[初配信]夜露死苦。探索者デビュー/剛田力一 ④
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名前:剛田 力一
レベル:5←3
体力:182/182←156/156
魔力:2/14←10/10
攻撃:35←24
敏捷:28←18
耐久:29←19
器用:20←13
知力:15←10
スキル:【高揚】
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次の階層に行くため、レベル上げに時間を費やすこと約3時間。見つけた魔物を片っ端から倒して回っていたら、レベルを5まで上げることができた。
概ねいい感じにステータスが伸びたが、知力は相変わらずだ。
「知力ってどうやって上げるんだ?」
"本読め"
"勉強しろ"
"無理そう"
もう諦めるべきだろうか。
思考して戦闘することが重要なのだろうが、どうしても直感的に動いてしまう。感覚で動くのは良くないと分かってはいるんだがな。
それにしてもだ。
【高揚】を使うと魔力を全て使い切ってしまい、動けなくなってしまう。10分の何もできない間に襲われたら目も当てられない。
「どうにかならないもんかね」
"大器晩成って感じやし、強いとは思うけどな"
"倒れる前に魔力ポーションを口に含んどけばいいんじゃない?"
なるほどな。飲み込めるか分からないが、試してもいいかもしれない。
「いい考えだな、次の配信からはそうするわ」
かなり懐が痛くなるが、次からは魔力ポーションを購入しておこう。
「んじゃ、そろそろ5階層に行きますか」
森の中央に位置する巨木の洞に生成されている階段を下っていく。
階層間を繋ぐ階段はセーフゾーンとなっており、魔物が入ってこれないようになっている。それを利用してか、いくつかのパーティーが休憩をとっていた。
それというのも、次の階層が少々特殊なためだろう。
ダンジョンには、5階層ごとに階層主と呼ばれる強力な魔物が存在している。
いわゆるボス部屋などはなく、階層内を自由に闊歩している。固定された位置にいるわけではないため遭遇するタイミングも場所も完全に運任せとなるが、討伐するとスキルを1つ入手することができる。
ただし、各階層1度きり。
また、階層主よりレベルが高いとスキルは入手できないため戦闘は苛烈を極めることとなる。
「とまあ、こんな感じだな」
“へぇー”
“無理して死ぬやつも多いけどな”
"スキルを狙わずに、安全圏までレベル上げする人たちも多いね"
「でもそれって勿体なくね?」
"勿体ないけど命が1番だからね"
"まあ、そいつらは中堅どまりなんだけどなww"
視聴者たちに軽く説明をしていると、先の階層よりも鬱蒼とした森が視界に広がる。
ひとまず、何があるか見て回ろうと思いぶらぶらと歩き回ってみるか。
「歩くの面倒臭いわー。もしかしてずっとこんな感じか?」
"せやで"
"しばらく我慢するしかないね"
この階層、足元が悪すぎる。
地面を見ると草や低木で埋まっており、とても歩きにくい。周りも薮のようになっていて、見通しも悪くなっている。
さらには、顔の近くで大量に飛び回っている虫がとても鬱陶しい。
「ダンジョンの中なのに、なんでコイツらがいるんだよ……」
"そいつどこにでもいるよな"
"ユスリカだね。なぜダンジョンにいるのかは分かっていないそうだよ"
顔の前を手で払っても、すぐに戻ってくる。魔物よりも手強い虫に顔を顰めながら先へ進む。
ザクッ、ザクッ、と足音だけが響く時間がしばらく続く。
「静かすぎねぇか?」
魔物の声も探索者の声も、足音以外の音がまるで聞こえてこない。
「全然魔物が出てこねぇな」
“たしかに”
“なんか不穏やな”
“前にいた探索者が倒したか、強い魔物がいる時によくあるよ”
“あっ”
その直後だった。
錆びた鉄のような匂いが、ふっと鼻についた。嫌な予感を感じながら先を急ぐと、初めて見る光景に一瞬立ち止まる。
「ありゃりゃ」
目の前では、2人の男女が岩に埋まるようにして動かなくなっている。岩にはヒビが入っており、激しく叩きつけられたような跡だ。周囲の地面も抉れ、衝撃の大きさを物語っている。
“うわっ”
“あちゃー”
“探索者の死に方はいつもグロいな”
周りを警戒しつつ、2人の側へ近寄る。念の為に確認するが、息をしておらず脈も止まっている。既に身体も冷たい。
特に思うところはないが、配信のことを考えたら埋葬した方がいいのだろうか。そんなことを考えていると、ふとケモノの匂いが濃くなったような気がした。
───ドンッ!
