計画
白熱灯のような酒場の灯が、目に染みる。LEDとは違うやわらかな光が、環の目にもどこか懐かしく思えた。
酒場では、老若男女が混ざり合って、酒のジョッキをあおっている。
「姉ちゃんたちもどうだい?」
テラス席から、西洋人らしき恰幅の良い男性がジョッキを上げる。
「未成年ですから」
愛莉がきっぱりと答える。
「あの世なんだ。関係ねえさ!浴びるように酒が飲めるぞ!」
「私たち忙しいので」
愛莉が会釈をしてスタスタ歩く。
「ああいう風に絡んでくる人は、大抵面倒だからさ」
と環を見上げる。
環は少し付き合っても良いような気がしていた。何かのアイデアが浮かぶかもしれない……が、そういう他力本願なところがいけないのだ。打ち消すように頭を横に振る。
ホテルから入口の方へ進んでいくと、酒場がだんだん少なくなる。本屋やアナログゲームショップなど酒場以外の店も開いているが、人の数はぐんと減る。見回りらしい天使がちらほらいるが、人の姿はほとんどいなくなった。
入口が見えてきたところで、二人は立ち止まる。
「服屋さんには、誰もいないね」
愛莉が、昼間に寄った服屋に目を向ける。
さみしく明かりが灯った店内で、ぽっちゃりした天使があくびをしていた。
「うん。そういえば、昼間もあんまりお客さんいなかったよね」
「ここで売ってるような服きてる人も、あんまり見かけないし」
「……ファッションショー」
口から自然に出た言葉に、環自身がハッと顔を上げた。
「ファッションショーやってみたい!服屋の天使たちも、お客さんがあんまりいなくて困ってるかもしれない」
「面白そう!そうだ、噂になったら、颯も見に来てくれるかもだ!」
暗い愛莉の瞳が一瞬明るくなる。
「私、颯を探しながらチラシ配るよ!SNSみたいなのは多分ないからさ」
「良さそう!じゃあ、お店の人と交渉してみようか」
勇んで歩み出す環の腕を、愛莉がつかむ。
「ちょっと計画立ててからにしない?ノープランで行っても、私たちも困っちゃうかも」
「あ、たしかに」
環は照れ笑いをする。
二人は、来た道を戻り始めた。
「どんなチラシ作ろうか?ていうか、チラシ作れるようなところってあるのかな?」
「ダメだったら、天使たちにアナウンスしてもらうのもいいかも。私たちが宣伝するのもいいし」
「なんかアナログも面白い」
「ファッションショーに出たい人を募るのもいいよね」
「こっちでスカウトするのとかも楽しそう」
話は尽きず、二人はホテルに戻ってからも、空が白むまであれこれ相談をし続けた。




