第177話 レディ・レッドの贈り物
レスティオがアイオロスへ帰還して知ることになったカーストン家とドーベル家との繋がり。
その話に一区切りをつけると、レスティオは改めて姿勢を正してエルリックとエメラルナに向き直った。
「前置きが長くなってしまったけれど、どうしても話したかった本題はこれから話す2つのこと」
前置きだったのか、と隣で呟く声を無視して、レスティオはラハトに声を掛けた。
ラハトは用意していたお盆を手にレスティオの隣に立つ。
「今はロジエーナのことを、レディ・レッドと呼ばせてもらってもいいかな?」
「はい。レディ・レッドは元々姉様が名乗るべき名でした。どうぞ、お気遣い無くお呼びください」
エメラルナはどこか嬉しそうに快諾した。
レディ・レッドが弟妹への想いを語っていたように、彼らも姉を慕っていたのだろうなと伝わってくる想いに目を伏せて深呼吸する。
「レディ・レッドは、向こうの世界では魔力を扱うことが出来ない身体に生まれてしまった。けど、ロジエーナの魂には旧アザムガイドの聖女から受け継いだイグニスの炎の魔力を宿したままだった」
「っ……」
なにかを察したエルリックの表情に、レスティオは目を細める。
「レディ・レッドは、火の病を発症し、その身を焼き尽くして死に至った。俺がこの世界に帰還した日、5月29日のことだ。俺の世界では、死に際を遺族に伝えるのは看取った者の役目と言われているのだけど、話してもいいかな?」
時間が必要であれば、後日改めて時間を取る。そう告げたが、エルリックはぐっと歯を噛みしめると意を決した表情で話を促した。
「姉上は、召喚の儀の生贄となったものの、儀式は失敗し無念の中死したものと思っておりました。火の病に罹ったというだけではなく、語られるべき話があるというなら是非お聞かせ願いたい」
姉を慕っているからこそ、死に際を聞きたいというエルリックにエメラルナも頷いた。
儀式が成功していたならば、その死の印象は違っていたかもしれない。だが、失敗した以上、無念に思っていた想いが上書きできるならば、それこそ知りたいのだと、赤い瞳が力強く語っていた。
「わかった。レディ・レッドの死を語るには、少し前置きが必要になる」
「お願いします」
「俺が帰った時、俺の祖国は、複数の国の連合軍による侵攻を受け、戦争状態にあった。軍人のみならず多くの民が殺され、住む場所を壊されて奪われる、無残な状況だった」
レスティオは話しながらジャケットの内ポケットに入れた懐中時計を握りしめた。
ゆっくり呼吸して気持ちを落ち着けながら言葉を紡いでいく。
「不在にしている間、レディ・レッドやヴィヴィアンと過ごしながら、停戦に向けて動いていた。裏社会にコネを持っているだけあって、レディ・レッドは各国との停戦交渉に向けて大いに役立ってくれたよ」
「皇族と口論した勢いで生贄に名乗りを挙げた姉が、そんな重要な交渉ごとに関わっているとは、驚きます」
「あぁ、その話は聞いた。テゼルド陛下の横暴は今でも納得が出来ないと言っていたよ」
死して尚恨み言を言うほどに憎たらしかったようだというと、ロデリオはそれを話す場だけは考えてくれと頭を抑えた。
当時のことを知る者は50年前ということもあり少ないが、それでもなにかの火種になっては困る。その意図を察して、レスティオは頷いた。
「俺がこの世界に帰還する前の日。停戦交渉も着実に進み、俺は防衛戦に加勢するべく単身で戦場に出た。かつての同僚たちと合流して、敵勢力を下がらせて時間稼ぎに成功した。その間に、停戦交渉は成立した」
「おぉ」
「……だが、お前は重傷で帰還した」
黙って聞いていたロデリオが言うと、レスティオは視線を合わせずに頷いた。
「これは、前日の話だから。国家間では停戦交渉は確かに成立した。だけど、現地の敵勢力は暴徒と化し、侵攻を止めなかった。だから、防衛戦ではなく制圧作戦へと移行した。大半の国は扇動されて参戦していただけなんだろうけど、扇動した連中は元々俺の国を滅ぼしたくて仕方がなかった連中だから、そういった勢力が残るのは仕方がない」
