二位一体
神から借りた武器を五つも身に着けた環のいで立ちは、さすがに目を引くものになっていた。
金色のバングルに、ペリドットのような宝石が輝くピアス。ブーツには真っ白な翼。腰には剣にピストルと若い娘には似つかわしくない武器がそろっている。おまけに首には、ユスティラにもらったネックレスがきらりと光る。
ただ、第六の町にそれを気にする者はない。中華風の街並みの中で、幸福に酩酊したように笑う人ばかりだ。ベンチに座って談笑したり、道端で寝そべったりしている。
ゆっくり流れる小川の向こうには、三階建ての家のようなものが軒を連ねている。窓には木枠で幾何学模様が組まれていた。軒先には赤いランタンが下がっており、一見地味な光景にささやかな花を添えている。
環は神を探していた。早く体に戻りたい。しかし天使が見当たらず、やみくもに石畳の歩道を歩き続けている。
気疲れして、環はベンチに腰を下ろす。川沿いに植えられた柳を、ぼおっと見上げた。風もないのに、枝が揺れている。よく見ると、自分を手招いているように見えた。さらには、別の枝で橋の向こうの家を指し示している。
「まさか」
予感に駆られて立ち上がる。橋を渡り円形の入り口をくぐると、家の間のスペースに出る。石でできた大きな椅子に、ひときわ派手な服を着た人物が座っていた。
中世的な美貌を見るに、この町の神なのだろう。長い紺色の髪を束ね、瞳は琥珀のような色をしている。膝の上にはおかっぱ頭のかわいらしい子供がちょこんと座っている。子供も性別が曖昧だった。
これまでの町の神はギリシャやローマの彫刻で見るような服を着ていたが、二人とも仙人のような服を着ている。ただ質素ではなく、真っ赤な上に金の刺繍が施されている上に、かんざしをどっさりつけていた。
「おぬしか、夜見環という不憫な娘は」
神が切れ長の目を細める。
「はい。あなたが、第六の町の神ですね」
「私が神と分かるとは。やはり、美しさに引き寄せられてきたのだな?もう少しおぬしのことを盗み見ておきたかったのだが」
のう?と子供の顔を見る。くりくりした瞳の子供は、小鳥のように首をかしげた。
「いや、柳の木が教えてくれたので」
「ややっ。無粋なことをする。この町では草木が天使の役割を果たしているのだが、柳はいつも私の裏をかいてくるのだよ。私はおぬしが探してくれるのを待っておってのに」
「いやずっと探してましたけど、見つからないんですもん」
「当たり前であろ。歩道側ばかり探しているのだから。私の仕事はこちらの家側にあるのだよ。そうだ、仕事を見ていかんか?」
「いや、あの、武器を貸していただきたくて来たんですが」
「知っておる。だが、おぬしはタダで貸せというのか?もちろん貸さぬことはないが、少し付き合ってくれてもよかろうに」
少しだけ、といって長々付き合わせてくる例を、環はたくさん知っている。
でも、今は神についていくしかないのだ。振り回されるのは、相手に全て委ねているから。目的を持ってついていけば、晴山やヒネのときのようにはならないはずだ。
「分かりました。じゃ、仕事を見たら貸してくださいね」
「せっかちだのう……そういえば、名を名乗っていなかったな。私の名はヘレヌ。こちらの子供はティエラという。私たちは二人で神をやっている。めずらしかろ?」
ヘレヌが自慢げに胸をそらすと、ティエラも真似る。二人分のドヤ顔に気おされ「珍しいですね」と言うと「それほどでも」と同時に照れる。
「いやヘレヌさんが言ったんじゃないですか」
お決まりのツッコミをしながら、愉快な神だなと思っていた。




