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光無症とドクター・ハンネル

やっと次話投稿の方法が分かった… …


なかなか面白いし、気が付くと時間が結構たってますね。


そんなんですが、まだまだ続けていきますよー。




シャーン……


シャーン……



 ジャベリンに割れたグラスの残響が響きわたる。


「大丈夫ですか!?」


 パイクがカウンターから飛び出す。床にぐったりと倒れこんだ中年男性を、彼は素早く抱き抱えボーイに医者の手配を指示した。突然のことにあたふたしながらも、指示されたボーイは外に飛び出す。

カイトは中年男性を移動させるために席を立った。


「手伝うよ」

「マーク!おいマーク!」


 パイクが必死に彼に呼び掛けるが反応はない。カイトは倒れた男の傍で片膝を立てる。おそらく飲み過ぎだと思うが、中年マークの脈をとるために彼の左手首にカイトは自分の親指をあてた。



とくんとくんとくんとくん……



 脈はある。念のため彼の瞼を開けて、燭台の火をそっと近づける。……瞳孔も開いていないな、よし。カイトはパイクを見て口を開いた。


「大丈夫だ、おそらく光無症【こうむしょう】じゃない」

「マーク……このバカが!心配させやがって!」


 カイトの判断を聞いて安心したパイクが叫ぶ。二人はマークの両脇と両足を抱えて彼をジャベリンの隅に移動させた。


カラーンッ


 その場にいた皆が入り口を振り返る。

 勢いよく開いた扉から飛び込んで来たのはドクター・ハンネルだった。そのままの勢いでドクターが声を荒げる。


「マーク!おいパイク!マークはっ!?ゴホッ、ゴフッ」


 ドクターが咳き込みながら尋ねる。傘も差さず、急いで走って来たのだろう。彼のズボンはびしょびしょに濡れていた。

 ドクターは口は悪いが優しい医者だ。それに加えて齢50を過ぎているというのにそれを感じさせないバイタリティーがある。


「ドクター、夜分にすみません。あちらに寝かせてます」


 パイクがマークの位置を手で示す。フーッフーッと息を整えながら移動するドクター・ハンネルとカイトの目が合った。


「おそらく飲み過ぎかと……」

「なんじゃ、カイト。お前がおったんじゃないか。ったくあの若造それならそうと言えば良いものを…気がきかん!」


 彼の言う若造とはあのボーイのことだろう。白髭のドクターはぶつぶつぼやきながら、マークの脈をとる。呼吸の確認や、触診をする様子をマークの友人達もそわそわしながら後ろから見ている。一通りの確認を終えたドクターは、その様子を見守る皆を振り返った。


「ふん、ただの飲み過ぎじゃ。パイク、こいつには当分酒を飲ますなよ」


 ほーっという溜め息がマークの友人達から漏れる。【光無症】じゃない。それだけで天と地ほどの差があることだ。


「わかりました。ありがとう、ドクター。どうですか一杯?」

「む……、そうじゃな。気が利くのぅ、パイクよ」


 そう言って、ドクター・ハンネルはカイトの隣に腰を掛けた――










「――なんじゃ、パイクその若造は?」


 白衣を纏ったドクター・ハンネルは言い放った。パイクがカイトをドクターの前に座らせる。


「流れ者……だと思うんですが、なんせ自分のこと何にも知らないってんで、こうして相談に来たんです……」

「ふん、自分のことを何にも知らんじゃと?そんなことはあり得ん。おそらく忘れているだけじゃ」


 そう言うと、ドクターはカイトの体を触診し始めながら質問を投げ掛けてきた。


「名前は?」

「分かりません」


「む……歳は?」

「分かりません」


「……住まいは?」

「分かりません」


 ……思い返せば、カイトはこの時もう少し愛想というものを出すべきだった。これでは、誰がドクターの立場になっていても腹をたてるだろう。


 案の定、カイトはドクター・ハンネルの逆鱗に触れた。なんじゃ、お前は。そんなんでどうやって今まで生きてきた。と、たっぷり怒りの言葉をいただいたのは、今となってはカイトの懐かしい思い出の1つである。ドクターを慌ててなだめるパイク。


 まさにその時。勢いよく診療所のドアが開き、急患が運ばれてきた。


「ドクター!この子が突然倒れてしまって……!」


 顔面蒼白の両親に抱えられた少年は、その腕の中でぐったりとしていた。ドクターはまず、触診台に少年を寝かせて様子をみる。むぅ……、とさすがのハンネルもすぐには判断できない。


「ドクター、この子は光無症なのでしょうか……」

「まだ、分からん。呼吸はあるからのう。光無症は判断が難しい。しばらく外で待っておりなさい」


 ハンネルがそう告げると、父親は頭を下げ泣き崩れる母親の肩を支ながらドアへとむかう。部屋から出ていく夫婦は死刑宣告を待つような表情だった。


「全く、ホントに厄介な病気じゃ。呼吸をしているのに二度と目を冷ますことはない。時間が立てば肌色が変わるから判断できるが、すぐに判断がつかんのが難しいところじゃな」


 やれやれ、といった様子でハンネルは少年にブランケットをかける。カイトは黙ってその様子を見ていた。パイクが尋ねる。


「肌の色が変わるとは良く聞きますが、あれは何故なんですか?」

「詳しく解明はされていないが、おそらく死んだ状態になるからじゃろうな。死体と同じ肌の色になるからのう」


 ハンネルは機材を片付けながらそう答えた。


「脈は……」

「あん?」


 それまで黙っていたカイトが、いつの間にか質問をしていた。


「脈をはかったのですか…?」

「みゃく?なんじゃそれは」


 ハンネルは厳しい顔でカイトを睨み付ける。


「死体の肌色が変わるのは血流が止まるからでしょう。血流が正常かどうか調べる為に脈をはかれば分かるんじゃないですか」


 後で聞いた話だが、この時カイトは思った疑問を口にしただけだった。しかし、ハンネルやパイクはカイトが何を言っているのか理解できなかったらしい。


「おい、お前さん何を言っているんだ?」


 パイクは自分が連れてきた、得体の知れない男の発言に困っている。


「だから、脈ですよ。ほら、自分の右手親指で左手首の親指側を押さえてみてください」


 カイトが二人の目の前でやってみせる。


「動いているでしょう。とくんとくん、って」


 ハンネルもパイクも、言われるまま動作を真似した後、二人で顔を見合せた。


「本当じゃ……。同じリズムで動いておる……」

「おい、お前さん!なんで動いてんだこりゃぁ」


 信じられないものを目の当たりにしたという様子で、彼らはカイトに質問を投げ掛けてきた。



書き方でアドバイスがあったら何でも良いので教えて下さい!


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