何かが迫ってくるような気配を感じ、間一髪のところで避ける。受身を取り体勢を整えると、先程まで俺がいた場所に目をやる。
岩は粉々に砕け、彼らの遺体はどこかに吹き飛ばされたのだろうか。
ただ、遺体が見当たらない代わりに別の何かがそこにいた。
焦げ茶色の体毛に、逆さに生えた鋭い牙。頭部には血が染み付いているのか、赤黒く染まっている。
そこには、俺の身長を悠々と超えるイノシシのような魔物が姿を露わにしていた。
「あっぶねぇええ!」
“ギリッギリじゃん!!”
“なんでアレを避けれたんだ…”
“階層主のラージボアだね”
“2メートル以上ありそうやな”
階層主がイノシシだってことは知っていたが、ここまで速いとは思わなかった。グレーウルフなんかとは比べ物にならない。
「こいつを倒せばスキルを貰えるんだよな?」
“せやで泣”
“階層主を倒すならパーティーを組むべきだね、今更だけど”
今の俺がこいつに勝てるのだろうか。死ぬのは以ての外だし、撤退も視野に入れておくべきか。
ラージボアは身体を震わせ、身体に付いた岩の破片を落とす。躱されたことに腹を立てたのか、こちらに体を向けるや否や突進を仕掛けてくる。
あまりの速さに避けることで手一杯になる。しかし直線的な動きのため予測はしやすい。
横へ飛び、すれ違いざまに身体へ蹴りを入れる。
しかし、ゴンッと鈍い手応えが残りダメージが通っている感覚がない。
ラージボアは俺の蹴りなど気にも留めず突き進み、先にあった木を吹き飛ばす。幹がへし折れ破片が飛び散るほどの突進は、まともに食らったら一溜りもないだろう。
「さて、どうしたもんか」
“うーん”
“武器を持ってないのが痛すぎるって”
“無理に倒す必要なくない?”
打撃は効かなそうだし、逃げるのは癪に障る。どうするべきだろうか。
……だめだ、考えて戦うなんて俺らしくない。ゴリ押しが1番性に合っている。
ひとまず、弱点が見つかるまで攻撃を続けるか。
脚の関節を狙って攻撃を入れるも弾かれる。鼻頭に蹴りを放つも、逆に吹き飛ばされる。
それでも絶えず攻撃を続けること1時間。
無心で避ける、攻撃するを繰り返していたがようやく転機が訪れた。
攻撃はしっかりと内部に届いているようで、集中的に狙った前脚を庇う動作が見え始めた。そして極めつけに───
「おっ」
顔の近くを殴ると同時に、ピシッと犬歯にヒビが入った。
───【高揚】
残りの魔力は10。
急に流れを変え接近してくる様子に、ラージボアは急いで方向転換し突進を始めようとする。
しかしギリギリのところでしがみつき、牙に膝蹴りをかます。強化の乗りが浅いため、もう2、3度膝を入れ叩き折る。
ラージボアが振り払おうと顔をかち上げるが、しゃがんで躱し逆側へ移動。俺を見失った隙に目に牙を突き刺し、蹴りで更に奥へと打ち込んだ。
勝ちを確信した俺はラージボアから飛び退いて距離をとる。そして着地に失敗し倒れ込む。魔力が0になったのか、身体に力が入らない。
ラージボアはおぞましい声をあげ倒れるも、すぐには消えない。
最後の悪あがきか、立てずともそこかしこを転がり回る。岩にぶつかり、木にぶつかり。そして俺にもぶつかったところで、ようやく霧になり消えていった。
(ステータス)
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名前:剛田 力一
レベル:7←5
体力:15/208←15/182
魔力:0/24←0/14
攻撃:57←35
敏捷:40←28
耐久:39←29
器用:30←20
知力:21←15
スキル:【高揚】【硬化】
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【硬化】か、なるほどね。
魔力を成長させたかったから、魔力を使うアクティブスキルが欲しかったんだ。その点で言うと当たりのスキルだ。身体が武器の俺からしたら、攻守に役立ってくれることだろう。
なんてまあ悠長に考えていたが、次第にどうでも良くなってくる。
早く10分経って欲しい。魔力欠乏症に多少慣れたのか、さっきよりも思考がはっきりしてきた。
あー、身体が痛くなってきた。アドレナリンが切れていくのを感じる。あのクソ猪、最後の最後にやりやがって。体力全損しかけてるんだが。あ、痛いやばいぃぃいいい!!
あっ、やっと終わった……
魔力が回復するまでの10分間、何とか耐えたがこれ以上は無理だ。強制終了とさせてもらおう。
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