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紡ぎ合う世界の救世主  作者: 綿時 緋沙
聖なる集い編
220/256

第198話 護衛魔術師候補


 試験が終わると同時にレスティオは観覧席を後にした。

 部屋に戻るとエリザとリティックが護衛魔術師候補のリストを手に各所との調整に動き出す。


「レスティオ様。護衛魔術師については叙任の許可が下りました。この後、諸外国との社交界により人の移動が多くなるので、こちらのお部屋でご挨拶をと思いますがよろしいですか?」

 

 聖騎士が移動するより護衛魔術師たちが動く方が影響が少ない。

 護衛魔術師候補の資料を眺めていたレスティオは二つ返事で承諾した。


「叙任式は?」

「正式な叙任ではないので本来は不要なものです」


 省略でいいですねと笑顔で言われたら嫌だとは言えない。

 諸々聖騎士案件で負担をかけている中、騎士団のように盛り立ててやる義理は魔術師団には今のところないといえば強行するものでもない。






 聖騎士の護衛魔術師選定にあたり、候補者リストが帝国軍総帥から宰相を通して皇室へと回覧され承諾が下りた。

 叙任にあたってレスティオのもとへ報告へ向かったエリザを見送り、ニルカはエルリックに同伴して魔術師団への通達を任された。


「総帥は今回の選定に一切の口出しをされていないのですよね」

「あぁ。私は人選に口出しを出来るほど、今の魔術師団を見られてはいない」


 これまで評価していた魔術師も、最近の様子を見れば評価には値しない者が多い。

 エルリック自身の意識が変わってきているからこそだろうとミアに宥められたが、総帥の立場が急に重たいものに思えてきている。


「其方も気を引き締めよ。レスティオ様にとってはこの世界の出自など些末なこと。なにかにとって有益と見做されれば取り立てられ、立場を与えて頂ける。努力する者にとっては今が千載一遇の好機と言えよう」


 聖騎士専属秘書官の叙任が発表された時に自分の名前がないことを悔しく思っていたニルカは、その言葉に資料を握りしめた。

 エリザはその手腕で以って仮決めに過ぎなかった筆頭秘書官の座を信頼と共に得た。リティックは妻の後押しが大きかったと噂されているが、聖騎士の遠征にあたっての調整でレスティオの性格を踏まえた意見が目立っていたことが上層部の目に留まっていた。他の秘書官も同様。慣例ではなく、なにか変えなければならないのではないかと臆せず意見を出していた者が登用された。

 そういう人材を好まれる御方であり、彼らが潰されず成長を続けるにはレスティオの側に置くのがいいという判断でもある。

 

「はい。私は、まだ諦めていませんから」


 力強い眼差しにエルリックはふっと笑った。

 

 夕食の時間前に、魔術師たちは訓練場へと集められた。

 試験後、騎士団と比べて惨敗ともいえる結果に対する酷評を受けて意気消沈の中、結果発表を前に聖騎士専属護衛魔術師の第一回選定結果を伝えると待機を命じられた。当然気分が休まることもなく、疲労と緊張で重たい空気が漂う。


「これより、婚姻の儀までの間、聖騎士専属護衛魔術師を担う者を発表する。先に話している通り、護衛魔術師は現時点では候補に過ぎぬ。就任後は、聖騎士直属護衛部隊の指揮下に入るということを肝に銘じよ。では、名を呼ばれた者は護衛魔術師のローブを授けるので前へ」


 以前は気合十分に告げていたが、今は問題だけは起こさないでくれという強い願いが籠る。


「護衛魔術師代表!ルイス・ハーヴィ!」


 魔術師団の組織体系が未確定な状況の上、試験結果の発表もしていないので、肩書もなく名前を呼ぶだけ。

 少々味気なく感じるも駆け出てくるルイスに護衛魔術師代表のローブを渡す。

 筆頭護衛騎士に特別ジャケットを用意していたように今回も護衛魔術師代表のローブは白地に国章と聖騎士の紋章入りの特注品だ。


「続けて、護衛魔術師代表補佐としてシェーヌ・ハント!」


 東部魔術師団からの選出に魔術師たちが沸く。

 帝都の者だけではないと希望を感じた様子だが、生憎今回は彼女だけ。

 ここで腐らなければ可能性はあるのかもしれないがと思いながら、騎士団が護衛騎士用に用意したジャケットに似せた黒地のローブを差し出す。


「謹んで拝命いたします」


 凛とした声は心地よく、魔術師とはいえ前線を駆けるようには見えない。

 このギャップをレスティオは気に入るだろうかと想像しながら、次の名を確認する。

 

