迷彩作戦
花粉も少なくなってきたー
春万歳。
レイナが不思議そうにカイトを見ている。
白い肌に黒髪碧眼。彫りはさほど深くはないが、バランスの良い整った顔立ちをしている。
「何してるの?」
「後で説明するから周りをちゃんと見てろ」
「見てるけど気になるじゃん」
お前、ホント面倒くさいな。カイトは無視することにした。せっせと葉のついた枝を集め、それと平行して雨でぬかるんだ泥を服につける。
「カモフラージュだよ」
「カモフラージュ?」
レイナは首を傾げている。どうやらこれも知られていないことらしい。声を潜めながら続ける。
「自分の姿を周りに馴染ませるんだ。そうすることで相手はこちらを認識し辛くなる」
「うそー」
レイナは疑いの眼差しを隠そうともしない。
「じゃあ、そこで3秒目を瞑ってから開けてみろ」
「なんで?」
「うまく出来ているか確かめたい」
「わかったわ。いくよ」
いち、に、さん。
数えたレイナが目を開く。
「あれ……?カイトくん?」
「よし」
「きゃ!」
その声を聞いて今度はカイトが驚く。
(馬鹿、大声出すな!)
素早くレイナの背後から手で口を押さえる。
……。
……。
(……大丈夫みたい、だな)
ホッと胸を撫で下ろす。こんなことで発見されたら間抜けも良いところだろう。
「ん"~」
「あ、悪い悪い」
カイトは手を離す。
突然のことで驚いたとはいえ、少しばかり力が強かったようだ。
「何するのよ」
「お前が大声出すからだろ」
「あ、そうか。……ごめん」
ん。素直でよろしい。じゃあ、こいつにも理解してもらおうか。カイトは説明を始める。
「まずは、俺と同じように全身に泥をつけて、葉のついた枝を全身につけろ」
「うぇ。なんかやだなぁ」
「死にたければ別に良いけど」
「ちょっと言ってみただけよ」
レイナはぶつぶつ言いながら準備を始める。
「さっき俺がどこにいるか分からなかっただろ?」
「うん」
「あれがカモフラージュだ。この状態でガンナーから銃を奪う」
「どうやって?」
作戦はこうだ。
まず、レイナがカモフラージュした状態でオトリになる。ガンナーは大体離れた距離から狙うはずからリスクは小さいだろう。
レイナに注意が払われている間に、俺がガンナーに近付き隙をみて銃、もしくはトンクを奪う。それをレイナに渡し、この場所で落ち合う。
「以上だ」
「なるほどねー。やっぱりカイトくんすごい」
「お前に強制はしない。嫌なら無理はしなくて良い」
「ふふっ、優しいんだね」
レイナが笑う。なかなか良い笑顔だ。何を考えているのか分からないヤツだが、もしかしたら何も考えていないのかも知れない。
「カモフラージュが知られていない技術なら、見つかる可能性は少ないと思う」
「そうだね。でもそれだったらわざわざ銃を奪いにいかなくても、このまま隠れていても良いんじゃない?」
……う。
こっ、こいつ……。
確かにそうだ。カイトは考える。
カモフラージュによって、見つかるリスクが小さくなるなら無茶をする必要はない。
「レイナ」
「ん?」
「その通りだ」
「でしょー」
……なんか悔しい。カイトは唇を噛む。
だが、審査はまだ続くはずだ。この作戦は最後の手段ということにしておこう。
「なぁ」
「なに?」
「さっき話した作戦は……」
バシュッ
……!?
(見つかった!?)
カイトはレイナの頭を押さえ、木の幹を背にして伏せる。銃声は一発のみ。ならば、相手は1人の可能性が高い。とはいえ、相手はプロのガンナーでありカイト達はアマチュアである。
「……今すぐ決行するぞ」
「わかったわ!」
声がでかいっつーの。
カイトの肩の力が少しだけ抜けた。
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