↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
環はあの世を駆けめぐる  作者: 春原沙羅
第ニ章 ソピア<知恵>

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/63

朝

 星をいくつ数えたか分からなくなったころ、辺りが明るくなってくる。背後からの強い光に、環は振り返る。


 水平線から朝日が昇ってくる。目覚め始めた人々が、朝日を眺めていた。

 環は上の階に向かう。青田も窓辺に立っている。


「おはよう」

「おはよ」


 青田の横に立ち、海と空のはざまを見る。


 海は銀色に輝き、空はやわらなか薄紅に染まっている。さえぎるものがない朝日を、環は初めて見た。環の体がオレンジに照らされる。案外、朝焼けも夕焼けのように見える。この郷愁を誘う色は、一日を始めるのには似つかわしくないような気もした。


「あの世にいると、日の出と一緒に目が覚めるんだよね」


 青田がのんきにあくびをする。

 合わせて明るく振舞おうとするが、言葉が出てこない。胸につっかえた苦しみを吐き出さないと、笑顔もうまくいかないようだった。


「私さ、寝たとき、この世に行ったの。幽霊として」

「ああ、毎晩行くね」

 改めて考えると、環はあの世で迎えた夜は昨晩が初めてだった。


「……私、自分で飛び降りてた」


 青田の目を見れなかった。


「思い出したんだね」

 彼は変わらない調子で相槌を打つ。


「うん……。正直、今日は神様のとこ行くような気分じゃないよ」

「でも、早い方がいいでしょ。俺は夜見さんに気の利いたことも言えないし。こんな所じゃ気分転換もできないし」

「……そうかも」


 と落ち込んだままの声で返事をする。


「大丈夫。この話は俺に任せてよ。夜見さんは見てるだけでいいからさ」

 環は青田を見る。案外頼りになることを言う。


「俺もこの世に行って、自分の意見を吟味してみたんだ。久し振りに研究室のパソコンを使ったんだけど、やっぱもっと生きてきたかったなって思った。あの世で本を読むのも楽しいけど、自分でもっと色んなことを解き明かしていきたかった。でももう、俺にそれはできない。だから、神と話す機会と、考える機会を与えてくれて、改めて嬉しいんだ。ありがとう」


 思わぬ言葉に、環は辟易する。

「私はただ、困ってただけで」

「夜見さんがもっと賢かったら、誰かに頼ることもなかったでしょ」


 とまた、真顔で言う。


「もう、嫌味ですかぁ?せっかくいいこと言ってくれたのに、結局マイナスだわ」

「あ、ごめん、そうじゃなくて、いやでも確かに嫌味っぽいな」


 慌てる彼が、妙におかしい。環は明るい声で笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。