一利
明日はいよいよ日本戦!
楽しみです!
病室には俺達だけしかいなかった。
落ち着きを取り戻した後、シグルドリーヴァさんにこれまでの経緯を話す。
じっと黙って聞いていてくれるが、正直頭がおかしいヤツだと思われていないかどうか……不安だ。
話ながらも頭では先程の悲しみの理由を考えていた。
あれは一体何だったんだろう。
喪失感……というのが一番近いだろうか。
「あの……」
「ん?」
「俺、さっき何て叫んで起きました?」
「ああ。確か……“ソー”と言っていたな」
懐かしく感じる響き。
ソーは人の名前だ、間違いない。
そして……
「日本……」
「ん?」
「そうだ、日本!」
「ニ……ホン……?」
その言葉を口にした瞬間、頭の中のモヤモヤに一筋の光が差し込んだ気がした。
さっき見た夢は、やはり俺の……記憶だ。
「シグルドリーヴァさん!」
「……何だ?」
驚いた様子で俺を見るシグルドリーヴァさん。
これまで色々と見てきた夢が、日本での出来事だったと説明をする。
「それは……、この国とは違うどこかにあるのか?」
「恐らくそうです」
「ふむ……」
口の前に右拳を当てて考え込むシグルドリーヴァさん。
「ならば……君はどこからやって来たんだ?」
「えっ……」
「違うどこかから君が来たとするなら、この国にやって来たルートがあるはずだろう」
……確かに。
俺は、気がついたらジャベリンに居た。
だが、ジャベリンに入る前に……この国にどうやって来たんだ?
パイクは気がついたら俺はカウンターに座っていたと言っていた。だが……
両手で頭を抱える。
……思い出せない。
「おい」
口を閉ざしてしまった俺に声がかけられる。
前を向くと穏やかな表情のシグルドリーヴァさんと目が合った。
「あまり考え込むな……と、言っても難しいか」
「はい……」
「まぁ、君の言ったことは信じるさ」
「……ありがとうございます」
「すぐに思い出せないこともあるだろう。……ゆっくりで良いし、焦らないことだな」
そう言って、煙草に火をつけた。
ふぅ、と煙を吐き出した後、俺に煙草を差し出してくれる。
お礼を言って、一本いただいた。
「これは、あったのか?」
「えっ……?」
「煙草だ、ニホン……だったかな」
「あ、はい。ありました」
ふっ、とシグルドリーヴァさんが笑う。
……何だ?
「百害あって一利なし、と言うが……」
「はい……?」
「こんなものでも、役に立つこともあるんだな」
「……あ」
お互い目を合わすと、数秒して吹き出した。
……確かに。
こんなもので自分の生まれ故郷を思い出せるとはな……。
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