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傘ってなんだっけ

三話目だー


体力も時間も使うからすごい疲れますね。


毎日書いてる先生方、尊敬します。

「なんでお前、こんなことを知っておる!」


 驚きと怒りの混ざった複雑な表情でハンネルは問いかける。


「いや……」


 カイトは口ごもる。


(確かになんでだろう……)


 うーん、と頭を抱えるカイトを見て、ハンネルは質問を変えた。その瞳は、もはや疑いより強い興味を宿している。


「いや、今はそんな事はどうでも良い。それよりもこの【みゃく】は死人にはないんじゃな?」

「……はい。それは間違いないです」


 当然のように答えてしまったが、何故かそれは当たり前だという感覚がカイトの中にあった。


「……どれ」


 ハンネルは、少年の手首に指をあてた。数秒の間のあと、むぅぅと首を横に振った。


「……死人と同じ状態で息だけしとる。可哀想じゃが光無症、ということじゃな」


 ふぅぅ、とハンネルは大きく溜め息をついた――






「――カイトよ。あれからも夢は見ておるか」


 ハンネルは、くっとウィスキーをひと舐めしカイトを見つめる。白髪の割合の多い髪の毛と、ほぼ真っ白な口ヒゲがこれまでの彼の苦労を表していた。


「ええ。ちょうどさっきもその話をパイクにしていたところです」


 内容をジェスチャーを交えて説明するも、わからんわからんとハンネルは右手を振る。


 光無病の少年が運ばれてきたあの日、他に生人と死人を見分ける方法があるのかと問われ、カイトは瞳孔を確認することを思いついたのでそれもその場で説明した。


 それを聞いたハンネルは脈の説明をした時以上に驚き、危うく腰を抜かすところだった。それ以来、彼はカイトのことを医者仲間として接している。


「まぁ、内容は理解出来んが夢で見たのはお前が過去に経験したことじゃろう」


 グラスを持ち上げカラカラと氷を鳴らす。


「いろいろとワシらの知らんことを知っとるのに、光無症のことは知らんと言われたのにはたまげたがな」


 わはは、と豪快に笑いながらハンネルはくっと二口目を口にした。


「今年は特に多いと聞きますが、そうなのでしょうか」


 グラスを磨きながらパイクが口にする。


「多い。いや、それより何年も前からだんだん数は増えとったんじゃ。なのに、なーんも対策をとらんかった王宮は今さら慌てておる始末。こんなんじゃあいかんのう」


 ハンネルがくいっとグラスの中身を一気に飲み干した。コトッとグラスをカウンターに置く。


「うまかった。ごちそうさま。マークが起きたらワシのところへ来いと伝えてくれ」


 じゃあの、と別れを告げて立ち上がる。


「俺も帰るよ」


 パイクに銅貨数枚を渡し、カイトはハンネルのあとを追った。


 外はいつもと変わらず、ざあざあと雨が音を鳴らしている。カイトは自分の傘をポケットからとりだし、取っ手のボタンを押した。バシュ、とカードサイズから大きく広がった傘を持ち、先を歩くハンネルのところまで走って追いかける。


「なんじゃ、お前も帰るのか」


 カイトの気配に気付いたハンネルは振り返らずに言う。傘の弾く雨音が大きく、声が聞き取り辛い。


「……ところでカイト、あれはまだやっとるのか」


 どうしようもない感情を、なるべくみせないようにした表情でハンネルが訊ねる。


「はい。自分の秘密を解くためですからね」

「……ふん。無茶はするなよ。何かあればすぐワシのところへ来い」


 わかりました。そう言って、カイトは彼の病院の前で別れた。



 雨は止まない。

 カイトは帰り道を1人歩きながら考える。


自分のこと――


夢のこと――


光無症のこと――


そして、傘のこと――



 傘に初めて見た時、カイトは他の皆と違う印象を抱いた。武器としての傘、防具としての傘、装飾品としての傘など、この国には傘が溢れている。


 今ではもう普通に感じるが、初めて傘を武器として使っているところを見た時、カイトが心の中で思ったこと――



(――傘ってああやって使うものだっただろうか?)


評価が怖いですけどよろしくお願いします!

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