氷
もうちょいで五十話です。
頑張ります。
「どうしたんですか?」
「……ちょっとケガをして」
良く見ると右膝から出血している。血が脛を流れていてかなり痛そうだ。カイトは彼女をとりあえずベッドに座らせ、右足を椅子にのせてからハンネルを呼んだ。
「なんじゃなんじゃ。……ん?」
「傷の手当てを……」
ハンネルはケガの部分に目を向ける。
見られた彼女はハンネルに軽く頭を下げた。
「む……。こりゃ刃物の傷か?」
「ええ……」
「ちょっと深いのう。縫うしかないがええかの」
「……お願いします」
「じゃあ、髪を少し貰うぞ」
「……はい」
ハンネルは手際よく傷口を洗い、ブクレシュティの髪の毛を通した針を手に取った。そして、そのまま手を近づける。……え?
「麻酔はしないの?」
「む?」
「……マスイ?」
数秒の沈黙……。
あれ?とっさに言葉に出たけどコレもあれなのか。
「なんじゃそれは?」
「いや……」
何だっけ?
カイトは何とか捻り出そうとする。確か……
「直接傷口を縫うと痛いから、痛みを感じないようにその部分を痺らせるための薬だよ」
「む……また理解不能なことを」
「いや、そう言われても……」
「……何をすれば良い?」
「え?」
カイトはハンネルを見る。顎鬚を撫でながらハンネルはカイトを見つめていた。
「じゃから、そのマスイというものはどうすれば良いんじゃ」
ハンネルの言葉にカイトが驚く。
(ハンネルさん……信じてくれるんだな)
何だかんだで、ハンネルは今カイトのことを誰よりも良く知っているのだ。カイトは少し照れながら目線を下げた。
ありがとう。……でも、俺もどうすりゃ良いかまでは知らないんだよ。
麻酔は確か液体かガスだったような気がするが、そんなものはないだろうし……。カイトは代用する手を考えるために再び頭を捻る。
痺れさせる痺れさせる……あ。
「氷ある?」
「氷じゃと……また高価なもんを」
そうか、氷は高いんだったな。
洞窟でしかとれないとかなんとか。でも、冷やせば痛覚が多少は鈍くなるはずだ。
「氷を膝のサイズくらいに切ってそれを患部に押し付けるんだ」
「……分かった」
「あの……」
ブクレシュティが声をだす。
何が起こっているのか分からないという表情だ。
「すみません、痛みを和らげるために氷で冷やしますが良いですか?」
「……ええ」
「氷はこれで良いか?」
「良いです。貸して下さい」
氷を受け取り患部に押し当てる。
んっ、とブクレシュティは小さく声をあげた。
「そうですね、15分くらいこの状態にします。多分やり過ぎると凍傷を起こすでしょうから」
「分かった。全く不思議な世界から来たもんじゃな、お前は」
「不思議な世界から……来た?」
「ハンネルさん!」
「む、悪い悪い。何でもないんじゃ。気にせんでくれ」
「……?」
腑に落ちない表情のブクレシュティ。……絶対気にしてる。アンタが話ややこしくしてどうすんだよ。
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