「……続けろ」
前置きはここまで。ここからは、レディ・レッドが死に至るまでの話。
レスティオはエルリック、エメラルナと順に目を合わせて、大きく息をした。
「アザムガイドの聖女と同郷の者が俺の世界に居てね。その日の朝、彼はこう予言した。巫女に宿りし古の炎が蘇り、神風と混ざり合いて彼の地の災いを焼き尽くすだろう。最初は何を言っているのかわからなかった。けど、イグニスは、継承者の事を巫女と呼ぶんだよね。レディ・レッドの中でイグニスの炎の魔力があふれ出していることを、その人は語っていた」
どこまで話そうかな。そう考えて、レスティオは一旦諸々飛ばしてしまおうと決める。
「俺の世界では地上部隊だけではなく、宙を移動する船なんてものもあってね。それらの相手をするのは中々に骨が折れることだった。そこで、俺はハリケーンと呼ばれる気象現象を魔術で引き起こして地上と上空の敵を一掃する策に出た」
「ハリケーン……?」
「それが所謂神風。風で周辺のあらゆるものを巻き込み、動きを封じると共に、風の中で巻き上げたものをぶつけたり風圧で殺したり。そこに炎を纏ったレディ・レッドが合流して、ハリケーンに炎を纏わせた。そうなれば、巻き込まれたものはイグニスの炎に焼かれ死んでいく。レディ・レッドは自身を焼きながら、敵陣営を焼き尽くして、制圧作戦の完遂に貢献した」
敵からすれば相当に悍ましい光景だっただろう。
だが、魔物を炎で焼き尽くすことに慣れているエルリックたちはレディ・レッドの活躍に感嘆した。
「姉上の炎が、レスティオ様の国の災いを焼き尽くし、平和をもたらした。ということですか」
「あぁ。生憎、俺はハリケーンの制御や敵の制圧の最中で四方八方から攻撃を受けてしまい、重傷を負って途中でこちらへと強制送還されてしまったのだけど。先日、ザンクの聖堂からアイオローラの神域に渡った際に、祖国が復興に向かっている光景を見させてもらった。レディ・レッドのこともヴィヴィアンや仲間たちがちゃんと弔ってくれたようで、プレアの隣に建てられた墓標には、赤い花がたくさん備えられていた」
レディ・レッドの最期を語り終えて、レスティオはラハトが手にしたトレイの上からほんのり赤い白地の布を手に取った。
それをエメラルナの前に置く。
「死を覚悟していた訳ではないだろうけれど、レディ・レッドから預かっていたんだ。こちらの世界の墓標に埋めて欲しいそうだ」
布を開けば、中には赤い紐で括られたレディ・レッドの髪束が収められていた。
エメラルナはそれを見て、堪えていた涙をこぼし、俯いた。
エルリックがそっとハンカチを差し出し、その背を慰める。
「レスティオ様。姉上を連れ帰って頂き、感謝いたします」
「預かってきたのはそれだけじゃないよ。まずは、エルリックから」
トレイの上から、赤い化粧箱と赤い封筒を重ねて手に取る。
「以前、話したことがあったかな。俺の祖国では、時をとても大事にしている。だから、大切な人には一刻でも永く時を刻んで欲しい、これからも同じ時を歩んでいきたいと願って、時計を贈る風習がある。ロジエーナから、弟エルリックへ。最期の時までカーストンに伝わる聖なる炎を誇りに生き抜いて欲しい。叶うならば、カーストンの時を永く紡ぎ続けて欲しい。とのことだ。このとても分厚い手紙に十分書いているだろうに、伝言もきちんと伝えろと言われた。本当に愛されているね」
エルリックに差し出すと、深々と頭を下げながら受け取った。
レスティオは、続けて同じく化粧箱と封筒を手に取る。
「妹エメラルナへ。レディ・レッドの名を継いでたくさん苦労をかけてしまっただろうね。頑張り屋さんなのはわかっているけれど、時には休むことも必要だよ。偶には兄様を頼って、これからはレスティオもきっと力になってくれるから、無理して倒れるなんてことがないように。だそうだ。妹は特別可愛いらしい」
