緊張
梅雨が明けそうです。
夏がきますねー。
一瞬、レイナの顔色が変わったのを感じた。
が、すぐに表情を戻して口を開く。
「……見てたから」
「あの時に?」
「うん」
見てた……?
あの光景をか?
なら、尚更おかしい。
「レイナ……」
「何?」
二人の周りの空気に緊張が走る。
その変化を察したパイクがカウンターから離れた。
「あの時もし俺が逆の立場だったら、お前を助けに入るし、仮に助けに入れなかったとしても、さっき出会した時にその話をするぞ」
「……」
レイナは口を閉ざしたまま動かない。
その様子を見て一つの可能性が頭に浮かぶ。
「なぁ」
「……」
「お前……まさか、ワン」
「言わないで」
レイナの声色が変わる。
その目は焦りを隠せていない。
「……そうなのか?」
「……」
「おい」
「……失敗したわ」
両肘をカウンターにつき頭を抱えたまま、ハァと息を吐くレイナ。
一呼吸置いてスッと立ち上がり、目配せをしてきた。
ジャベリンを出ようということだろう。
「待て。……この状況でホイホイついていくと思うか?」
「思わないけど、ずっとここにいるわけじゃないでしょ」
「……そうだな」
「今だけは私を信じてくれない?」
そう言ってレイナは数枚のアンブレラカードといくつかのトンクをカウンターに置いた。
丸腰になることで敵意のないことをアピールしたいんだろうが……。
「一つだけ聞くぞ。お前は俺の敵味方どっちだ?」
「それはこの後の話次第」
「……分かったよ、これは預かっておくぞ」
「ありがとう」
さすがに外に出て一触即発はないだろうが、警戒はしておくべきだろう。
てか、外にあのハゲどもが待ち構えてるんじゃねーだろうな。
……うだうだ考えていても仕方がないか。
「パイク、ご馳走さま。お代ここに置いとくから」
「仲良くしろよ、お二人さん」
「また来るよ」
ジャベリンを出る。
パイクにいらん気を遣わせてしまったな……。
「カイトくんの部屋と私の部屋とどっちが良い?」
「……外はダメなのか?」
「お願い」
「……じゃあ、俺の部屋で良いよ」
そう言ってカードを取り出すとレイナがそれを奪って開いた。
左手が使えない俺に対する気遣いだろう。
俺が傘を持つと無防備になるからな。
「行きましょ」
「……ああ」
暗闇の世界で止むことのない雨が地面に弾け続ける。
結局、俺の部屋に着くまでお互い一言も発しなかった。
コイツ……一体何が目的なんだ?
お読みいただきありがとうございました。
新しいタイトルは100話まで書けたらその時に変える予定です。