「次に、ハイラ・オーヴィス!」


 今度はどよめきが起きた。

 彼女は今は亡きハイリの側近の娘だった。その側近は、聖騎士に対し猥褻的な無礼があって処分された者の一人。表向きは病を理由とした生贄行きだったが、事実を知る者が流した話は随分と広がっている。

 そんな彼女の選出に懐疑的になるのは致し方がないことだろう。


「私で、よろしいのですか?」


 前に出てきたハイラは決して嬉しそうではなかった。

 むしろ不快そうに小さな声でエルリックに尋ねてきた。


「聖騎士様の選定である。護衛となる気概がないというのならば、辞退の旨は代わって伝えておこう」

「……いえ、拝命します」

「次!シュザム・ダールマイヤー」


 ダールマイヤーはここ数年で皇室にも聖騎士専属護衛騎士にも名を挙げている。

 魔術師たちの反応を見ても、血縁者が側近にいることもあって予想の範疇だった様子だ。


「次、クラット・グランツ」


 団長の息子であり、聖騎士専属筆頭秘書官の息子ということもあって、当然の結果と嘲る雰囲気が広がる。続けてフラット・グランツの名前を呼ぶも、驚きも何もない。


「クラット、フラット。其方らは訓練場での鍛錬の様子が聖騎士様の目に留まっていたと聞いた。今回の選定は日頃の行いの結果と心得え、聖騎士様の期待に応えるとよかろう」

「「はい!」」


 素直な返事は聞いていて心地がいい。

 ふっと一瞬こぼれた笑みをすぐに厳しい表情へと変えて魔術師たちに向き直る。


「以上6名!今回選ばれなかった者もこれからの働きひとつで、目に留まらないとも限らない。魔術師団の一員として励み続けることを期待する。なお、この後ほどなくして聖騎士様の使いが来るだろう。聖騎士専属護衛魔術師たちは就任の挨拶に備え、待機しているように」


 通達を終えてエルリックは執務室へと戻るべく歩き出す。

 やや不安が残るが、ローブを受け取った以上、後は彼ら次第。総帥の立場でできることはない。


 

 



 レスティオの部屋には側近が勢揃いしていた。

 下位の側仕えとは顔を合わせることもなかったので、レスティオは新鮮な気分でエリザが用意した資料を眺めながら顔と名前を憶えていく。


「シャルムも残っていてくれたんだね。食べ物の味はわかるようになった?」

「はい!もう緊張で味が分からないという失態は犯しません!」


 彼は元々下位側仕えだったが、人員調整の中で中位に格上げされていた。

 毒見役というより、レスティオの好む味を覚えたことで料理人教育に一躍買っているところで評価を受けている。


 下位の側仕えは洗濯や備品管理など中々表には出てこない。

 それぞれがなにを担っているのか、他の主人に仕える側仕えとの違いなど談笑しながら空気を解していく。

 仕えるのが難しいと離れてしまう者もいるというのなら、時に労いの場を用意して絆すのも良いだろうと内心目論む。


「魔力を込めていくのが仕事ということは魔力量には自信が?」

「そそそんなっ!多少多いかもしれませんが、ただ魔力を込めるしか能がないのです」


 中には女性も複数いた。

 異性の側仕えは上位には中々なれないが、性別が関係ない職務を担う分には登用は珍しくないという。

 シャナの話を振れば女性たちは、他国の聖女の筆頭側仕えから嫁いで皇妃の上位側仕えとなった彼女に憧れの眼差しを向けているようで瞳を輝かせた。


「シャナは打ち解けられているようでよかったね」

「えぇ。皆に良くして頂いていると話は聞いています」

 

