再びまみえん
環は、無骨な天使に第二の町への出口まで送ってもらった。草がなびく陸地に、汽車が停まっている。次の町までは歩かなくて良さそうだとホッとした。
相変わらずファンシーな雲から降り、無骨な天使に頭を下げる。
「お世話になりました」
「いえ。こちらこそ」
意外なほどやわらかな口調で言う。
「私はなにも……」
「正直、我々もナルディラ様には手を焼いておりました。アリテュス様は、かならずこの町を良くしてくれましょう。次にこちらに来たとき、町の様子に驚かれるかもしれません」
無骨な天使は最後に微笑むと、空へ舞い上がった。
「そっか。私また、ここに来るんだ」
今度来るときは、半端によそ者のようでも、やるべきことがあるわけでもない。この後の人生を生き抜いた先に、たどり着く場所なのだ。
環は、広大な海のような第二の町を見つめた。鏡面のように凪いだ海が、水色の空を映している。所々に突き出た建物が、やがて来る人の訪れを待っているように見えた。
アリテュスはどんな町をつくるのだろう。
そしてその町を、未来の自分はどんな気持ちで見つめるのだろうか。
「ちょっと楽しみ」
環は、汽車へ向かう人波に歩き出す。左の耳につけたピアスが、ぴかりときらめいた。