「姉様ったら……有難く頂戴いたします」
受け取った化粧箱と封筒を胸に抱えたエメラルナをみて、レスティオはちゃんと渡せたことに安堵する。
「良かったら箱を開けてみて。懐中時計を贈る時には、こうして蓋の内側にメッセージが書かれているものなんだ。贈り主との絆を示す言葉はあまり人に見せるものではないけれど、家族同士なら見せ合うこともあるかな」
レスティオは自分の持つ懐中時計を取り出して、蓋を開けて見せる。
これはこの世界の文字ではないので決して読めないからこそ。すぐに蓋を閉じて懐へとしまう。
化粧箱を開けた二人は、赤交じりの金色で仕立てられた懐中時計の蓋に目を留めた。
描かれたカーストン家の家紋が緻密に描かれていて、こんな細部まで良く覚えていたものだと感心する。それはレスティオが手伝った結果でもあるのだが、あえては言わなかった。
蓋を開けてみれば、二人への短いメッセージが刻まれていて、二人は感動に涙を流して顔を見合わせた。
その様子を見つめていたレスティオは、まだ残る空の木箱と一通の封筒を渡す前に一度目を伏せた。
「ここまでが、本題のひとつ。一度お茶を交換しようか」
既にお茶は用意されていて、冷めたお茶と取り替えられていく。
その間に、レスティオは飾ったり大事に仕舞うのではなく、大事に持ち歩いて使うようにエルリックとエメラルナに釘をさす。
貴重な物だが、懐中時計は言わば絆。持ち歩いてこそ価値がある。
「レスティオ様の懐中時計はどなたから贈られたものなのですか?」
「これは、両親から。俺が生まれた時に贈ってくれたものなんだ」
「それは素敵ですね。私も子たちに時計を贈ろうかしら」
この懐中時計のようなものは贈れないけれど、とエメラルナは涙を拭って微笑んだ。
エルリックもそれはいいかもしれないなと頷く。
「レスティオ様、こちらもお渡しするものなのですよね」
「あぁ、うん。受け取っておくよ」
ラハトが不安げにトレイを掲げる。
間違って持ってきたものではないと示すべく、レスティオは受け取って自分の前に置いた。
「さて、では、イグニスの話をしようか」
続いての本題にわずかに緩んでいた気が引き締まる。
どこか居心地悪そうにしていたロゼアンもここからが本題と背筋を伸ばした。
「ロゼアン、一旦ペンダントをここへ」
空の木箱を開けて敷かれた布の上にペンダントを置かせる。
炎を象ったようなそのペンダントを見て、エメラルナは怪訝そうな表情を見せた。
「先程、御祖母様の話をしたけれど、このペンダントは召喚の儀の中で、ロジエーナが御祖母様を宥める為に共に手に握っていたらしい。故に、転移した際に御祖母様の手に残っていたものを、持ち帰って欲しいと頼まれて預かってきた」
「確かに、こちらはカーストン家当主レディ・レッドの証であるペンダントに違いないようです。ですが、何故それを彼に?」
エメラルナはセルヴィアに就いていたこともあり、ロゼアンの火の病の経緯を知らない。
レスティオは、火の病を発症したロゼアンにペンダントに魔力を注がせ、そのまま持たせていたのだと説明した。
その話を受けて、エルリックも火の病を発症したネージュを同行させてきたこと、魔力をペンダントに注がせ、病を抑えたことを話した。
「カーストン家の者が発症する火の病は、聖女から受け継いだ魔力が放出しきれず体内からあふれ出ることが原因。となれば、このペンダントにその魔力を奉納することで、火の病は抑えられるということだ」
「それは本当ですか?なら、これがあれば病を恐れる親族たちも安心して過ごせるようになるのですね」
安堵して見せるエメラルナにレスティオは頷く。
エメラルナとエルリックにも一度魔力を奉納しておいた方がいいのではないかと勧め、暫しその様子を観察する。
「イグニスは出て来ないな」
