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港区の狂戦士、剛田力一  作者: つなまぐろ
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[第5回]30階まで※縛りあり/剛田力一 ⑥

 【高揚(ハイボルテージ)】強すぎじゃないか?


 この階層の適正レベルは43、階層主に限っていえば60くらいあるらしい。つまりだ、十秒経てば奴と互角。そこから先はずっと俺のターンってことだ。


 ステータスとスキルがあっての推奨レベルだから、厳密に言えば二十秒経ってステータスが三倍になったくらいがちょうどいいのかもしれないが。【高揚(ハイボルテージ)】を使ってる時は、他のスキルが使えないからな。


 「追いつかれてんぞエテ公!」


 危うく引き離されるところだったが、ギリギリで耐えた。耐えたっていうかほとんど見失っていたが、直線で逃げてくれたおかげで何とかなった。


 木々を利用して逃げる大猿に追いつき、動きを止めようと一撃打ち込む。


 「おっ?」


 当たると思った直前、大猿がこちらを振り向く。長い両腕を使い拳の衝撃を受け流すと、口から炎を吐き出してきた。


 避けきれずに正面から食らうが、近くの枝を掴んで炎の範囲外へ退避する。既に四倍ほどの強化を得ているおかげか、大した影響はなさそうだ。


 "武術みたいなの使ってたな"

 "ホントどこで覚えたのやら"

 "森で火使うとか頭おかしいやろww"


 たしかに、森で炎を吐くなよ。


 だが、その炎が俺に効かないことは分かった。受け流しには驚いたが、受け流せる力の限界があるだろ。


 だったら俺のすることは攻撃のみ。


 すぐさま追いつき、もう一度殴る。そう見せかけ、衝撃を受け流そうと出された手を掴む。


 「ふんっ!!」


 大猿を強引に空中でぶん回し、地面に叩きつける。たいしたダメージではないだろうが、これで動きを止めることができた。


 すると真横から何かが叩きつけられ、吹き飛ばされそうな衝撃を受ける。叩きつけられたそれを咄嗟に掴み堪えると、死角を狙うように長い尻尾が伸びていた。


 掴まれるとは思っていなかったのか、慌てて俺を地面に叩きつけるがそんなものは効かない。それよりも地面に下ろしてくれてありがとう。


 すぐさま炎を吐いてくるが、そんなもの関係ないと炎の中を突き進む。大猿も炎が効かないことは何となく分かっているのだろう。炎から出るや否や拳が飛んできた。


 「さっきのお返しだ」


 大猿の受け流しを猿真似する。拳の軌道を僅かに逸らし懐へ潜り込むと、猿特有の土手っ腹に蹴りを入れる。


 「─────!!」


 大猿は直線上にある木をなぎ倒しながら吹き飛んでいく。何とか踏みとどまったようだが、俺の姿を捉えられていないようだ。


 そりゃあ、蹴飛ばして終わりなわけないよな。背中ががら空きだ。


 「って、マジか」


 攻撃しようと踏み込んだ瞬間、足元の地面が崩れ落ちた。落とし穴をいつ作ったのかは分からんが、いくら強化されようと空は飛べない。見事に落下し、魔法で作られた岩を連続で投げつけられる。

 

 火属性の他に土属性の魔法も使えたとは。羨ましいなこのヤロウ。


 腕を払い飛んできた岩を壊し、一足で落とし穴から飛び出る。それにしても、全然気持ちよく攻撃させてくれないからストレスが溜まる。


 ストレス解消、とばかりに本気で大猿に接近する。


 強化された俺のスピードに反応できなかったのか、逃げるにしろ防御するにしろ体勢が整っていない。スキルを使ってから恐らく一分は経ち、強化はさらに進んでいる。大猿には過剰なほどの力で、間抜けな顔面を殴りつけた。


 ───ドゴォォッ!!


 直線上にある木をなぎ倒しながら吹き飛んでいく。後を追いかけると、白目を向き動かなくなっていた。


 階層主だけあって一発ではやられなかったようだ。さて、これは本当に気絶しているのか、やられた振りをしているのかどっちだろうな。


 「あ、こりゃ伸びてるわ」


 こいつの事だから意識があれば俺に触らせることはないはずなんだが、普通に触れてしまった。どうやら強くなりすぎたようだ。


 「スキルの効果が切れる前に階段に戻っておくわ」


 階段はセーフゾーンだから、そこで魔力がなくなって動けなくなるのが一番いいだろう。わざわざ簡易結界を無駄にすることもないしな。


 少し強めに大猿を蹴ると、簡単に灰になりダンジョンに吸収されていった。素材は何も落とさず、いつも通り魔石だけだ。


 「はぁ……」


 "強すぎなんだけど"

 "早く倒せば時間制限とかあってないようなもんやな"

 "チートすぎ"

 "なんか不満げ?"


 不満っていうかな、強すぎると逆につまらないんだな。強化無しだとスピード的に戦えるかも怪しかったから【高揚(ハイボルテージ)】を使ったが、過剰にも程がある。


 とりあえず階段に戻ろうと走り出すと、ものの数秒で着いてしまった。俺TUEEEEってのは楽しいもんだと思っていたが、ヒリつきがなくてなんだか虚しい。


 "速ぇー!"

 "ドローンの性能ヤバすぎるw"

 "今のステータスどんなもんやろな"


 そうだステータスの確認をしていなかったな。あまり伸びているとは思えない戦闘だったがどうだろう。


 あ、力入んねぇ。魔力切れたわ。


 (ステータス)


─────────

名前:剛田 力一

レベル:41←34

体力:581/650←490/559

魔力:28/188←0/160

攻撃:261←226

敏捷:213←178

耐久:224←189

器用:167←139

知力:72←65

スキル:【高揚(ハイボルテージ)】【硬化】【連撃】【不倒】【耐久Ⅱ】【加速】【野生の勘】【敏捷I】【火耐性I】

─────────


 おいおい、ステータスの伸びが普通ってのは置いといてだ。火耐性って、報酬としてスキルをくれるんだったらもっといいもんにしてくれよ。


 "どうやった?"

 "スキルは何貰えた?"

 

 「まーた耐性のスキルだったわ」


 "乙ー"

 "まあドンマイやな"

 "同情するぞ、漢よ……"


 今日の配信は終わるとして、いろいろとまあフラストレーションの溜まる展開だったな。スカルキメラとの戦いが楽しすぎたんだ。


 いや、でもそうか。レベルの上がった今ならエテ公と【高揚(ハイボルテージ)】を使わずとも戦えるはず……だよな?


 次の配信かプライベートでもいいが、もう一度あいつと戦ってもいいな。


 「すまんな、こんなしょうもない戦いを見せちまって」


 "……??"

 "しょうもない?"

 "何言ってるのこの人"


 「ということで、本日の配信はここまで。チャンネル登録と高評価、よろしくお願いします。次はもっと面白い配信ができるよう努めます」


 そういえば、だいぶこの倦怠感にも慣れてきたな。普通に喋れてるわ。

チャンネル登録者数:430 高評価数:518 視聴者:1409



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