 幸せそうで何より。和やかな雰囲気の中、ドアがノックされた。


「護衛魔術師が到着されました」


 側近を室内に集めている今、部屋の外にはヴァルナフ隊の警備が控えている。

 声掛けに応じて、下位側仕えの一人が動きだし、ややぎこちない動きで扉を開けた。

 主人の部屋に出入りするのは中位から。所作に慣れていないが、一番位が低いと察してすかさず動いた様子にレスティオは笑顔で頷いて姿勢を正す。

 側近たちは護衛魔術師たちに場所を空けるべく位置を取り直した。


「失礼いたしまひゅっ……し、失礼致しますっ!護衛魔術師一同、お招きに応じ参上いたしましたっ!」


 第一声を噛んだが、顔を真っ赤にしながらもルイスは言い切った。

 くすくすと笑う声に震えながらも促されるままルイスはレスティオの前に立った。


「ちょうど今、俺の専属の側近全員を集めて話をしていたんだ。これから一緒に仕えてもらう者同士、軽く挨拶でもしようか」

「え、ぁ、はい!」


 レスティオは笑顔で、改めてと自己紹介を始めた。

 そして、秘書官、側仕え、護衛騎士と自己紹介を促し、ルイスへと振る。


「この度、聖騎士専属護衛魔術師候補として護衛魔術師代表に任じられました。帝都魔術師団のルイス・ハーヴィと申します。夫のダニルが東部派遣団の講師役として聖騎士様のご期待に応えたと聞いておりますので、私も負けぬよう励みたいと思います」


 ルイスからシェーヌに促すと、シェーヌはほんの少しの間考えるように間をおいてから顔を上げた。


「護衛魔術師代表補佐に任じられました東部魔術師団シェーヌ・ハントです。聖騎士様の目に留まれたことを大変光栄に思います。以前までは部隊長を務めていた経験を生かしてハーヴィ代表を支えつつ、皆さまから護衛としての在り方を学び励んでいきたいと思います」

 

 実に穏やかな宣誓の言葉。

 だが、レスティオは、シェーヌの目にルイスが厳しく映っているように見えてならなかった。

 

「ハイラ・オーヴィスと申します。母は聖騎士様に害を与えて贄になったので、お目通りが叶うことはないと思っていました。父や姉が口添えしてくれたのかもしれませんが、同情もコネも不愉快極まりません!不敬とは承知の上ですが、私は実力で私を馬鹿にする人たちを見返したいのです。ですから、この話は……」


 意気込んだハイラの言葉を、レスティオは魔力結晶を伸ばした棒で頭を軽く叩いて止めた。

 レスティオとの接点が少ない者ほど驚きの表情を見せた。


「君の名前を出したのは、恐らく事情をよく知らない騎士学校のジンガーグ学長だよ?」

「え?」


 真実と違うことで突っ走られては困る。

 ロゼアンが父親のことで思い悩んでいた時期を思い出して、折角一人立ち直らせて独り立ちさせたところなのにと思う。

 

「ルイスを登用するにあたって他に女性魔術師もいた方が良いかと思って、成績も問題ないようだし採用を決めた。皇室側近の管理官であるダスティン・オーガがシーズとリプラを筆頭の屋敷の使用人に認めていたから、家格としても問題はないと思ったのだけど」

 

 一応、ルイスの登用を最初に決めたのはほかに魔術師を知らなかったからと付け加える。コネという言葉だけでは説明が足りない選定理由がちゃんとそれぞれにある。


「で、でもそれならハント隊長がいます」

「シェーヌの名前が出たのはハイラより後だったから。シェーヌはヴィアベル殿下の推薦でね。他にも東部や西部の魔術師の名前を上げてもらったのだけど、現時点では能力や人格に難ありということで見送った」

 

 シェーヌが誰を思い出してか一瞬笑いをこらえた。

 クラットとフラットは「人格まで見られんの?」「やばっ」と囁き合い、エリザに魔力結晶で頭を軽く叩かれていた。

 その間に目を瞬かせながらじっくりと経緯を理解したらしいハイラは、ぱっと表情を明るくさせた。

 

「じゃ、じゃあ、本当に私を評価してくださってのことなんですね?もう、実力と言い返してよいのですね?」


 無邪気な声音にレスティオは満足して頷いて、シュザムに挨拶を促す。


「シュザム・ダールマイヤーです。そこにいるブノワと、クラディナ皇女殿下の筆頭秘書官を務めるヒルトの弟です。兄は俺に良く呆れているのでコネではなく、なにかがきっかけで目に留めてくださったのだろうと思っています。ダールマイヤーの恥とならぬよう、努めたいと思います」


