信念
14日が待ち遠しいです。
すごい試合になりそう。
「ワンダーフォーゲルのぅ……」
「ハンネルさん知ってるの?」
「名前くらいはの」
ハンネルさんの診療所に戻り、先程の経緯を話す。
殺人罪の手配者が幹部である組織なんてろくなもんじゃなさそうだが……。
「まぁ、気を付けることじゃ。ほれ、アイシングについて教えてくれい」
「……」
向かい合わせで座っているハンネルさんの興味はアイシングにしか向いていないらしい。
仕方ないので、話を打ちきりアイシングについて説明をする。
質問への回答と説明を繰り返し、気が付けば一時間程経っていた。
「あのさ」
「む……?」
「これも論文発表するの?」
「当たり前じゃ。何か不都合でもあるのか?」
「いや、だって……。このアイシングって俺が発見したわけじゃないんだけど」
「お前のおった世界ではな」
「……この世界では問題ないってこと?」
ふぅ、とハンネルさんがため息をつく。
一呼吸置いて、カイトよ、と真剣な顔で語りだした。
「お前が考えとることも分からんでもないが、別に悪いことをしとるわけじゃなかろう」
「そりゃ……まぁ」
「アイシングがこの世界に広まるとどうなるか想像してみい。裂傷をおった小さい子どもや、体の弱い老人が、この方法を手術で受けられるのと受けられないのと、どちらが世のためじゃ?」
「……」
「ワシは医者という仕事を選んだ者は、優れた治療方法が分かればそれを世の中に知らしめる義務があると思っておる」
「……うん」
「じゃから、お前の知識でこの世界の為になると思ったことはこれからもどんどん広めていくつもりじゃ。仮にお前が嫌だと言っても、良いよと言うまでとことんやるつもりじゃからの」
「……」
……この人もプロだ。
いや、頭で分かってはいたけど、ハンネルさんの信念を初めて見た気がした。
「……ハンネルさん」
「なんじゃ」
「分かったよ。これからも協力できることは出来る限りするからよろしく」
「……む。まぁ、の」
「……でも、俺の名前まで載せる必要ってあるの?」
「当たり前じゃ。発見者はワシじゃないからの」
……仕方ないか。
正直、これ以上俺の名前がこの世に広まるのはあまり嬉しくはないんだが。
その後も質問と答えを繰り返し、話が一段落ついたところで話題を切り替える。
「そういえば、ハンネルさんに報告があったんだ」
「報告……?」
「ああ。昨日、俺の故郷を思い出したんだ」
「ほう」
「日本という国だ。俺が今まで話した夢も、そこで経験したことだったんだよ」
「そうか……。なるほどのう」
ハンネルさんが腕を組んで黙りこむ。
「……ハンネルさん?」
「む……。すまぬ、ちと気になることがの……」
「……なにが?」
「そのニホンという国は、この世界にはないんじゃろう」
「ああ……」
「なのにお前はこの世界におる。……ということは」
「ルートのことか?」
「……そうじゃ」
「そこなんだよ。ただ……それが思い出せないんだよなぁ」
そう言って大きくのけ反る。
……ホントに俺はどうやってこの世界に来たんだろう。
お読みいただきありがとうございました。
気づいたところがあればお気軽にお願いします。