「私たちの魔力が拙い故でしょうか……幼少の頃も、姉様以外の者が触れてもその姿を見ることは叶いませんでした」
「しかし、ロゼアンが魔力を注いだ際には姿を見せ、イグニスはロゼアンを継承者にと望んだのですよね」
レスティオは頷いて、ロゼアンにペンダントに魔力を注ぐように指示する。
すると、ロゼアンの指先がペンダントに触れた途端に炎が沸き上がってイグニスが姿を現した。
馬車の中に突然現れた人の形をした炎に側近たちが慄く。
「我を呼んだか?」
満足気なイグニスの声音にレスティオは完全にロゼアンが目を付けられているなと執着心に呆れる。
「久しいな、エメラルナよ。さぁ、エルリックと共にロゼアンを継承者にすることを認めるがいい。我に相応しき者は他にはおらぬ」
「イグニス。貴方はカーストン家の精霊。ならば、継承者はカーストン家の者から選ぶべきではありませんか」
「否っ!我は炎の民に祝福を与える者。カーストンは炎の民であるが、炎の民が皆カーストンではない。この者は紛れもなく炎の民。我に相応しき魔力を持たぬ其方らに口出しされる謂われはない」
馬車の中を飛び回りながら主張するイグニスに危なっかしいなとレスティオは視線を送る。
水を掛けたら黙るか消えるか、あるいは逆上するかどうなるのだろうと思わず考える。
「ロゼアン。宥めろ」
「え?そう言われましても……イグニス、落ち着いて」
「ふん。名に縛られるなど、この世界の人間は面倒なものだ」
ロゼアンの側に落ち着いたイグニスに、馬車が焼けてしまわないか気が気でなかった者たちは安堵の息を吐く。
「イグニス。君がロゼアンを継承者にしたいという主張は十分に伝わった。俺に少し話をする時間を貰えないかな」
「よかろう」
イグニスの承諾を得て、レスティオはエルリックとエメラルナに目を向ける。
「まぁ、色々思うところはあるのだと思うけれど、ロゼアンはエルリックの孫であることに変わりはないだろう?」
「それはそうでしょうが……今は勘当され、レスティオ様の下に身を寄せている以上、カーストン家の者としては認められません」
「なら、ロゼアンをカーストン家で養子に取るというのはどうだ?」
勘当されたのはダイナ家であり、カーストン家はある意味関係ない。
ロゼアンは、聖騎士認定の特待生であり、皇族からも聖騎士からも褒賞を受ける優秀な剣魔術の使い手。そして、そこにイグニスの継承者と言う肩書きが加わる。
「ロゼアンの特待生としての功績を踏まえても、その魔力を見ても、カーストンを名乗るには十分な品格と実績があると俺は思うのだけど」
レスティオは問いかけながら隣のロデリオへと視線を向けた。
特待生の扱いについては皇族の判断も求められる。ロデリオはその視線の意図を理解した様子でエルリックとエメラルナの判断を促した。
皇族からみても、聖騎士認定の特待生が身を寄せる先としてカーストン家は申し分ない格がある。むしろ、半端な道を選択されるより扱いに困らない選択肢と言える。
「カーストン家当主は代々女性が継ぐもの。判断を、カーストン家の女性全員の魔力を改めるまで待っていただくことは出来ないのですか?」
「待てぬ。我は飢えておる。もう長きに渡り碌に魔力も与えられずに来たのだ。其方の魔力のすべてを食らっても足りぬくらいぞ」
「ですが……」
イグニスの脅しにエメラルナはエルリックに身を寄せて震えた。
エルリックはイグニスでもエメラルナでもなく、レスティオへとじっと視線を向けていた。
「聖女ならぬ聖騎士であるレスティオ様を前に、女性当主に拘るのは愚かなこと。私はそう思う」
「兄様……それは、そう、かもしれないですが……」
エルリックの視線に耐えかねて、レスティオは苦笑した。
「いいじゃないか。聖女様だって男に代わる時代なら、カーストン家当主が男になったって」
以前にレディ・レッドが口にしていた口調のまま告げた。
普段と違う口調に気づいたのか、皆きょとんとした顔をした。