 ブノワの無表情の中に呆れが垣間見えた。

 複雑そうでいて単純にこれが兄弟の姿とも思える。

 

「クラット・グランツです。訓練場ではレスティオ様の魔術の扱いを見ては学ばせていただいておりました。護衛としての心得を騎士たちから学び、護衛魔術師として努めたいと思います」

「フラット・グランツです。クラットとは双子の弟です。見分けるポイントは特にありませんが、強いて言うならば、一人称が俺なのがフラットで、僕なのがクラットです。クラットと同じく誠心誠意努めさせていただきます」


 クラットはやや真面目さが窺えるのに対して、フラットはお調子者感がある。

 目元はフラットの方が大きく、クラットの方が口角の位置が低い。輪郭の特徴をいくつか記憶してレスティオは笑顔で頷いた。


 各筆頭と護衛魔術師たちは、今後の動きについて打ち合わせを行うべく隣の側近の控室に移動した。

 上位の者を残して各々持ち場に戻す。


「どう思う?」

「レスティオ様の護衛に残りそうな者はシェーヌくらいではないですか」

 

 ラハトが率直に答えて、出ていくリンゼルに夕食の準備をと指示する。


「最初の護衛騎士のうち、残ったのがハイラックだけだったことを考えても不思議はありませんね」

「魔術師としての成長が見込めるという点では、護衛魔術師候補らしいとは思いますけどね」


 シルヴァとジェウもラハトと同意見だった。

 リティックは護衛魔術師に相応しい人材とはどういう考えなのか尋ねながら手帳を取り出した。

 専属の護衛になるということは、有事の際になにより優先すべきはレスティオの身の安全となる。

 だが、ルイスをはじめ、その意識がありそうな者はいなかった。

 むしろ、魔術師として成長が見込めるならば、今の魔術師団の現状を思えば護衛魔術師に引き抜くのではなく今後の魔術師団を牽引する存在になってほしい。

 

「なるほど。ネルヴィやロゼアンを護衛騎士に登用しなかった理由にも通じるのですね」

「これからどのような成長を見せるかわからないし、欲しいと願うようになる可能性も十分にあるけどね。それはそれとして、俺の側近としてやっていけそうかな?」


 婚姻の儀までは半月もない。

 だから短期間にはなるが、側近との不和は一番困る。


「レスティオ様が不測の事態を起こさなければ我々が十分フォローできるとは思いますよ」


 夕食の為に席を整えていたシドムが笑顔で言うと、揃って頷き返した。

 そこまで問題を起こしてきたかなと首をかしげて、レスティオは長椅子から立ち上がった。

 

 




 その夜、レスティオはロデリオの部屋にいた。

 リーベレールも含め3人での酒席だ。互いに今日1日の事を報告し合いゆったりと過ごす。

 

「大体想定の範疇だったが、東部のハント隊長を加えたのは意外だった」

「皇族の承認はすぐに下りたそうだけど、他にも候補がいたのか?」

「まぁ、ベイルートの弟とかな」


 護衛魔術師の選定にあたっては、魔術師団の状況的に不確定要素が大きく、事前に候補者は出されていなかった。

 今回は、まだ魔術師たちも本調子ではないし、最悪護衛騎士が揃っているので、試験の中で目に留まった者を選べばよい。というのが皇族の考えだった。

 やることが多い中で丸投げしたとも言う。


「ベイルートの弟はどんな奴だ?」

「リハビリに励んでいて、未だ魔力が不安定で本領を発揮できないと嘆いていました。今回は目に留まるような成績は残せなかったのではないでしょうか」


 永く眠りに就いていた魔術師は魔術師団の管理下で体力や魔力を鍛え直している。

 身体は勿論、魔力を動かし制御する感覚が鈍っている者は少なくない。

 儀式に参加して最近目覚めたにもかかわらず上位に留まっている魔術師は素質が高い証拠ともいえる。


「今度紹介しておいて。優秀な人材を登用する為にも、なるべく多く見ておきたい」 

「かしこまりました。婚姻の儀の後のパーティに参加するはずなので、お会い出来たら是非」


 当日は婚姻の儀の参加者が主役となる。

 ベイルートもその一人なので、ロデリオの護衛を務めながら挨拶の声も掛けられるだろう。

 話しかけられたとしても、そのタイミングで弟の紹介までしてもらえるかはわからないが。


「私も試験に同席したかったです……」

 

