船移動しました
入り口でチケットのようなものを係員に渡し、豪華な遊覧船に乗った一行。
乗って少しすると、『間もなく出航いたします。』というアナウンスが流れ、ゆっくりと動き出すのを揺れで感じた。
「今の声ってどうなってんだ?」
「ヤポニャの技術だそうですよ。仕組みは分かりませんが、発した音を一定の空間に届けることができるそうです。」
「へぇ~すげぇな。」
デッキに出てみると、気持ちのいい風が吹いていた。ちょっと勢いが強いが。
「3時過ぎに到着する予定です。ゆったりとしましょうか。」
「だな。」
魔王城でダラダラしていた時期には、こうして働いたり外に出ることなんて想像だにしなかった。短い期間に色々あったなぁ。
ユークが感傷に浸っていると、段々甲板に出てくる人が増えてきた。
「冒険者、多い。」
「そだな。何かあるのか?」
クオンの呟きにユークは頷いた。
観光客よりも明らかに多い。よく目立っている。
せっかくだし聞いてみるか。どうせ魔王だとバレないだろうし。
「おーい。何かあるのか?冒険者がやたらいるみたいだけどよ。」
とりあえず、一番近くにいた男に話しかけた。
「お、その格好はパーティーか?兄ちゃん、実はな、ヤポニャで魔族が集まるって噂が流れてんだよ。それを聞きつけて腕に自信がある奴らが乗っているってわけよ。」
それって俺たちの交流会のことだよな?どこから漏れたんだ?
どう返事したらいいか困っていると、プレナが近づいてきた。
「それは凄い情報ですね。ガセネタの可能性も高そうですが。」
「嬢ちゃん、確かにそうだな。けどな、あの伝説の冒険者『あ』も向かってるって話だぜ。どうだ、これを聞くと一気に真実味を帯びてきただろう?」
「そうですね。私たちは巻き込まれないよう注意しましょう、若様。」
若様って・・・ここで俺の名前を呼ぶわけにはいかないからか。あと『あ』って凄い名前だな。
「兄ちゃん金持ちなのかい?まぁその格好だしそうか。にしても、嬢ちゃん可愛いな。少し俺と話さないかい?」
ナンパを始めた男から離れ、船の中に戻りのんびりくつろいでいるうちに到着した。
「あっつ・・・。」
船を降りると、照りつける暑い日光が3人を襲った。
「そしてうるさっ。何だこの音?」
「この音は蝉。」
慣れない暑さと騒音を体感しながら、町に向かって歩きだした人々とは逆方向、森の方に向かって歩く。
「お待ちしておりました。」
褐色ムキムキのおっさんが話しかけてきた。
「タワシでございます。この国の魔王をやっていた者です。ささ、早く会場に移動しましょう。交流会には少し早いですが、この暑い中では大変でしょう。こちらです。ついて来てください。」