「レディ・レッドも、エルリックと同じ意見だった。俺は、ロゼアンは男だよって言ったんだけどね」
「ロゼアンのことも、お話していたのですか」
「うん。この手紙も未来のカーストン家当主と先走ったロジエーナが書き上げたものだ」
まだ手元にあった封筒を手に取ると、エルリックはやれやれという様子で苦笑した。
きっと昔からそういう性格だったのだろうと窺わせる。
「カーストン家の女性当主をレディ・レッドと呼ぶなら、男性当主なら何と呼ぶのがいいだろう、と御祖母様と三人で考えてもきたんだよ」
「それは……それではもう、私が意見する余地はないではありませんか。聖騎士様にも姉様にも、そしてイグニスにも望まれているというのであれば、私が当主の座に固執するのは見苦しいことこの上ありません」
大人しく身を引きましょう、とエメラルナは意を決した。
エルリックも頷いて、ようやくロゼアンへと視線を移した。
「暫くはレスティオ様の近くに居た方が良かろう。ならばこそ、私の元に養子に入るといい。カーストン家次期当主として迎え入れよう」
「ぇ、し、しかしっ……」
「して、レスティオ様。レディ・レッドに代わる呼称はなんと致しましょう」
ロゼアンの戸惑いを受け付けず、エルリックはレスティオに向き直った。
その様子に苦笑して、レスティオはロゼアンに封筒を差し出す。
「もう少し段取りを踏むつもりだったのだけど。女性ではない俺が聖の魔力を持っているが故に聖女ならぬ聖騎士と呼ばれるように、イグニスに認められるほどの聖女の魔力を継いだお前はカーストン家を継いで然るべき。そう思わないか?」
「それは……」
「特待生より、カーストン家の当主としての方が俺の力になれる機会は多いと思うけれど」
「っ……わかりました!謹んでその話受けさせていただきます」
封筒を受け取ったロゼアンは、そこに書かれた宛名に目を留めた。
「ロード・レッド……これが、レディ・レッドに代わる、カーストン家当主の名ですか?」
「そう。炎の継承者を表現した言葉だ。どうかな?」
「良き名だと思います」
「聖女は聖騎士に、レディ・レッドはロード・レッドに代わる。カーストン家がレスティオ様とより強く結びついていると示すにも良い機会となりましょう」
満足気なエルリックにエメラルナも納得するように頷いた。
ロゼアンはもう一度気を引き締め直して、二人に頭を下げ、改めて養子となり世話になることを頼んだ。
「エルリック、エメラルナ。カーストン家の者が発症するという火の病は、イグニスのペンダントに魔力を奉納することで抑えられる。それを親族に周知しておいてくれるか?」
「ですが、ペンダントは継承者を選定するために魔力を注ぐもの。当主の証として、そう簡単に触れさせるものではありません」
「火の病を発症して死ぬ者を減らそうと思ったら、魔力を奉納させるしかないじゃないか。年に1回は、当主への挨拶に伺い、魔力を奉納させる。その時以外はロゼアンが肌身離さず持っている。とか、運用を考え直した方がいいと思わないか?カーストン家の為にも」
言われて、エメラルナは納得した。
そして、慣習に捕らわれていてはいけないと自分の頬を軽く叩いて、自分で自分を叱る。
「しかし、カーストン家がレスティオ様の親族として繋がりがあり、特待生であったロゼアンを次期当主に迎えるとなれば色々考えることが出てきそうですな」
「そうだな。それこそ、我々皇族としてもロゼアンの選択を個の自由と見過ごすのは難しくなるやもしれない。それは、ドーベル家の今後にも言えることだが」
エルリックとロデリオが同時に腕を組み考え始める。
その様子に政治的な悩みかとレスティオはベリーローズティーを口にして、やれやれと思う。
「ロゼアン。ハイネルとの婚約をもう一度考えてみる気は無いか?」
唐突にロデリオに話を振られたロゼアンは、何を言われたのか理解出来なかった様子で目を瞬かせた。