 むぅっと小さくこぼしたリーベレールにレスティオは苦笑した。

 午後は東部で懇意にしている商会との会談予定があって、リーベレールは闘技場には来ていなかった。


「アルテア商会だっけ?」

「はい。あぁ、エアリーズ・ブリッツというエレクの母が同席していました。普段は声掛けをしないのですが、聖騎士様の推薦で婚姻の儀に参加することになったと話題に出て、御礼を伝えて欲しいとのことでした」

「筆頭の娘の婚約者家族だし、婚姻の儀で会ったら挨拶はしたいと思う。商会の情報を貰うことはできる?」

「用意しておきます」


 意気込んで頷いたリーベレールにロデリオはうんうんと頷く。

 自分の補佐として使っているからか、ロデリオの眼差しが兄の様で微笑ましく思う。


「クロア。シュザム・ダールマイヤーはどういう人なんだ?レスティオ様もこれまでは面識がなかったのですよね」


 レスティオが聞く前にリーベレールが話題を振った。

 いつもならばアスキーやローマンが立っている位置には、図ってかヒルトの夫であるクロア・ダールマイヤーがいた。

 ラビ王国出身ということもあり、外交面での執務を中心に担っている落ち着いた面持ちの男だ。

 

「シュザムは、非常に姉想いですよ。私は今でも嫌われているくらいです」

「それは……クロアとの連携には難あり?」

 

 反応に困って首を傾げると、クロアは控えめに笑いながら手を振って否定した。


「ヒルトに良い所を見せる為ならば努力を惜しまないので、クラディナ殿下に関わることには積極的に同行させるとよいでしょう」

「そういうことか。なんだか、護衛騎士の時より癖の強い奴ばかり選んでしまった気がする」

 

 ため息を呑み込むようにクルールの水割りを飲み干して、控えていたルーフにグラスを渡す。

 

「むしろ、騎士たちはお前が癖を強くさせたようなものだしな。上位魔術師相当の騎士、薬師、料理人と騎士の範疇を越えた人材ばかり見出していただろう」


 ベイルートが剣を持つようになったのもだ。というロデリオの指摘にレスティオは視線を逸らした。

 実を言えば、その指摘はアイオロスに帰還した際にも一度受けている。


 ―― よくもまぁ、騎士にばっかり優秀さを見出したものだよね。


 呆れたようなレディ・レッドの口調ははっきりと覚えている。

 その発言に対して、「君って潜在スキル持ちなんじゃない?」と言ったのはピスカトールだった。

 いくつもの世界を転生しているレスティオの命の核に刻まれたスキルと呼ばれる能力の残滓が、スヴェルニクスで魔力を発現させた拍子に蘇った可能性がある。

 単に優秀さを見いだせるスキルか、共にいるものの能力を引き上げるスキルか、そこまでのことはわからない。

 だが、もし本当にそんなスキルがあるならば、より多くの人材と関わった方が国益になるのは違いない。


「レスティオ様。クルールの水割りです。少々お疲れの様子なので、蜜を少々加えました」


 ルーフにグラスを差し出されて、レスティオはふっと笑みを浮かべた。


「わかってきたじゃないか。殿下の前でそんな顔をするものじゃない、ではなく、求めているのはそういうことなんだよ」

「はい。どうぞごゆっくり酒席をお楽しみください」

 

 緩みそうになる口元を引き締めてルーフは下がる。

 やりとりを見ていたロデリオはすかさず「やらないぞ」と得意げに笑み、レスティオはむぅっと拗ねた顔をした。そして、二人の気の置けない態度にリーベレールも嫉妬するようにむっと感情を見せて側近たちは笑いを堪えた。

 

何故ルーフが側仕えをしているかと言えば、

側近たちはレスティオには内緒で護衛魔術師就任に伴う対策会議中だから。

フォローするにしても事前準備は必要ということで。


年末年始なので次回更新は12/29(日) 19時を一旦予定してます。

連日更新になるかどうかは今年は進捗次第です。

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