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環はあの世を駆けめぐる  作者: 春日野霞
第三章 タラリア<翼のブーツ>
30/63

計画

 白熱灯のような酒場の灯が、目に染みる。LEDとは違うやわらかな光が、環の目にもどこか懐かしく思えた。


 酒場では、老若男女が混ざり合って、酒のジョッキをあおっている。


「姉ちゃんたちもどうだい?」

 テラス席から、西洋人らしき恰幅の良い男性がジョッキを上げる。


「未成年ですから」

 愛莉がきっぱりと答える。

「あの世なんだ。関係ねえさ!浴びるように酒が飲めるぞ!」

「私たち忙しいので」

 愛莉が会釈をしてスタスタ歩く。


「ああいう風に絡んでくる人は、大抵面倒だからさ」

 と環を見上げる。


 環は少し付き合っても良いような気がしていた。何かのアイデアが浮かぶかもしれない……が、そういう他力本願なところがいけないのだ。打ち消すように頭を横に振る。


 ホテルから入口の方へ進んでいくと、酒場がだんだん少なくなる。本屋やアナログゲームショップなど酒場以外の店も開いているが、人の数はぐんと減る。見回りらしい天使がちらほらいるが、人の姿はほとんどいなくなった。

 入口が見えてきたところで、二人は立ち止まる。


「服屋さんには、誰もいないね」

 愛莉が、昼間に寄った服屋に目を向ける。


 さみしく明かりが灯った店内で、ぽっちゃりした天使があくびをしていた。


「うん。そういえば、昼間もあんまりお客さんいなかったよね」

「ここで売ってるような服きてる人も、あんまり見かけないし」


「……ファッションショー」


 口から自然に出た言葉に、環自身がハッと顔を上げた。


「ファッションショーやってみたい!服屋の天使たちも、お客さんがあんまりいなくて困ってるかもしれない」

「面白そう!そうだ、噂になったら、颯も見に来てくれるかもだ!」

 暗い愛莉の瞳が一瞬明るくなる。


「私、颯を探しながらチラシ配るよ!SNSみたいなのは多分ないからさ」

「良さそう!じゃあ、お店の人と交渉してみようか」


 勇んで歩み出す環の腕を、愛莉がつかむ。


「ちょっと計画立ててからにしない?ノープランで行っても、私たちも困っちゃうかも」

「あ、たしかに」

 環は照れ笑いをする。

 二人は、来た道を戻り始めた。


「どんなチラシ作ろうか?ていうか、チラシ作れるようなところってあるのかな?」

「ダメだったら、天使たちにアナウンスしてもらうのもいいかも。私たちが宣伝するのもいいし」

「なんかアナログも面白い」

「ファッションショーに出たい人を募るのもいいよね」

「こっちでスカウトするのとかも楽しそう」


 話は尽きず、二人はホテルに戻ってからも、空が白むまであれこれ相談をし続けた。

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