帰り道
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通り道だった石橋の縁に手をかけ橋の下を眺める。雨粒がつくる波紋をガス灯の明かりがうっすらと照らしていた。
「大分飲んだの?」
「そこそこな」
「そっかぁ」
「何してたんだ……?」
「待ってたのよ」
「俺を?」
「そう」
くるっと振り返ったかと思うと、レイナはカイトを見て微笑んだ。笑ってるとカワイイのになぁ。
……ま、もう騙されないけど。
「何考えてるの?」
「お前がここにいる目的」
「あら、会いたいから来ただけなのに」
「そうか、じゃあ目的達成だな。明日も早いしもう帰る」
石橋の縁から手を離し、カイトは帰る方向に歩き始めた。
「釣れないなー」
追っかけて来た……。
何なんだよ。カイトは溜め息をつく。
「大体何で俺がこの道通るって知ってたんだよ」
「バーに入って行くのが見えたから」
「は?」
「私ここに泊まってるの」
そう言って、近くの宿屋を指差す。
なるほどね。確かにジャベリンからここまでは一本道だ。目の良いコイツなら見えても不思議じゃない。
「カイトくんこの辺に住んでるんだ」
「ああ」
「ふーん。今度遊びに行っても良い?」
「ダメ。じゃ、また明日」
「えー、冷たいなー」
ぶつくさ言ってるレイナをよそにスタスタと歩き始めた。
「また明日ねー!」
ひらひらと左手を振って別れを告げた。
一体なんだったんだ。……ワケが分からん。
5分ほど歩いてカイトの自宅に到着する。
夜遅いので足音を殺して階段を昇った。築15年、四階建ての二階角部屋がカイトの部屋だ。
カイトは部屋に入ってすぐにシャワーを浴びた。酒の心地よさと、今日の疲れを洗い流す。
「あ゛~」
シャワーを浴びながら思わず声が出る。
今日はいろいろとあった。いや、ありすぎた。
初めての審査に、初めて顔を合わしたヤツら、生きるか死ぬかの大博打と、審査合格。それに……。
「俺はこの国の住人なんだよな……」
カイトは一人、口にする。以前からの不思議な感覚。いつも突然頭の中に現れてくる。あの感覚は一体何なんだろう。
「今のところ手がかりは銃だけか」
明日、実際に銃を持てば少しは分かるかもしれない。今日はもう休もう。
浴室から出て、布で体を拭く。
そのまま明日の準備をしていると、コンコンとドアがなった。
「?」
何だこんな時間に……。いや、てか誰だ?壁掛けの時計を見ると朝4時半を回っていた。
「誰だ」
「私」
……なんとなくそんな気はした。だが、常識というものを少しは……
……少しも通用しないんだったな。
カイトは観念してレイナに応える。
「何の用だ?」
「 泊めて欲しいの」
「はぁ!?」
玄関ドア越しの会話。
コイツ何考えてンだ……?カイトは困惑する。
「待て待て」
「開けて」
「いや無理。てか、お前宿があるだろ」
「開いてない」
「え?」
「宿の入口、鍵かけられてたの」
……なんで?
意味が分からん。
「大声だすわ」
「は?」
「開けてくれないなら大声だす」
「ちょっと待て」
ふぅーっと息を吐き出す。
これから寝ようって時に。あ~、めんどくせぇー。
……諦めた。
カイトがドアを開けると、ニコニコと笑うレイナが立っていた。
「やっぱり優しいね」
「……1つ確認したいんだが」
「何?」
「お前宿をでたのは何時だ?」
「多分2時くらい」
「……それでこの雨の中さっきまで外に居たのか?」
「うん」
レイナの返事にカイトは固まる。
……バカだ。……目の前に本物のバカがいる。
くっくっくっと笑いが込み上げて来た。
「……どうしたの?」
「いや、あがれよ。まいったわ」
「何が……?」
「何でもない、ほら」
レイナの手を引っ張り中へ入れる。……コイツは多分天然なんだろうな。パサーができるくらいの能力があるくせに、普段はぼーっとしてるってことか。
「ありがとう」
「とりあえずシャワー浴びてこい、明日の朝まで時間ないぞ」
「わかったわ。覗かないでね」
「そんな元気ねーよ」
布を渡してやると、レイナは浴室へ向かった。
ん?あいつあの後宿に帰ったんだよな。……なんで俺の部屋わかったんだ?カイトの疑問を打ち消すように、浴室からシャワーの音が聞こえてきた。
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