん?」
何か言いかけて口を噤んだクオンに対し、ユークは珍しいと思った。普段はズバズバと何でも言うのに。
「・・・やっぱ、何でもない。」
歯切れが悪い。いったい何が言いたかったのか。
気になったが、何も訊かないことにした。
無理に問いただす必要はないのだ。
「でも、言いたくなったら言えよ。」
「うん。いつか言う。」
「そうか。」
ユークは立ち上がった。
徐々に高く上がっていく太陽を手をかざして見やる。
「そろそろ朝食だな。飯、行くか。」
「うん。」




